15話 分隊
「次だ」
健さんがそう言って赤城さんの横に居た男性の方を見る。
「ん? あぁ、僕は落合 正寛。21歳。健や毒と1つしか変わらないけど、一応最年長として皆を守っていくと決めてるんだ! よろしくね!」
見るからに優しそうな彼は話し方も言った事も全てが優しかった。
何て良い人なんだ。こんな人、この世に居たんだな。
「…あれ?」
落合…?どこかで聞いたような…
「彼はこの前見た第4回PTTの優勝者だ」
そう健さんに言われて思い出す。
そうだ、弾を撃ち落としていた人だ。
「あぁ!あの人か…!」
言われて見れば顔もあの時見た人と全く同じだった。
「見てたのかい?それは嬉しいな」
落合さんはそう頭を掻きながら照れくさそうにしていた。
「あぁ、それと習は知らないかもしれないが、第3回の優勝者は毒だ」
そう言われて俺は赤城さんの方を見た。
「えっ、そうなんですか?」
「あぁ、25点しか取れなかったけどな」
ん?待てよ?
「ここに居る人達ってもしかして全員PTTの優勝者…?」
「と言いたいところだが、彼女は違う」
健さんはそう言ってここに居て挨拶をしていない最後の一人である彼女の方を見た。
彼女は顔が見えない程の鼻の高さまである前髪で顔を隠している。
「あっ、あの私は…、えと、その」
彼女は物凄く挙動不審になっていた。あまり対話が得意じゃないのかな。
「チッ、聞いてて鬱陶しいから俺が言うわ、こいつは渡邊 黒。18歳で、この中で唯一のPTT関連者じゃねぇ奴だ」
赤城さんがそう彼女の声を断ってそう言った。
「あっ、そう…です…」
彼女はそう小声で言った。
「毒、強く言いすぎだって黒さんだって頑張ろうとしてるんだからさ」
と落合さんがフォローに入る。
そう言われて赤城さんはそっぽ向いて不機嫌そうな顔をしていた。
「え、と私は…皆さんみたいに強くは無いんですけど…私にも変な力があって… 人の怪我を一瞬で治す事が出来るんです…」
怪我を治せると聞こえた瞬間、俺は驚いて反応も出来なかった。
「…怪我を治せる!?」
少し遅れてそう聞いた。
「ひぃっ、はっ、はい」
少し驚いた拍子に声が大きくなっていて彼女を驚かせてしまったようだった。
「すみません、ちょっと驚いて」
そう俺は謝った。
「あっ、気にしないでください…」
「怪我を治すなんて凄いですね…」
でも特に怪我をしてるわけじゃないから赤城さんのように見せてもらうことは出来ないかな。
そう思った瞬間だった。
「試しに私が怪我をしようか」
と健さんは言ってポケットに持っていた折り畳み式のナイフを取り出し、刃を出すと自分の左手の人差し指に血が溢れるほどの傷を付けた。
「わざわざ怪我します!?」
凄い犠牲だな、でもそこまでするって事は彼女の事を信用しているということなんだろう。
「急いで治します…!」
彼女はそう言って彼の人差し指に手を翳す。
すると、少し光るように見えた後、彼女が手を退けると健さんの指からは血も出ておらず、傷も完璧に無くなっていた。
本当に治した…
「すげぇ…」
「まっ、俺達が怪我しなきゃ役立たずだけどな」
赤城さんはまた彼女に水を差す。
「あっ、はい…毒さんの言う通り、私なんて役に立ちませんので頼りにはしないでください…」
彼女は俯きながら、そう言った。
赤城さんは本当に人当たりが強いな。あまりこの組み合わせは良くないんじゃないか…。
「最後に習、君の自己紹介を」
健さんにそう言われて俺は一度深呼吸をして言った。
「神崎 習汰、18歳です。俺は皆さんみたいに特殊な力も持って居ないですし、PTTを何とか優勝出来る程の力しか無いですが、この国の為、そして兄の為に戦うつもりなので、よろしくお願いします!」
俺はそう言って深々と頭を下げた。
「一応私も挨拶しておこうか」
健さんはそう言って皆が見えるところに立った。
「私は観月 健。二十歳だ。家族や友人、そしてこのチームの皆を守るために戦うつもりだ。だから生きてこの戦争を終わらせよう」
…チーム?
「チームって?」
俺はチームという部分が気になってそう聞いた。
「あぁ、まだ言っていなかったな」
健さんがそう言うと皆はこちらを向いた。
「ここに居る5人が俺達の分隊だ。戦場では基本この5人で行動する事が多くなるだろう」
赤城さん、落合さん、渡邊さん、健さん、そして俺。
この5人がこれからこの国を背負う軍の一分隊なんだ。
赤城さんと渡邊さんの関係で、少し雰囲気が悪いが、こんなチームで大丈夫なんだろうか…