呆然ですわ
私共三名が主催する形で魔法小物同好会を設立しました。
代表をレイチェル様に務めていただき、補佐を私とジャンヌという事で登録し、同好会用の部室を得ましたの。
学校の訓練が終わり帰寮せず、そちらに材料などを準備し製作などをする為です。
安全面などを考慮して部室が何故か校長室の横にあった応接室が接収されたり、誰かのやる気を引き出す為に紅茶やお茶菓子が準備されて、製作用ではない机と椅子が並んでいるのはご愛嬌ですわね。
ええ、そのような事は些事でしてよ。
むしろ応接室の下りはお断りしたのですが、安全面を考慮して頂きたいと言われれば致し方ございませんでしたし、設備としても広さとしても申し分がありませんでしたの。
そんな部屋を準備しておりました所に、ドアを叩く音が響きました。
恐らくはチャリティーについての説明を受けに来られた生徒か、同好の士が入会を希望しにきたのでしょう。
「どうぞ、お入りになって」
「し、失礼します」
最初、何方がいらっしゃったのか理解が及びませんでしたの。
見た目が若干違いますが、エーリカ・ダリア・ランドクリフ嬢がそこに居りました。一瞬だけ私も警戒をしましたが、先日の考察を思い出します。
今の所推察した範囲内で3通り。
他国の間者説、入れ替わり説、天然毒婦説。
そう、この3通り意外の可能性もありますが、間者説は消えました。夜の妖精の調査で在り得ないと判りましたの。
そして天然毒婦説、こちらも存在が判明してから続けた調査では可能性が薄いとなっております。クラスも違いますから実際に接しておりませんでしたが、監視はしておりましたの。ですが一切王太子殿下などと接触する様子が御座いませんでしたし、魔力は高いですが扱いが今一つ……
それに授業態度も礼儀作法を貴族として慣れていないだけであって至って真面目です。
やはり、他国の工作員との入れ替わりの線が強いのではと護衛を付けた程なのですが。
「どうしましたか?」
「はぃ、こちらの魔法小物同好会でその、成形魔法とかを使っての小物製作を指導もして貰えるという話を聞きまして! あた、私も仲間に入れて頂きたいと」
同好の士?
小物作りの仲間……
……え?
「まあ、そうなのですかっ、フフフ、私レイチェル・ジュエル・エルガルド・ローゼンです、同じ学生ですから気軽にレイチェルと呼んでくださいね。一応代表になっておりますが、一緒にお姉さまに学んで楽しく過ごしましょうね」
「うむ、私の名はジャンヌ・シルバー・エリンジウム、ジャンヌと呼んで欲しい、この中では一番不器用なんだが一緒に頑張ろう」
「し、失礼しました! 私、エーリカ・ダリア・ランドクリフで御じゃいます」
……ハッ、意識が飛んでおりましてよ!
「宜しくね、エーリカ様、私ヒルデガルド・ルビー・スカーレットと申します」
「初日にして仲間が増えるだなんて素敵ですわ」
「ああ、幸先がいい事だ」
「わ、わた、私が仲間で宜しいのでしょうか」
「ん? 何をいっている仲間以外ないじゃないか」
「そうですわよ」
「ええ、同好の士であるならばもう仲間でしてよ」
「憧れの皆様と仲間……仲間……ふぁぁ」
やはりこの方は別人に違いありませんわ。私の知る毒婦と違いすぎましてよ。
彼女がレイチェル様やジャンヌ、そして私の前で鼻血は出しませんもの。
……は、鼻血!?
「これを! その洋服に付いてしまいますわ」
思わず駆け寄って顔にハンカチーフを当ててしまいましたのですが……
どうして気を失っておられますの!
衛生兵! 衛生兵ー!