とある女の恋物語。
これは、とある女の汚い恋物語である。
「ミサキ。今日は暇?よかったら、デートに行かないかな?」
「デートォ?いいよぉ!いこう?今日アタシ暇なんだよねぇ!」
「ん、ならよかった」
女の名前は夏野夢咲。
顔、スタイル共に良しだが勉学、性格に難ありだった。
長い髪の毛はクルクルと巻いており、頭には花や何やといろいろなものが飾られている。
そんな髪型に負けじと顔には化粧がされており、素肌の幼子のような可愛さは微塵も残っていなかった。
「アタシね、今日ヨウくんのおうち行きたいなぁ。ダメェ?」
男、杉田陽介の腕に絡みつき、自分の胸を押し付けながら上目遣いで誘った。
すべて計算づくされた汚い誘いだ。
それを知ってか知らずか陽介は顔を赤くし、目は胸に向けたまま夢咲の頭をなでると「しょうがないなぁ」と笑った。
欲望が見え巻くその瞳で夢咲を舐めまわすように見ると頭をなでていた手を頬にやり、そのまま口にキスをした。
「んぅ……もう、大胆なんだからァ……」
満更でもないように笑い、舌舐りを一つすると今度は片脚を陽介の脚に絡みつける。
「早くやりたいなァ……?いいでしょぉ……?ヨウくん……」
甘い猫なで声で誘う。
砂糖のような甘い匂いを惑わせている分、更にその声は頭に残る。
まるで一種の洗脳かのようだ。
だが、男も満更ではないらしく更に欲の篭った瞳で舐めまわすかのように夢咲をみて、早く帰ろうと提案している。
夢咲と陽介は恋人同士だった。
周りも知っているほど有名な恋人。
「お似合いカップル」などと謳われているほどだ。
だが、夢咲には秘密があった。
別の学校の生徒会長の男と夢咲は付き合っていたのだ。
長瀬遥。成績、運動、神経、容姿、性格どれを取っても完璧に等しい男だった。
だから夢咲はそいつに目をつけた。
将来有望。自分が強請ったものは何でも買ってくれる、してくれる。そしてメールさえしたら何も気にしてこない。
なんていい玩具なのだろう!
夢咲は純粋な欲しがりの女の子を演じた。
そのお陰か遥はすぐ手に入った。
別の学校ならバレない。
それにバレても優先するのは人間勝ち組の遥の方だ。
そういつも夢咲は心の中で自分の恋人陽介を嘲笑っていた。