4話 第2回PTT
ちょっと短いですね…
ドアを開いて中に入り、鐘の音を聞いた俺はエアガンを構え、歩き出した。
兄のように走って行ったら瞬殺されると分かりきっていたから俺は慎重に前へ進む。
道が二つに分かれていたらはその両方を確認しつつ、前へと。
前回の参加者であろう人物はもうこの迷路を把握したのか既に何人か倒しているようだった。
だが、焦らず、慎重に道を進む。
そこで初めて敵と遭遇した。
相手は焦ってこちらを撃ってきたが、狙いが定まっておらず、俺には命中しなかった。
落ち着いて一度隠れて顔を出して相手を狙い引き金を引く。
俺が撃った弾は相手に命中し、赤いペイント弾によって服が赤く染まっていた。
その相手は溜め息をついて手を上げながら道を戻って行った。
「これで1点…」
今1位が何点なのか気になるが、ここからじゃモニターに映る得点表は見れない。
焦っても良い事にはならないだろう。
ここは落ち着いて自分のペースでやっていくしかない。
そう思った俺は一度深呼吸をしてエアガンを構えて複雑な道を進み出した。
少し進んだ先で今度は左右に分かれている道があった。
俺はまず右を見た。すると、そこには背中を向けている人が立っていた。
エアガンを構えていて手を上げていないと言う事は退場中の人ではない。
そう思った俺は確実に1発で彼に命中させる。
彼の背中は赤く染まった。不意打ちに驚いたようで身体がビクッと震えていた。
「これで2て…」
そう思った時、背中に結構な衝撃が来た。
その時の反応は今、俺が倒した相手と同じ物だっただろう。
衝撃に驚いて、後ろを振り返ると俺の方にエアガンを構えている人が居た。
まさかと思って背中を見ると赤く染まっているのが何とか見えた。
「嘘だろ…?」
俺はそう呟いて手を上げた。
来た道を戻って黒いドアを開けて外に出る。
得点表を見ると俺の順位は真ん中の方だった。
こんな調子で1位なんて取れるのか…?
兄のために戦うなんて意気込んだのが恥ずかしく思えてくる。
そんな時、鐘の音が鳴り響いた。
驚いて得点表を見ると目を疑った。
『1位 観月 健 30点』
その名前は忘れていない。
兄と良い勝負をしたあの観月という人だ。今回も出場していたのには気付かなかった。
それにしても兄が居なかったら30点も取れてたのか…
やはり俺とじゃレベルが違いすぎる…
こんな状態で1位になるなんて不可能だろう…
そう思っていたら1位の彼がドアを開けて目の前に現れた。
綺麗な銀髪のセミロングヘアー。その姿からしてもやはり只者じゃない。
彼は俺と目が合った瞬間、何かに疑問を持っているような目をしていた。
だが、何も言わずに彼は通り過ぎた。
その時、何故か俺は自然と彼に話し掛けていた。
「観月さん!」
振り返って俺は彼を呼び止める。
名前を呼ばれた彼も俺の方に振り返る。
「俺を、弟子にしてください!!」
俺は正気じゃなかったのかもしれない。
でも、勝つためには『学ぶ』必要があると思った。
だから、優勝者である彼から直接戦いに関して学びたかったんだろう。
「君はもしかして、秀人の弟くんか?」
彼は俺にそう聞いた。
「えっ? 兄の事を知ってるんですか?」
これは尚更チャンスじゃないか?
兄の知り合いとなれば赤の他人という訳じゃない。
ちょっとは話を聞いてもらえる可能性が…
「ああ、第1回の時に少し話してね…」
そこで話しただけかぁ… それじゃ本当に知り合いかどうか悩ましい所だな…。
「彼は最高の弟が居るってうるさかったからねぇ…」
「そうなんですか?」
「あぁ、何でもずっと慕ってくれているだとか」
兄もそんなに俺の事を大切にしてくれていたのか。
そう思うと尚更兄の為に戦いたい。
その想いが強くなった。
「それで、私の弟子になりたいって?」
「はい!」
俺は真剣な目をして頷いた。彼はその俺を少し見てから答えた。
「分かった、君が優勝出来るよう協力しよう」
俺は案外簡単に受けて貰えて驚いた。
「え、本当に良いんですか?」
「あぁ、君には強く慣れる素質がある」
彼はそう言ったが、どこにそんな根拠があるのか気になった。
「何でそう言いきれるんですか?」
そう聞くと彼は左手で自分の左目を隠し、こう言った。
「私の『目』がそう言っているからね」
そう言って手を下げると彼の左目は黄色く輝いていた。
彼が一度目を閉じると左目は普通の状態に戻った。
どうやら本当に只者じゃなかったようだ。
俺は驚いて声が出なかった。
だが、彼はそんな俺に何も言わず外に出て行った。
これから俺は彼に何を教えて貰えるんだろうか。
強くなれるという期待半分、何をするのか分からない恐怖もあった。
だが、強くなるしかない。
胸を押さえ、落ち着いて俺は彼に付いていった。