油断ですわ
魔法文化祭が始まりましたの。
ですが気分が晴れませんわ……
こういうのを惰性で過ごすというのですわね。
何もかも考えるのが辛いですの。
ですが、私、副会長ですし、魔法小物同好会も実質の責任者ですし……
仕事はしなくてはいけませんのよ。
ああ、なんて愚かな。
どうして、私は……
副会長のお勤めとして今回の魔法文化祭では巡回などもしなくてはなりません。
ええ、こういう行動は必ず二人一組ですわ。
そして、現在アルフレッド様と二人で何故私が巡回しているのか。
惰性の為ですの。ええ、気力をなくして何も考えていない間に決まっていたのでしょう。
気がついたらその原因であるアルフレッド様と一緒にいるだなんて……
愚か過ぎて……
溜息意外に出る物など御座いませんわね。
そんな油断。
ええ、皇太子殿下が帰国したと知って、更に私の愚かさが生んだ油断でした。
「あぶないっグッ」
「アルフレッド! っ貴様、何者か!」
なんて事!
アルフレッド様が怪我!?
先ずは落ち着きなさい、今は防御、そして緊急事態の発生シグナル。
アルフレッドは!
良かった、準備は無駄じゃなかった……治癒と解毒の混合魔法具。
毒を使うという事は普通の相手じゃないですわ。
暗殺者の刃を弾きながらもなんとか緊急事態用の魔法具を稼動させましたから、今の護衛意外の面々にも全ての事態を想定した動きを期待できる筈。
襲撃者は夜の妖精の面々と共に取り押さえましたが……
全員が自害しました。
前回と同じくの手でしょうか。
ですけれども、確実に殺す為に毒まで用いて……
自害するとは言えどもしも思った方が首謀者だとすれば。
ですが、あの方は国に帰国されたのに、どうして。
何を見落としておりますの!
ですが今はまずアルフレッド様ですわね。
「アルフレッド様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、それよりヒルデに怪我はないかい」
「大丈夫で御座いますわ、殿下のお陰でこの通り傷一つ御座いません」
「良かった……それが聞けて安心したよ、それよりも、名前」
「は?」
名前?
「今、殿下と言っただろう? ヒルデ……さっきは呼び捨てで呼んでくれたではないですか」
……
……
そんな筈は、無い筈ですわよね。
「恐らくアルフレッド様の聞き違いですわ、それよりも他の方が気になりますので確認を」
「仕方が無い……確かに気になるね」
「ええ、この事態で私達以外の集合がないですし、連絡用の魔法具からも返答がありませんでしたわ」
とにかく私達は魔法小物同好会の部室へと急ぎました。