意外ですわ
私達は学生といえど貴族である事は変わりません。
学校に休みがあるのも、その為の措置と言えましょう。
休日は様々な社交の場に顔を出す必要がございますから……
最短で貴族令嬢が舞踏会へとデビュタントするのが12歳頃、これは謂わば結婚可能とみなされ、一人前であると認められる事。
デビュタントするまでに婚約が決まる事もあります。前世の私などがその例ですわね。互いの家の合意と陛下からの了承が出れば婚約が成立し、幼年の間に結婚相手が決まってしまえば、親さえいれば直ぐにも夜会にでることさえありえますわ。
一般的に早く婚約する事が貴族の令嬢には望まれ、より高い身分の方、将来が有望される男性との出会いを求めるのです。そして可能ならば、恋愛の末に結ばれる事を望まれます。そして夢の無い話ですが、様々な事情での政略結婚される令嬢方も多いのです。
舞踏会へのデビュタントに憧れられているご令嬢も多いですが、その為にも努力は必要です。デビュタント前の私達はこうして休日には社交の場へと出る事は必要事項です。
国王陛下主催のデビュタントの舞踏会は貴族令嬢であれば全員出席なのですが、その後は違いますもの。
夜会と称される舞踏会と晩餐会、そして※懇親会、茶会などに誘って頂けるかどうかなど日頃のお付き合いによって見定められていますもの。デビュタントの前にしてこうした茶会に参加できるかどうかさえ家格は勿論、本人の資質が問われているのですわ。
本日もこうして休日ですが二人と共に、バーミンガム男爵家主催の茶会へと招かれております。メインは私達の年代ですが主催されているエルミア夫人は懇親会を開催されている事で有名です。
ここで認められていれば招待される可能性があると言う事に繋がります。
我が国において、侯爵以下の貴族の子は親より一つ下の爵位を授かる事になります。公爵という立場上、我が家では下がりませんが、他家の場合は功績がなければ爵位を落とす事になります。
それ故に貴族は常に爵位を保つ為にも上げる為にも功績を上げ続けるのです。
戦争だけでなく領地を見事経営する事などでも良いのですが、時折間違えた努力をされて、そのまま取り潰しになる家なども御座います……
政略結婚などに頼るなどというのは、その見本の最たるものなのですが、権力を得ようとする方が多いのですわよね。
貴族同士の結婚を何か勘違いされております、ですがそれが無駄な努力でもないのが痛ましいですわね。家同士の繋がりなどによって一時的には確かに効果があったりもしますから、ですが所詮は他力本願であって地位に見合った功績が無ければ家格は下がりますし、そういった事をされる方は不正などが多いものですもの、王家は其処まで甘く御座いませんわ。
それにしても何故でしょうか、私の前にいらっしゃるのが見間違えでなければ王太子殿下とその仲間たちとなっております。この場にいらっしゃるのは不思議な事では御座いませんわ。有数の親睦会の主催者であるのエルミア夫人の茶会ともなれば、次代を担う彼等が呼ばれるのは当然。
そこに疑問は御座いませんが、どうして私の座る席がこの場になっておりますのかしら。
王妃様ですかっ!
茶会での最初の席を決めるのは茶会の主人であるエルミア夫人ですがエルミア夫人は王妃様と親しい筈。学校での授業後に招待されると言われておりましたが、訓練で疲れ果てて諦めていると思っておりましたのに、こうして手を回されましたか……
「レイチェル、ヒルデガルド嬢、ジャンヌ嬢もどうぞお席に……」
「有難う御座います王太子殿下」
「いや、すまない、何故かその学校のサロンへと招待する前にこうして御会いする事になってしまった」
……これで王妃様説に確定ですわ。
レイチェル様の頬がプクっと膨れました。
一応報告上では真面目に武術や学問に取り組まれていると、ええ、我が家から派遣した者達ですから一切の容赦なく鍛えていると聞いております。
それでもまだまだだとも報告されておりますが……
「いえ、訓練の後では中々に機会も御座いませんのは存じておりますので」
ええ、疲れ果てているのは知っておりますわ。
男女で多少の訓練内容も変わりますし、致し方ないでしょう。
これでも見直している方だとは思いますの、少し言い方は厳しいでしょうけども。
「そうだね、でもレイチェルも含め君たちが訓練後に茶会を開く余裕があるのを知ってるだけに情けないところだよ」
「あら、ご存知ですのね。ですが男女での訓練内容も少々違いますから」
「ハハハ、構わないさ、私達の見解では君たちなら男子の訓練内容でも変わらないさ、まあその前に……」
調子が狂いますわね、先日の時から前世を知っていて、幼少時の印象が強すぎますから……
「「「「「先ずは謝罪をさせて欲しい」」」」」
ってどういう事ですの?