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サバゲー王者は国を守る  作者: 黒川 想流
1章 戦争の幕開け
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2話 第1回PTT

バトル要素が入ってきましたよぉ!



「それでは参加者の皆さんは中へお入りください」


そう言ったアナウンスの言葉に皆は黒い不自然なドアを開け、白い無機質な空間の迷路へと入る。

全員がそのドアを閉めた瞬間、会場全体に響き渡る鐘の音と共に大会は始まった。


ステージ上の構造も考えているのか、今回の参加者は全員突撃銃(アサルトライフル)を使っている。

一応、拳銃(ハンドガン)短機関銃(サブマシンガン)など他にもいろんな銃が用意されている。

この大会は会場の上の方からカメラが全体を撮っていてその映像は巨大なモニターに映し出されている。それを俺は見ていた。

参加している誰もが初めて経験するその緊張感のある戦いに身を竦めてゆっくりと歩き出した。

慎重に、その白い壁に挟まれた道を進み、曲がり角ではしっかり左右を確認して安全を確保しつつ歩み進む。

見ているこちらもその緊張感に思わず拳を握り締める。

だが、一人だけ全く緊張もしていないような素振りで走って道を進んでいく人が居た。

その姿は俺が見慣れている人物だった。


「さっさと出て来いよ…!」


兄は楽しそうな表情で複雑な道を走って進んでいく。

他の人が慎重に進む中、一人だけ圧倒的な速さで突き進む。


少しすると何人かが他の参加者、いや、ここではもう敵だと言うべきか。敵と遭遇し、撃ち合いになっていた。


「くっそ…当たったか…」


そう言いながら撃ち合いに負けた人達は手を上げて外に出る。

兄も他の人と遭遇していたが、兄の場合はもはや撃ち合いでは無かった。

遭遇したと思った時には相手はもう負けている。

兄は相手が構える前に胴体の心臓部に百発百中でペイント弾を命中させていた。

実銃のような反動のあるそのエアガンで確実に当てるのはなかなかの所業なはずだ。

それを平然と兄はしていた。


試合が始まって数分が経った。兄は淡々と遭遇した人を倒していき、今の点数表を見ると、兄は6点、2位の人が3点、他は1点だった。

良い勝負をしていると思ったが、そこからは試合の展開が早かった。

兄はペースを落とさず、前へ進んでいく。

そして、遭遇したと思った時には相手に弾を命中させている。


そんな時、兄は敵に後ろを取られた。

流石に不意打ちには勝てないか、と誰もが思っただろう。

だが、兄は只者じゃなかった。背後から敵は兄を目掛けて引き金を弾いた。

その瞬間、恐らく銃声を聞いてから自分の後ろから弾が飛んできていると一瞬で気付いて、背後から飛んできた弾を当たる寸前で避けた。


「おっと…!」


相手は1発で当てれると思っていたのか次の弾を撃つまでに隙があった。

外したと思ってから撃つ気だったのだろうが、兄は2発目を撃たせなかった。

片手でそのエアガンを構えて撃つと心臓部ではなかったが胴体に命中させた。

観客は思わず「おぉ…」と声を漏らした。


大会はもはや兄と2位の人の独壇場になっていた。

思わず俺は2位の人の名前を見た。

観月(みづき) (けん)… この人も只者じゃないな。

他の人の点数を1と2で止めて、2人だけが点数を重ねて行く。


そして兄が20点に到達し、2位の観月という人が17点。

残りは2人、彼等だけという状況になった。

兄は走って2位の彼を探す。


「どこだよラス1…!」


一方2位の彼は慎重に道を進んでいく。


そして今、兄が角を曲がってその2人は遭遇した。

兄は0.1秒も無いくらいの速さで彼を撃つ。


「終わりだ…ッ!」


だが、2位の観月という人はそれに気付いてすぐ下がり曲がり角の壁に隠れる。

その一瞬は誰もが手に汗を握った。

この大会に暗黙の了解的な物はない。それを理解していたからだろうか。

2位の彼は壁に隠れたまま銃だけを出し、兄の方に数発連射した。

ブラインドショットや、ゲリラ撃ちと呼ばれる戦法だ。

世間で行われているサバゲーでは禁止されている事が多い。だが、この大会にはそんな事は無い。

だから彼の行動は良い判断だろう。

それで兄の動きを止めて、彼は飛び出し近くの遮蔽物に身を屈め隠れる。

屈んだまま、彼は弾倉(マガジン)を交換し、撃とうとして立ち上がった。


しかし、兄は既に走って彼の後ろに回りこみ、ダイビングヘッドのように飛び出していた。


「こっちだぜ?」


2位の人は予想外だったのかそちらに構えようとするが、兄はとっくに彼の方へ銃口を向けている。

空中に居るまま、兄はニヤリと笑って彼に弾を命中させた。


その瞬間、鐘の音が鳴り響いて大会は終わった。


結果は21点に生存点をプラスされて26点を取った兄の優勝だった。

他は2位の彼が17点、他は2点が数名、1点が数十名という結果だった。


兄の動きに魅了された人も多く、会場は大盛り上がりだった。

湧いてくるような歓声の中俺は兄を尊敬し直していた。

兄は俺には出来ないような事をやり遂げる…

やはり兄さんは自慢の兄だ…


大会が終わって兄が外に出てくるまで俺は待っていた。

その間に、帰り途中の観客の会話が聞こえてきた。


「神崎さん凄すぎだよな…?」


「あんなの人間じゃないでしょ…」


「私、今日から秀人くんのファンになる!」


どうやら今日だけで兄のファンが大勢増えてしまったようだ…

そんな所も尊敬するし、羨ましかった。

観客がほとんど帰った後、兄は会場から出てきた。


「兄さん、お疲れ!」


笑顔で俺は兄を出迎えた。


「おう、習汰! 見たか?俺の実力、凄いだろ!」


兄も笑顔で俺にそう言った。

今更だが、俺の自己紹介がまだだった。

俺は神崎(かんざき) 習汰(しゅうた)。兄の2歳下で18歳だ。

兄とは真反対の性格で、大人しく過ごしてきた。

それは母が兄に世話を焼いていて母の為でもあったのかもしれない。

だが、それが普通になっていたから何も苦痛ではない。


「流石、兄さんだね… 俺も兄さんみたいになりたいよ」


俺が兄さんにそう言うと兄は俺の肩に手を乗せた。


「お前にだって頑張れば出来るさ、何だって俺の弟なんだからな」


兄はそう言いながら後ろを向いて俺に背中を見せた。

こんな優しくて強い兄が居て本当に嬉しい限りだ。


「動きすぎて腹減ったなー、飯でも食って帰るか!」


兄は俺の方に振り向きながらそう言った。


「そうだね、兄さんのいつものラーメン食いに行く?」


「おぉ!行こうぜ!今日はPTT初代チャンピオン記念に俺が奢ってやるよ!」



両親は少し前に亡くなった。だから俺達は外食を取る事が多かった。

どちらも自炊をするような人間じゃなかったから母が亡くなった時はどうなる事かと思った。

最近は自炊を少しずつでも出来るようにと交互にその日の家事を担当したりしているが、まだ外食に頼る事が多い。

今日はどっちにしろ兄さんの優勝祝いだ。外食で良いだろう。

そう思いながら俺は兄と夕暮れの街並みを歩いて、兄さんの好きなラーメン屋へ向かった。



こんな感じで不定期更新ですが、暇な時にでも見て行ってください…

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