とある女の恋物語
人間はもろく儚いと誰かが言った。
「まあ、そうかもしれないわね」
お嬢様は1つ呟くと近くの蝋燭に火をつけて1冊の本を取り出した。
ぼうぼう、ごうごうと炎は己を主張し、周りを明るく照らした。
本の中身は何も書いてない真っ白なページばかり。
そんなページをお嬢様は面白そうに笑いながら読み始めた。
お嬢様には、その真っ白なページに何かが見えるようでさぞ楽しいだろう笑みで本を眺める。
「ん……?あぁ、まだいたのね。では、この本の中身を教えてあげましょう」
真っ黒な筆でお嬢様はその真っ白なページを、黒く塗っていった。
途端、黒く塗った部分になにか、物語のようなものが映し出されていた。
男が2人、そして女が1人。
なにか、楽しげに話しているような絵だと思えばなにか、喧嘩してる絵にも見える。
はたまた体を重ね合わせているようにも見える。
そしてそれは多分、どれも正解だろう。
なんせ、そのページの絵がコロコロと変わっているからだ。
「これは とある女の恋物語 。この1ページだけで描かれるくらい短い話なの。あなたも暇でしょう?遠慮せずに見ていきなさい」
ページに触れると脳裏に鮮明に出来事が浮かんできた。
この本は何なのだろう。
そして、お嬢様は一体何者なのだろう。
謎は深まるばかりで何も解決などしていない。
このお話もこの本にきっと載ってしまうのだ。
だから、まだお話は終わらなくていい。
謎をあかそう。
この不可思議な 物語 の謎を。