包囲されましたわ
「クルクル!」
「ふわふわだぁ」
「ビョーン!」
「キラキラしてるの」
オホホホホ、私のこの髪型の素晴らしさが解るなんて、将来有望でしてよ!
でも、引っ張るのはお止しなさい、伸ばしても絶対に崩れませんが、いけませんわよ。
フフフ、このキラキラは新製品ですのよ。
綺麗でしょう!?
「だっこぉ!」
「姉ちゃんの目って宝石みたいだな」
「きれい~」
子供は無邪気でいいですわ~。
癒されますわ~。
…………ハッ! 目的を忘れておりましたわ。
「ごめんね、お姉さんは院長様にお話が在って来たのよ」
「お姉さんもワルモノ?」
「クルクルもワルモノ?」
「キラキラだから違うと思う」
はて?
ワルモノとは何でしょうか……
少々気になりますわね。
「悪い人がいるの?」
「いるのー!」
「お家に悪戯されるの」
「いんちょう先生に怒鳴ってるの」
本日中に数軒の孤児院へと訪問する予定でしたが、どうやら予定の変更のようですわね。
ええ、長年の付き合いですもの、お姉さまに目を合わせれば更に夜の妖精が動いたと目で教えていただけました。
「御免なさいね、お客様が来られているとは知らないで」
「いえ、お気に為さらないで下さいませ」
「実はこの後お客様が来られるので長くお相手できないのですが」
「あら、そうですの、残念ですわ」
ふむ、例のワルモノなる人物でしょうか。
私の居るタイミングで現れたならば好都合ですが。
「ええ、それがね光栄な事に、後領主様のお嬢様が訪問して下さいますのよ」
「ォ……」
ふ、噴出さなかった私を褒めて下さいませ。
危なかったですわ!
紅茶を口に含んで優雅に微笑んでおりましたのになんて不意打ち。てっきりワルモノの件だと思っておりましたのに、私の事でしたか。既に目の前におりますが……
どういたしましょうかしら、な、名乗り難いですわ!
先ほど既に訪問の目的の慰問という件は果たして、労働力の確保についてのご相談をしたかったのですが……
「あの、そういえば先ほど子供達からワルモノがというお話を聞いたのですが」
「あら、お恥ずかしいですわ、私共の孤児院の土地の買取の話が来ておりまして……時折来られては交渉をなさるのですが、その方々の事でしょう」
「何かお困りなのですか?」
土地の買取は別段違法ではございませんわ。
ですがワルモノで悪戯をするなどと言っておりましたし。
「そうですわね、建物を蹴られたりする方々ですので子供には怖かったのでしょう」
なるほど……
「ですが、そうした行為をすればお咎めもあると思いますわ」
「ええ、ですがどうやら力のある商人のようでしてね、一人二人ぐらいゴロツキが咎められても気にしないようなのです」
スカーレット領は元々裕福ですし、この数年で更に発展しておりますから領都の中心にあるこの孤児院の立地は良いですものね……
ですが孤児院に手をだしているということは領外の商人でしょう。
我が家が孤児院の保護をしていると知らずに手を出すとは……
愚かな。
「でも、それを領「せんせーぇーー!」あら?」
「どうしたのかしら」
表から子供が飛び込んできましたわ。
「ワルモノ来たの!」
あらあら、夜の妖精の報告を待つ前に来られてしまいましたのね。
少しお顔を拝見しておきませんとね。
「おうおう、ババア、ソロソロ首を縦に振ってくれねえかなあ?」
「俺たちがこうして何度も来てるんだ、顔を立ててくれなきゃ困るんだよなぁ」
「こんなおんぼろの建物を買い取ってやるって言ってんだからさ」
ガンガンと足で壁を蹴るゴロツキが5人、全員領軍の訓練に放り込みたいですわねぇ。
ええ、これは許す必要は御座いませんわ。
「じゃないと、可愛い子供が怪我したりするかもよ?」
「そうそう、居なくなったりするかもなぁ」
「子供ってそういうもんだもんなぁ」
「ハッ、貴方たちはなんて事をいうのです!」
「いやいや心配してやってるだけだって」
「そうそうババアの目じゃ行き届かない所もあるだろう?」
「こんなとこじゃなくて田舎でなら面倒みれるだろうって言ってるだけさ」
フフフ、分かりやすいですわね!
「フ、フフフフフ、面白い事を仰る方々ですのね?」
「あ? なんだテメエ」
「子供は引っ込んでな」
「それとも相手して欲しいってかぁ」
オーッホッホッホッホ!
貴族侮辱罪確定ですわね、これだけで重罪ですわよ!
「貴方たち、後悔なさいませ」
「はぁ?」
「何言ってんだこの女」
「ケケケ、私お嬢様よ! ってか、浚うぞこのアマ!」
「無礼者がっ!」
手を伸ばしてきた相手の腕を捻子って捻りながら眉間に聖魔銀のセンスで一撃し昏倒させます。
如何ですか魔力を帯びたセンスの一撃は朦朧と致しますでしょう?
「テメェ」と掴みかかろうとした男はお姉さまによって5m程彼方へ投げ飛ばされました。
許しを与える必要も御座いませんわね。孤児院ですし、流血沙汰は避けましょう。ですが、この国の子供ですもの、鍛えた者とそうでない者の違いを見るには良い機会と思いますわ。
オホホホホ!
私のセンスの味は特別でしてよ?
人体用に電撃を放つ調整が面倒ですから、私のセンスには対人制圧専用の魔法陣が仕込まれておりますのよ。
スパッと開いた扇子に隠された魔法陣を発動すればナカボネの数だけ電撃を飛ばせますのよ。
バシッっという音と共に崩れるゴロツキ共。
「全くなっておりませんわね、領軍に放り込みましょう」
「畏まりました」
「あの、巻き込んでしまって御免なさい」
「構いませんわ、それに懲らしめねば我が家の家名に傷がつきますもの」
「そうなのですか?」
「ええ、申し遅れました、私ヒルデガルド・ルビー・スカーレットですの」
「え?」
あら、院長様が固まってしまいましたわ。