5話 豪邸の地下
彼は会場の外にある車に乗った。恐らく彼の車なんだろう。
その時に少し気になったが、彼の車は外国で作られている高級車だった。
こんな車に乗っているって事はお金がある人なのか…?
左ハンドルの為、俺は右の助手席に乗った。
一瞬、自分が運転席に居るのかと思ってしまうな。
「ところで、どこに向かってるんですか?」
「君の力を身に付ける場所だよ」
そう言われて訓練場のような場所にでも行くのかと胸が躍っていた。
車のガラスから見える流れる景色を眺めながら俺はどこに行くのか考えていた。
何十分か経った時だった。周りの景色に少し違和感を感じた。
その違和感は目の前にある豪邸だった。
凄い広さの敷地を使っている大豪邸だ。
こんな家に住むなんて今の俺じゃ到底考えられないな。
そう思っていたら、彼はその敷地へと入って行った。
「えっ?ここ入るんですか!?」
俺が驚いてそう聞くと彼は疑問を持ったような顔で答えた。
「そりゃそうだろう? ここが私の家だ」
俺は何度かその家の方を見た。
これが家? もはや城では? ってか観月さんの家?
「ええええええ!? ここ観月さんの家なんですか!?」
「そうだが?」
「はぇえ… 裕福な家庭の人なんですね…」
驚きすぎて変な声が出た。
何でこんな裕福な人が戦争に出ようとしてるのか気になる点もあったが、それを聞く前に玄関付近に到着した。
「さぁ、来たまえ」
彼はそう言って車を降りた。俺も右手側にあるドアを開けて降りる。ドアを閉めた時、俺は改めてその家を見た。
恐らく今の俺は田舎に住んでいた人が都会に来た時にビルなどを見て驚くのと同じような状態だろう。
「どうした? 早く来たまえ」
家に入ろうとしていた彼が俺の方を見てそう言った。
「あっ、はい」
俺は車の後ろから回りこんで彼の方へと行った。
家の中は本当に生涯見るかどうかも分からない程綺麗な物だった。
「こっちだ」
彼は奥にあった壁の近くに立ってそう言った。
その近くには扉も何も無いようだったが…
俺が彼の近くに行った時、彼は壁に隠してあるスイッチを押した。
その瞬間、壁が上にゆっくりとスライドして地下への階段が現れた。
「本当にあるんだ…こんな仕組み…」
俺はそのゲームでしか見た事の無かったその隠し通路にただ見惚れていた。
「この先に君のための場所はある」
彼はそう言うと階段を下りていく。俺は彼の背中を追うように階段を下りていった。
下りた先は暗くて何も見えなかった。でも、何となく何か凄い物がある気がした。
少しすると彼がその部屋の電気を点けた。
急に明るくなったため目が少し眩んだ。だが、目の前に広がった景色に俺は驚いた。
そこは、如何にもな人型のターゲットなどが置いてあり、近くにはいろんな種類の銃が置いてある射撃訓練場のような場所だった。
俺は本当にこんな訓練場に来れた事がただ嬉しくて感動していた。
「すげぇ…!」
まるで小中学生のように無邪気にただ喜んでいた。
でも、変に触って良く無い事をしたくなかった為、その場を動きはしなかった。
するとそれを察した彼は、
「試しに撃ってみるか?」
とそう言って、近くにあった突撃銃を手に取った。
「はい!」
俺は手を伸ばして彼の持っていた銃を受け取った。
そして標的まで20mくらい離れている列の所に立って、銃を構えた。
引き金を引いた時、俺は自分がとんでもない馬鹿だと気付かされた。
ここはパンジャー、銃砲刀剣類所持等取締法で本物の銃は無いと思い込んでいた。
そして、本物の銃の発射音は物凄いという事も忘れていた。
身体全体に響く衝撃と頭が痛くなるほどの強烈な発射音に俺は思わず倒れ込んだ。
「いってぇぇぇ!!!」
主に耳と撃った反動の衝撃で腕が痛かった。
「大丈夫か?」
彼は少し笑っている表情でそう聞いてきた。
「何で、本物の銃を持ってるんですか…!?」
俺は耳鳴りがしている耳を押さえながら、そう聞いた。
「いつもここで本物の銃の練習をしているからね」
彼は何食わぬ顔でそう答えた。
「いや、そうではなくて… 銃刀法知らないんですか!?」
「戦争が始まった今銃刀法なんて言ってられないだろう?」
俺はそう言い返されてすぐに納得した。
それもそうだな。
それにしても本物だとは思ってなかったから油断した。
っていうかこんな本格的な訓練場だったら本物の銃でもおかしくないよな…
早く気付くべきだった。
「それで、俺はここでどうすれば…?」
俺はこれから何をするのか確認したかったからそう彼に聞いた。
「そうだな、まずは基本の射撃や動きからだな。それが終わったら特殊な技を教えよう」
彼は顎に手を当ててそう言った。
こうして俺の戦闘訓練は始まる事になった。