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1-10.お出掛け

 恭介の家で英莉奈が買ったものの確認をしていると、いつの間にか日が暮れていた。

 それから程なくして、恭介が帰ってきた。

 

「今日はいつもより遅かったですね」

「仕事が長引いちゃったんだ。その代わり明日は仕事がないから、英莉奈の面倒を見てやれるぞ。何かやりたいことはあるか?」

 

 英莉奈は少し考えた後、家を建てたい場所について話した。

 

「なるほどな。確かにあそこは木が多いし、なかなか開発されなかったんだよな。じゃあ、そこを見に行こう。他にはある?」

「あるにはあるんですけど……、ちょっと……」

「遠慮しなくて良いから。俺ができることならだけど」

 

 英莉奈は竜騎士について聞けるなら今が一番だと思い、思い切って話すことにした。

 

「実は、私、竜騎士になりたいなって思ってるんです。それで、本とか弓とかを買ったんですけど、魔術については全く分からなくて。明日教えてくれませんか?」

「竜騎士になりたいのか? 確かに、女性の竜騎士も結構いるし、英莉奈は竜の話が分かるから向いてるとは思うけど、武器は扱えるのか?」

「弓なら大丈夫なので買ってきたんですよ。高校で弓道部でしたから」

 

 恭介は納得したような表情になった。

 

「だから弓にしたのか。竜騎士は普通は遠距離攻撃は竜や魔術に任せて、武器は剣みたいな近距離用のものを使うことが多いから、不思議に思ってたんだよ」

「それじゃあ、剣に変えた方が良いんですか?」

「いや、戦い方は人それぞれだし、英莉奈はそれで良いと思うよ。俺は槍を使ってるし」

 

 英莉奈は恭介の言葉に引っかかるものを感じたので、すぐに聞き返した。

 

「槍を使うってどういうことですか?」

「そうか、まだ言ってなかったか。俺はギルド長だけど、竜騎士でもあるんだ。まあ、竜騎士は非常勤なんだけど」

「そうだったんですか!? それじゃあ、新井さんも仲間の竜がいるってことですか?」

「普段はショウのもとに預けてるけどな。ペレグリンって名前なんだ」

「そうなんですか。……明日ペレグリンに会えますか?」

 

 英莉奈は思わず身を乗り出しながら聞いた。

 

「……やっぱり竜が好きなんだな。明日はショウも休みのはずだし、大丈夫だと思う。ついでにショウにも魔術を教えてもらったらどうだ?」

「良いですね! 是非お願いします」

 

 英莉奈が頼むと、恭介は服のポケットから何かを取り出し、操作をした後、耳元に当てた。

 

「もしもし、ショウか? 明日お前のところに行っても大丈夫? ……英莉奈が俺の竜を見たいんだと。……だから何でお前はそればかり言うんだよ。そういう関係じゃないって何度も言ってるだろ。……それじゃ、また明日」

 

 英莉奈は恭介が使っている道具に目が釘付けになった。一昔前の携帯電話にそっくりだった。

 

「大丈夫だってさ。……どうした?」

「こっちにも携帯ってあったんですね」

「これか。これは伝言の伝に話って書いて『伝話器』って言うんだ。通話機能しかないし、魔力で繋がってるから遠距離は通じないけどな。ある分だけ良いだろう」

 

 恭介はそう言いながら伝話器を英莉奈に見せた。

 よく見ると、小さな画面とボタンがいくつかあるだけだった。

 

「これも俺達の前にここに来た人の努力のお陰だよ。さて、夕飯作るから手伝ってくれよ」

「分かりました」

 

 英莉奈は恭介の後に続いた。

 

 

 夜遅くになって、英莉奈は布団の中で明日のことについて考えていた。明日は竜が見られる上に、魔術まで教えてもらえるのだ。

 英莉奈は明日を楽しみにしながら眠りに就いた。

 

 

 翌日、英莉奈は恭介に起こされた。

 

「朝早くから悪いな。英莉奈が家を建てたい場所を見に行こう。問題なかったらショウの家に行きつつ手続きを済ませるぞ」

 

 英莉奈は朝食を済ませた後、前日に行った場所へ恭介を案内した。

 

「やっぱりここか。丘の上でちょっと不便だから、みんな住みたがらないんだよな。ここならすぐに建ててもらえるはずだ。ここで良いんだな?」

「ここにします。丘の上ってだけで、距離自体はそんなにないですし」

「分かった。それじゃギルドに寄るぞ」

 

 恭介はそう言うと歩き始めたので、英莉奈は付いていった。

 

 

 ギルドで英莉奈は申込書を書かされた。

 家の希望する間取りを書き込む欄があり英莉奈は悩んだが、過ごしやすそうな間取りを思いつき、それを書き込んだ。自分の家の間取りにしてしまうと帰りたくなってしまうと思ったので、敢えて間取りを変えた。

 申込書を書き終えると係に渡し、ギルドを出た。

 

 

 次に着いた場所は駅だった。

 

「なんで駅なんですか? そんなに遠いんですか?」

「歩けば一時間はかかる。列車を使えば十分もかからない。だったら列車の方が良いだろ?」

 

 英莉奈は恭介の言葉に頷き、券売機の前に立った。

 

「二百四十円の切符を買ってな。片道切符で良いから」

 

 英莉奈は言葉に従って切符を買った。

 改札口に行くと、駅員が立っていた。どうやら自動改札機まではないようだ。英莉奈は駅員に切符を切ってもらった後、ホームに向かった。

 

「ここってどんな列車が走ってるんですか? 魔力で走るようなものですか?」

 

 英莉奈は前日から気になっていた列車に乗れることになり、嬉しそうな顔をしながら恭介に聞いた。

 

「そう思うかもしれないけど、ここのはもっと現実的だぞ」

「じゃあ、汽車とかですか?」

「もっと現代的。ここの列車はエンジンで動いてるんだ」

「ディーゼル車なら日本でも見たことがあります。何回か乗ったこともありますよ」

「意外と詳しいんだな。……ほら、来たぞ」

 

 英莉奈が恭介の指差した方向を見ると、見るからに新しそうな列車がやってきた。

 

「おっ、運が良いな。今年完成したばかりの新車だぞ。こいつの設計には俺も参加したんだよな」

「へぇ……」

 

 凄いですね、と英莉奈は続けようとしたが、ふと恭介の方を見ると恭介が自慢気な顔をしていたので、続きを言う気をなくしてしまった。

 列車に乗り込むと、そこそこ人がいた。

 

「結構混んでるんですね……」

「これより速く移動する手段は、今のところ竜に乗るしかないからな。俺が来た時には既にあったから分からないけど、鉄道ができてから移動が随分便利になったらしいぞ」

 

 二人でそんなことを話しながら列車に揺られていた。


完全に余談。

エンジンを動力源とする鉄道車両は気動車といいます。

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