閑話 恋と友情
「皆、聴いて欲しい……」
「なんだ改まって?」
「我らは同士であり戦友であり親友、遠慮など要らないだろう」
「……ッフ、成る程な」
「やっぱりそうなんだね?」
集まる5人の青年達。
新年の集まりで全員が城の一室に会していた。
恋心を胸に誓い合った仲間。
その中でも一際目立つ少年が声を上げたのだ。
「僕は、ジャンヌ嬢を愛してしまったようだ」
「なん、だ、と!?」
「そ、そうなのか?」
「あの様子を見ていれば判るだろうに」
「そうだよね……アルフレッドとエルリッヒはもう少し見る目を養わないと」
突然の告白、だがそれでも誰も裏切り者だとはいえない。
確かに恋心を打ち明けあった友だったが、それは幼き日からの淡い憧れへの想い。
もしも愛する人が現れたというならば……
「おめでとうデヴィッド! こう言っては何だがデビュタントの時よりお似合いではあると思っていた」
「確かに、絵から抜け出てきたような二人だと多くの人が噂していたしな、おめでとう、心から祝福させてもらうよ」
「フフフ、彼女は真っ直ぐでヒルデ嬢の親友でもある。彼女はジャンヌ嬢を君に任せられる事を喜んでいた、言わずとも大切にするのだろう、おめでとうと言わせてもらおう」
「有難う、アルフレッド、エルリッヒ、バートレット」
「おめでとう、デイヴィッド……わかっていたけど、うん、そうだね。実は僕も……」
お祝いを述べる中で一人また告白をと頑張ったクリストフに向けられたのは……
「「「「え、今更なのか!」」」」
という唱和だった。
「え? 待って、何でその反応になるの、違いすぎないかい?」
「いや、判り易かったぞ」「ああ、デイヴィッドの事に比べれば……」「プッ……いや済まない」「その、うん、クリストフは顔にね」
「エーッ!」
がっくりと落ち込むが全員が微笑ましい物をみているようだった。
「それで二人ともどうするんだ? 婚約なら父上に口を利くので安心して欲しい」
「そうだな、正式な流れはまず婚約を結ぶことになるのか、アルフレッド様が居れば問題はない」
「その辺りは興味があるね」
積極的に力になろうと断言するアルフレッド達。家の事は抜きにしても友の恋ならば全力で助けてやると意気込んでいた。
「僕は早めに婚約の件を話して……ジャンヌ嬢の実家へと挨拶に伺いたいと思っている」
「チョット待て……という事はなんだ、既に?」
「うん、告白はして了承はもらっているよ」
アルフレッドとエルリッヒ、バートレットはその辺りは当然とみているので驚いていない。
驚いたのはクリストフだった、若干のヘタレ具合は改善されていない。
それ故に尻馬に乗るような告白だったわけだが……。
「もしかしてあれ程に見つめあったりしているのに告白もまだなのかクリストフよ!」
「それはいかんぞ! 騎士として情けないぞ」
「クッ、俺を笑い殺す気かクリストフ……」
「…………告白はしたほうがいいよ、そうだ、折角覚えたんだから贈り物と一緒にするのがいいと思うよ、ジャンヌは僕の熊の人形を大切にしてくれているよ」
散々に言われるクリストフ、まともな意見はデイヴィッドからのみ、そして有効な手だとクリストフも思った。
「頑張って作る!」そう拳を握り締めたクリストフを全員が優しい目で見ていた。
クリスタルで作り上げたブローチを手に愛を告白した彼の騒動が起きるのはデイヴィッドのそれよりはもう少し後の話。