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サバゲー王者は国を守る  作者: 黒川 想流
1章 戦争の幕開け
8/15

8話 観察力

今回は健の過去がメインとなります



「それで、健さんのその目は…?」


「あぁ、その話か… これはな…」




これは私が小学校高学年の頃の出来事だ。当時、私には仲の良い友人が居た。

彼は幼稚園の頃からの友人で、親友と言っても良い程仲が良かった。

彼とは趣味や話も合って、どんな事をしても互角でスポーツの時は良きライバルだった。

だが、彼と私で違う点があると言えば学校内での立場だった。

私はどちらかというと人気者のグループに入っていて、いろんな人と仲良くしていた。

それに対し、彼は真逆で地味な奴等のグループに入っていた。

ただ、彼も私もそんな事は気にしていなかった。

しかし、ある日突然悲劇は起きた。


「あいつ本当、観月の何なんだよ?」


「地味な奴は観月と関わるなっての」


私の周りの人達は彼を批判し始めた。

何故、私が好きで関わってるのに彼等が不平を言うのか。

その疑問から私は彼等を止めたかった。だが、ここで止めてしまうと私が今度は難癖つけられるだろう。

彼を見捨てるつもりは無かったが、ここは黙っておくしか手が無かった。


「悪いな、あまり彼等の言う事は気にしない方が良い」


私は周りの人が居ない時に彼に謝りに行った。

何故私が悪い事をしたようになっているのか謎でしかなかったが、彼が傷ついた事に変わりはない。


「あんなの気にするわけねぇだろ?」


彼はそう言ってニコッと笑った。

そんな彼の笑顔は輝いて見えた。

当時の私はその輝きが偽りの物だとは気付かなかった。



「何故だ…?」


翌日、学校に着いて知らされたのは彼が自殺したという事だった。

部屋で首を吊っていて、その部屋にあった手紙には「悪い、俺の事は気にしないでくれ」と書いてあったらしい。

俺は気にしないなんて出来る訳無かった。

後日、開かれた葬式では彼の両親が泣いていた。だが両親以上に俺は泣いていた。

それは悲しさよりも悔しさが大きかった。

あの時の彼の笑顔が作られた物だと分かっていれば。相手が今どんな事を思っているのか分かっていれば。

こんな事にはならなかったのに。


俺はその時、2つの目標が出来た。

相手の考えている事を読み取ってもう選択を間違えないと言う事。

そして大事な人を守る力を手に入れる事。




「それで私は相手を見て判断出来るように洞察力や観察力を鍛えた、そして今に至る」


彼の話はなかなか重かった。


「そんな理由があったんですね…」


その重い話に思わず胸が痛くなる。


「戦争に出るのは大事な人を守るため…?」


「あぁ、この国を守る事は家族や親戚を守ることにも繋がると思ってね」


「なるほど…」


兄の仇を取るだけの俺とは天と地の差だと思うくらいの素晴らしい理由だった。


「こんな話をしてしまってすまない…」


「俺こそ、そんな深い訳があったのを知らずに軽々しく聞いてすみません…」


空気が重いとはこういうことなんだろう。

そう思うくらいに気まずい空気だった。


「もう日が暮れるような時間だ。今日は解散としよう」


「もうそんな時間ですか」


俺はそう言って時計を確認する。時間はもうすぐ午後7時だった。


「じゃあ俺は帰りますね」


そう言って近くに置いていた防音用ヘッドホンなどを元あった場所に戻して帰ろうとした。


「泊まったらどうだ? その方が明日からの特訓もすぐに出来るだろう?」


彼はそう提案してきた。


「良いんですか?」


「あぁ、私は構わないよ」


俺は少し考えた。

家にはもう兄も居ないし、家に帰る必要も無いな…


「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせて貰います」



その後、腹が減っていたから夕食となったのだが…


「なんじゃこりゃ…!?」


そこには高級店で出るようなフランス料理やイタリア料理が並んでいた。


「何を驚いているんだ?」


彼は平然とその料理に手をつけた。

何事も無いかのように近くにはシェフが立っている。

この家の料理人だというのか…?


「もう言葉も出ない…」


俺はそう呟いてこれから先食べることがあるか分からない、その料理をゆっくりと味わって食べた。

その後、風呂に入ったが、もう予想が出来ていた。

銭湯に来たのかと思うくらいの広さだったが、もう驚かなかった。


風呂から上がると彼に部屋へと案内された。

客が泊まった時用の客室もあるようだ。

彼がドアを開けて進むのに付いていくと、そこの部屋もかなりの広さだった。


「この一部屋だけでうちの全体と同じ位の広さな気がしますね…」


ベッドもテレビもタンスもクローゼットも全てが大きい。

それでも部屋にはまだスペースが余っている。


「ここで今日は休みたまえ」


「分かりました、ありがとうございます」


そう俺が言うと彼は部屋を出て行った。

こんな広かったら落ち着かないな。


そう思いながらベッドに横たわるとその圧倒的な抱擁感に思わず力が抜ける。

あ、やっぱり落ち着けますわ…


俺は練習の疲れもあったのかすぐに眠りについた。



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