閑話 兄とは
我が妹はもし弟であれば家督を譲りたい程の才媛であり、そして何よりも可愛い。
私とてルビー・スカーレット初代の生まれ変わりと言われたが妹が生まれてそんな事はないと思い知った。そのお陰でより努力する事の大切さを教えられ更なる高みへと上る事が出来そうだ。
ヒルデが3歳の誕生日に強請ったのが護衛と護身術の教官だったのには兄として少々心配にもなったが、日々可愛く成長するヒルデを見ていれば乱暴狼藉や誘拐などの可能性も考慮すれば頼もしい事この上ない。
護衛と侍女を兼任するあの女性をシショーと呼び毎日の訓練をしている妹は可愛らしい。
先日、ヒルデと組み手をしていて負けてしまった。
5歳下の少女に投げ技から関節を極められてしまった。決して油断なんてしていなかった。これならば暴漢などが万が一に現れたとしても遅れはとらないだろう。気を抜けば私を一瞬で倒す程の猛者になった彼女こそ初代ルビー・スカーレットの再来だと思う。
だが兄として尊敬してくれている妹に情けない所など見せる事は出来ない。
ならば如何すれば良いのか。
簡単な事、ヒルデ達を守り通せるだけの力を手に入れれば良いだけの事。幸いにも侍女の里から数名の護衛がやってくるのだとか。
これを機に私も訓練を受けようと思う。
安心するのだヒルデ……
仮に王族が無理な婚約を迫ろうが父と共に突っぱねてくれる。
フフ、泥団子だと!
ククク、面白いじゃないかっ。
優しいヒルデに生かされているのだと感謝するがいい。
二度目は無い事を知らしめてくれる。
最近ヒルデガルド嬢を見守る会という結社も出来た。
発起人が王妃様というのは少々気にかかるが。
まあ、祖父様を初めとして一族が主要なポジションは押さえたからな。
妹は妹の好きになった相手としか結婚などさせん。
妹が結婚……
ヌォォォ、俺が認める奴を連れて来てくれる事を願わねば……
いや大丈夫だ、ヒルデに限って変な男などありえん。
結婚など一生しなくても別に構わないんだぞー!