謝罪ですわ
「「「「「先ずは謝罪をさせて欲しい」」」」」
ってどういう事ですの?
狙いはなんです……
いえ、疑いすぎでしょうか。一度死んだ経験から避け続けてましたし。報告を受けても疑っておりました。
でも謝罪?
「あの、皆様まずはお顔を上げて下さいませ、そして謝罪と言われましても何が何だか判りませんわ」
てっきり論争なりで私に対抗されるものとばかり思っておりましたから対応に困りました。それより何に謝罪をされるのでしょう。せめて判るように前もって根回しなどされないと紳士としては失格ですわよ?
「ヒルデガルド嬢……」と消沈なさったのは王太子殿下。
「いや、こういう方だとは思っておりました」溜息交じりにバートレットが。
「ええ、気にされてないだろうと」納得した風に言うクリストフ。
「寧ろ眼中に無かったのかもしれない」諦めた様なデイヴィッド。
「つい納得してしまいました」そして目を輝かせたエルリッヒと。
エルリッヒを除く全員が若干残念そうなのは何故でしょう。
「私から説明させて頂きましょう、少々アルフレッド殿下の受けたダメージが大きいようです」
そういって説明してくれたのはバートレットでした。
万年2位という扱いでしたが、喋り過ぎて大丈夫でしょうか、無口、無感動、無表情が売りの貴方らしくありませんわ。いえ、報告では、奢らず日夜勉学に励み奉仕活動まで行っていると聞いておりますが……
貴方完全に別人過ぎますわ。
……いけません、これは喜ぶべき事態ですわよね、ええ。
「私達がヒルデガルド嬢に謝らねばならないのは幼き日に働いた無礼の件をお許し頂きたいからに他なりません」
そんな昔の事ですの?
オホホホホ、わ、忘れていたなんて事では御座いませんわよ?
どちらかと言えば遣り込めて叩き伏せて、矯正する事を目的としてやりましたから、まさか謝られる事になっているのが不思議なのですわ、そう、どちらかと言えば今度こそ勝つ為に頑張ってらっしゃったのでは御座いませんの?
「貴女のお陰で私達は目が覚めました。そして貴女に認めてもらえるようにと努力する事で周りからも認められるようになり、如何に自分たちが愚かな間違いを犯し、偽りの誇りをもって人々に接していたかを知りました」
バートレットがこれですと他の4人の報告も本当なのでしょう。
「私も、その傲慢で、王家の子息である事が当然であると勘違いしていたのだ。人は傅く者であるなどと当然に思い、剰え不遜な振る舞いが許されると思い違いをしていた。あの衝撃のお陰で道は正されたと思っている。今の私が王太子と認められたのは貴女のお陰だ」
アルフレッド殿下は前世でも王太子と認められましたが……
それは甘やかされた結果でしたものね。
今世では厳しい教育(当家からの派遣)と王妃様の薫陶を受けていると聞いてますもの、切っ掛けは私かもしれませんが、自分の力ですわよ。
「私は貴女のようになりたいと思い頑張る事で今の自分がいます」
デイヴィッドは美男で遊び人にならず男女を惑わせるような行いもしてないそうですものね。でも私を目指しているのは初耳ですわ。笑顔の天使と呼ばれていて詩文と音楽に優れているという話でしたのに、何故私なのでしょうかお聞きするのが恐ろしいですわね。
それにしてもこれは全員からですか!?
恥ずかしいのですが。
「一撃で沈められてから私は目が覚めました。それからと言うもの真の騎士になるべく鍛錬しております」
エルリッヒは判ります、ええ、一撃でしたもの。
家の関係でもお付き合いはございますからお父様やお兄様からも噂は聞いておりました。
騎士団にも通って鍛えていると聞いてますから。
「一応全員に私は言ったのですよ、恐らく気にされるような方では無いと、お見せするなら成長した姿であるべきですよとね。それがきっとヒルデガルド嬢の望まれる事だと、といいつつ私も謝りたい一人だったのですが」
あの自信の無いクリストフではなく自身を高める努力を続けていると聞いてます。出涸らしなどという悪評もなく好評をもらえるようになっているのだとか。
「ま、まあそういう事なんだ。今更だろうとは思われるでしょうが謝罪させて欲しい」
「お兄様ったらそんな事を考えてらしたの」
「これでも反省はし続けているつもりなんだよレイチェル」
「お母様からもお兄様の件を聞いてお姉さまになってもらえないかもと思った時は悲しかったのですわ」
「そ、そうか、レイチェルにも心配を掛けたようだ、すまなかった」
レイチェル様ったら心配されてたのですね。
確かに婚約など困りますと王妃様にもお伝えしておりましたものね。
あら、レイチェル様が少し浮かれておりますがどうしたのでしょうか。
そんなに立派になったアルフレッド殿下を見て嬉しかったのかしら。
ええ、確かにこれだけ確りしている方々ならば将来も安心できますわね。
「皆様、私こそ幼き日とは言え、失礼を働きました事謝罪させて頂きます。宜しければ今後とも仲良くさせて下さいませ」
「「「「「ッ!?」」」」」
如何してでしょうか。
そ、そんなに驚かなくても宜しいのではなくて!?