謀ですわ
準備万端整えまして、夏季休暇から王都へ。そして気合を入れ学校へ向かう私達に連絡が届きました。
皇太子殿下の帰国手続きがなされたと。
「これは、幾らなんでも急な……」
「お城からは、何かご連絡はございませんの」
「うーむ、暇を告げる報告は確かにあったそうなのだが、夏季休暇の件だと思っていたそうだ」
私の打った手によるものかどうか……
一応現状の報告を客観的にさせて頂きましたので、効果の程は分かりません。
書面のみという事実の羅列を皇国の王妃様がどう捉えたか。
――婚約目前の女性に対して長期に渡って声を掛け続けている事。
――王女殿下に対して繋がりを持つべく、地位を利用し学校の規則を捻じ曲げようと幾度か行動した事。
――慢心によって勉学と実技の成績が思わしくない事。
その程度の事ですが。
「ヒルデ嬢……それは間違いないのではないか?」
「そうでしょうか、事実のみのお手紙なのですが」
私からアルフレッド殿下にだけはお伝えしておこうと、内容を告げましたら顔が引き攣りましたわ。
オホホホホ、そんなに強烈でしたかしら。あの報告は飽くまで事実のみの記載ですわ。
襲撃の可能性など一切書いておりません。
「クゥッ、アハハ、やはりヒルデ嬢はそうでなくてはね!」
なにやらご納得は頂けました様ですが、本当に納得されておられますか?
少々疑問ですわ。
ですが、どちらにしても居られなくなられた事で座学も実技も気合を入れて望めますわね。
魔法文化祭のチャリティーも御座いますし、そちらに注力できます。
王妃様にはご苦労をおかけしたお詫びとして新製品の香水でもお作りしたらお送りしましょう。
オーッホッホッホッホ!
「アルフレッド殿下?」
「いや済まないね、でも貴女は素晴らしいと改めて思ったのだよ」
……時折こうして苦しめて下さいますのね。
「そうでした、アルフレッド殿下「そろそろ、アルフレッドと呼んではくれないのかな」え?」
「いや、アルフレッド殿下では、親しみが無いと思っていたのですよ」
「ですが、私からの立場ですと殿下を呼び捨てには……」
「ではせめて皆と同じで様にはしてくれないだろうか?」
……私の自制心よ!
頑張りなさい、さあ、お断りするのです。
「アルフレッド様」
「ええ、それでお願いしますね、今後、殿下とは呼ばないようにお願いします」
間違えましたわ!
何をしておりますの私ぃ……
やってしまいましたわ、でも、まだリカバリーぐらいは。
「ですが、公の場合などは殿下もしくは王太子殿下とお呼び致しますわ!」
「勿論ですよ、その切り替えが出来るからこそ貴女には親しみを込めた呼び方をして欲しいのです」
アルフレッド様が……
アルフレッド殿下が、何でしょうか手強くなられて居られませんか?
勿論、普通の時分でも大きく成長されておりますが、女性の扱いまで……
もしや、だれか意中の方が……
……
……
……
また、ですの?
私の……