閑話 紅玉の里
「お嬢様?」
「フフフ、シショウ、いえセリお姉さま。この私は一番デシですのよ。隠し事など出来ませんわ!」
デビュタントを終えた事で一段落し、現在スカーレット領の里、コウギョクにおりますの。
ええ、こればかりは隠していたお姉さまがいけませんわよ。
既に裏は確認済みですし、相手にも事情聴取は済んでおりますの。
ですから逃げられませんわよ。
では夜の妖精部隊の筆頭であるルベウス家の初代当主セリの結婚式を始めますわよ。
気にしておりましたのよ、18歳で着て頂いたという年齢的な事。
相談せねばと囲炉裏を囲んで里の皆さんに聞いたら相手が居ると言うでは有りませんか!
なんと最初に来た夜の妖精部隊で部隊を率いた方でしたの。
足しに腕前もしっかりしていて、寡黙で無駄がなく、気が回る方でした。
現在は王太子殿下を初めとして王族の警護責任者ですわ。
それを隠し通しておられるだなんて!
冷たいですわ!
「皆さん、お姉さまの着替えを宜しくお願いしますわ!」
「え、えええ!?」
「フフフ、サイズは把握しておりましてよ、なにせ侍女の制服などは私のカンパニー経由ですもの、それを元にしまして、当家からウェディング用にドレスとシロムクを用意しましたわ。安心して下さいませ、ドレスは職人に仕立てさせた一品、そしてシロムクは東国より取り寄せましたのよ」
お姉さまの晴れの舞台ですわ、気合も入ると言うもの。
この日の為にスカーレット領の里には用意が一杯ありますの。
さあ、着替えさせたお姉さまを輿にのせて参りますわよ。
到着しましたのはジンジャです。
カンジョウしてブンシャをゾウエイさせて頂きましたのよ。
これはどちらかと言えば結婚式の為だけでは御座いませんけど。
聞きましたら可能だろうという事でお願いしましたの。
何でも東国の里と同じ神様を祀っているのですとか。
こちらで式を挙げていただきますわ!
ええ、旦那様は既に中でお待ちですわよ。
「お、お嬢様の結婚も待たずに私が結婚するなど!」
「駄目ですわ! 私の為というならばセリお姉さまの子供を見せて頂きたいですもの」
「お嬢様……」
「折角愛する人がこんな素敵な方なのに結婚しないなんて勿体無いですわ」
「ですが……」
「大丈夫ですわ、セリが子育てに入っても里の皆さんが手伝ってくれますわ、ねえ、皆」
「当たり前だな」「そうそう、セリ様のお陰で表を歩けるのよ」「感謝してもしきれないからな」
「少しは恩を返させて欲しいのさ」「こんな素敵な暮らしができるのはセリ様のおかげだ」「お嬢様の言うとおりだから大丈夫」「安心して結婚しな」「有難うな」
「これでも安心できないでしょうか、お姉さま」
「いえ……有難う御座います、私もシンと夫婦になりたいです」
フッフッフ言質は頂きましてよ!
儀式は滞りなく進み、正式にセリお姉さまとシンさんが結婚しました。
これでお祝いをお送りできますわね。
「ではお祝いの品はこの目録ですわ!」
見た瞬間にお姉さまの驚いた顔が見れましたわ。
「こ、こ、お嬢様!?」
「それが私からのお祝いですわよ」
「お祝いで土地などと! しかもこの里全てではありませんかっ」
「ええ、勿論ですわ、私が命名した家名リベリウス家にはそれだけの価値がありますもの、女爵の地位を送りますからこの地を見事に治めてくださいませね。なかなか名目が無くて困っておりましたの、しかも女爵の地位をお渡しするにも家として次代がなくては大変ですものね」
オーッホッホッホッホ! 大・成・功ですわ!
早く子供の顔を見せて下さいね、お姉さま。