2-2.新しい学友
昼休みの後に来た人達は掲示板を正面まで動かすと、そのうちの一人が話し始めた。
「これよりここにクラスを掲示します。混雑防止のため、通し番号順に一列に並んでください」
一気に食堂の中がざわめく。しかし、自分勝手な人は少ないらしく並び終わるのは比較的早かった。
「それでは掲示します。自分のクラスを確認したらそのまま該当する教室に向かってください」
指示の後、列が少しずつ進み始める。英莉奈は列の後ろの方だったため結果を見るまでに時間がかかった。列が進むにつれて英莉奈の緊張も高まっていった。
やがて英莉奈は掲示板の前に立つ。成績の良い順にクラスを分けているようだ。自分のクラスを確認すると三組だった。全部で五つクラスがあるようなのでちょうど中間だ。最下位ではなかったので安心しつつ、英莉奈は教室に向かった。
教室で待っていると試験前に来たのとは別の教師が入ってきた。優しそうな女性だ。
「皆さん、初めまして。竜騎士学校へようこそ。三組の担当のジニアル・シンシアです。普段は遊撃隊第一小隊の小隊長を務めています。いきなり試験で驚いたと思いますが、この後は竜騎士認定試験まで試験はないので安心してください。このクラスは成績的には中間ですが、上位クラスと大きな差がある訳ではないので充分実力はあると思います。それでは一週間共に学ぶ仲間を知るために一人ずつ自己紹介をお願いします」
シンシアの言葉の後、自己紹介をしていく。英莉奈は日本から来たことは隠して大雑把なことだけを話した。このクラスには全部で二十人がいて、女子は英莉奈を含めて五人だということがわかった。みんな歳は英莉奈と同じくらいで、日本での中学校に当たる高校を卒業してすぐに来たようだ。日本と違い、卒業式は十二月に行うらしい。
自己紹介が一通り終わるとこれからのことについての説明が始まった。今日を含めて五日間は授業を行い、六日目は午前中が予行演習で午後は試験一日目、最終日は試験二日目という日程だそうだ。入学式はあったが卒業式はないらしい。……竜騎士になるための学校なので当たり前かもしれないが。授業は実践的なことを中心に教養や礼儀を教えるという。具体的には知恵や魔術、戦闘、竜の騎乗方法などの授業を行うそうだ。そこそこ多くのことを話すと説明が終わった。
休憩を挟んだ後、知恵の授業になった。今日は午前中に試験があったので知恵の授業だけらしい。知恵の授業では数学や歴史など多くの教科を一度に扱った。時々休み時間は挟んだものの授業が夕方まで続いたので、終了後はさすがに英莉奈も疲れてしまった。歴史以外は比較的知っていることが多かったのが幸いだった。
授業後は夕食になる。食堂に行くと昼食と同じように料理が並べられていた。毎回自分で用意しなくて良いので至れり尽くせりだな、と英莉奈は思った。
夕食中に寮についての案内があった。基本的に一部屋に四、五人が泊まること、男女は別の部屋になること、各クラス内で部屋を割り振ることなどが伝えられた。英莉奈は同じクラスの四人の女子と泊まることになるのだろう、と思った。
夕食後に教室に集まると、部屋の割り振りが決められた。通し番号順という単純な分け方で、英莉奈は予想通り四人の女子と同じ部屋になった。
その後、寮の準備が終わるまでは自由時間となった。周りを見ると同じ部屋になった人同士で話しているようだが、英莉奈はなかなか話しかけられずにいる。
そうしているうちに、楽しそうに話していた二人の女子が話しかけてきた。
「清水英莉奈さんだよね? 一週間よろしく!」
「えっ、あっ、よろしくお願いします……」
随分と元気な人だ。英莉奈は名前を思い出そうとするが、まだ覚えきれていなかった。
「この人誰って顔してるよ、私はシブリン・マリノ、自己紹介したじゃない!」
「マリノ、いきなり話しかけたら驚くでしょう……。私はシブリン・セレスです。このうるさいのは双子の妹です」
「うるさいのって何よ! ひどいな全く……」
言い争いを始めた二人を見つつ、英莉奈はホッとした。これなら独りぼっちにならずになんとかやっていけそうだ。
マリノとセレスがなかなか口論をやめないので英莉奈が困っていると、また別の人が話しかけてきた。
「あの、清水さん……、クティム・モナです。私も同じ部屋になったのでよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。ごめんなさいまだ名前が覚えられなくて……。みんなすぐ私の名前を覚えられるなんて凄いですね」
「変わった名前だったから覚えやすかったんですよ。名前からして日本の人が親戚にいるんでしょう?」
英莉奈は一瞬どきっとしたが、恭介も似たようなことを言っていたことを思い出し、なんとかごまかす。その後も話していくうちに英莉奈はモナと敬語なしで話すようになった。モナはこの近くに住んでいること、その影響で竜に興味を持ったことなどを知ることができた。
やがて寮の準備が終わったという連絡が来た。英莉奈は荷物を持って寮に向かった。
部屋には既に人が一人いた。誰だか分からなかったが、この部屋で過ごす残りの一人だろう。英莉奈はその人に話しかける。
「同じ部屋になった清水英莉奈です」
「私はパブリ・マース。よろしくね」
マースと話しているとマリノとセレス、遅れてモナもやってきた。全員が揃ったところで部屋の確認をする。
部屋は何故かどう見ても和室だ。意外と広く、五人入ってもまだ余裕がかなりある。部屋に何が備え付けられているのか見ると、布団一式、テーブルなどの家具類はもちろん、風呂とトイレも付いていた。まるで旅館の客室だ。……さすがに掃除はしてくれないと思うが。
他の人も同じようなことを考えていたのか、驚いた顔をしていた。
一通り確認が終わった後はそれぞれの出身などを話し合った。英莉奈は日本から来たことを話そうかと思ったが、オロタガンから来たということにした。
女子で竜騎士を目指すだけあって変わり者だったり、特別な事情があったりする人が多かった。
マリノとセレスの父親は元竜騎士で、小隊長だったという。父親の相棒の竜は竜騎士をやめた今も家にいるらしい。昔から竜と触れ合っていたこともあって二人とも竜が好きなのだそうだ。二人が竜騎士を目指すと聞いた時は大変な仕事だからと猛反発したらしいが、二人の説得に折れたらしい。
夢中になって話していると消灯時間になってしまった。夜更かしもある程度は許されているようだが、初日なのでみんな早めに寝るようだ。
英莉奈も布団を敷いて潜り込む。疲れが溜まっていたのかすぐに眠気が襲ってきた。英莉奈は明日を楽しみにしながら眠りに就いた。
補足。
日本での小一〜小三・小四〜小六・中学校に当たるものが、それぞれこちらでの小学校・中学校・高校です。日本での高校以上に当たるものはありません。
余談。
本文では触れませんが英莉奈の試験結果は次の通り。各百点で三百点満点。
・筆記:七十五点
・魔術:九十点
・戦闘:十五点(うち弓の使用によるハンデ五点)
・合計:百八十点
合計点は平均程度なので三組に編入となっています。




