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3/3

「俺達の遅刻登校はこれからだ !」的な


いつも後ろのドアから入ってくる俺は最前列の顔は知らない。

声を聞くのも初めてというわけでは無いのだろうが。

そういえば門の所で俺の名前を呼んだような気がする。

先日のダッシュも俺を追ってきたのではなくて単に始業に間に合わせたのだろう。


セクハラ先生は一瞬絶句したが、

「そうですね。 しっぽは配位結合に使いたいんですよね …… 。 どうでしょう」

とと俺のほうに振ってきた。

とにかくこの教師はやたらと俺に話を振ってくる。

同類と思われてるのだろうがこっちはそれ所では無い。

思わず顔をそむける。

何しろそこの最前列のクールギャルと昼休みに密会なのだ。

親密になるかどうかは不明だが少なくともなんらかの関係が生ずる。

関係?

ここでまた妄想に突入して二限目が終わってしまった。


最前列の三白眼は席で次の時間の教科書を読んでる。

他の女子共はさっそくそれぞれ固まって素っ頓狂(こんな字でok?)な声を上げてゐるというのに。

なぜあんなに勉強熱心でこんな学校に来てるんだろう。

と以前なら思っただろう。

こっちは三限目の準備よりも昼休の準備をしないと。

ぼっちのコミュ障が集まって何をするんだろう。

突然の名刺交換会?

日本人は全員会社の名刺をもっててガキでも名刺交換をすることになってるからな。

しかも全員忍者だ。

こんな話をすればいいのだろうか。

誰が集まるんだろう。

実は一番気になるところだ。

遅刻者は男が多い印象がある。

なんだかんだ言っても女のほうが頑丈に出来てる ・・ と叔母が言ってた。

男児を育てるのは難しい ……

さすがにこの妄想は早いな。

というところで三限目も終わった。

担当の教師(なんだっけ)が出て行くとなんと彼女(三白眼)も後に続いて出て行ってしまった。

ん・・質問かな?

それともあれが生活担当だったのか。

今更ながら自分の学校に関する知識の無さに驚いた。

どうしようかとも思ったが静観することにした。

というか廊下にはもう居ない。

彼女は同年代よりもおっさん世代が良いのだろうか。

怪しげな妄想が俺を襲う(笑)

またボーっとしてるうちに四限目のチャイムとなんか自習らしいという声が聞こえる。

俺は席のまま彼女の方を見る。

そろそろ名前を調べないといかんな。

教室の隅に名前と席順の紙が張ってあるはず。

しかし遠い、遠過ぎる。

職員室に行ったほうが早いな。

俺がいきなり窓際のリア充席のほうに歩いて行ったらどうなるだろうか。

通報されてしまうのだろうか。

その前二三人窓から放り出せないだろうか。


俺はふと思いついて久々後ろの席を振り返った。

こいつはいつも計算してる。

熱心に予習復習をしてるのかと思ったら見慣れない記号が多い。

だが今日は高校レベルの多項式で埋まってる。

「傾いた楕円の方程式」

セリフはそれだけだった。

俺の場合はシャレでコミュ障を名乗ってるがこいつのは本物だな。

「楕円というのはaxの二乗プラスbxの二乗が一定というあれかい?」

「それを任意の角度傾けた場合の式」

「回転の行列を掛ければいいのでは」


「やってみて」

それが奴の最後のセリフだった。


俺は30分かけてノートを数ページ使ってこれが難問であることを確認した。

「ところで ……」

おれは遠慮がちに続けた。

「最前列のそこの女の名前知ってる?」


奴は即答した。

「知らない !」


俺は馬鹿だった。



四限目があと五分で終わる。

段取りを考えないと。

なんか買って持って行ったほうがいいのか。

そうするべきだろう。プリントには書いてなかったがこのしなびた学校がランチを用意してくれるはずがない。

もっとも某F級大学は朝食無料だから受けてみたらどうだと嫌味を言いにきた担任は居るな。

あの女はどうなんだろう。

とにかく終了チャイムが鳴ったら ……

俺は待つ。

うしろのコミュ障と検算をしながら待つ。

そしてついに、俺はチャイムの鳴る5秒前のノイズをキャッチした。


「続きは明日だな」

と言い終わる前に、

「今日中にやるよ」

とコミュ障が断言した。

不気味だ。


ともかく俺は最前列の女を見た。

どう動くか。


そして俺は一生忘れられない衝撃を受けることになった。

なんとあの女はカバンから弁当箱を取り出すと窓際の席に行ってしまった。

いつものことなのだろう。

見る間に昼食グループ分けが形成されて行った。

考えてみれば当たり前の事だった。

あの女は遅刻常習犯ということでもないだろうし。

固まりながら動揺する俺を見てなぜかコミュ障が言った。


「さて図書準備室にでも行きますか。

君もプリントもらっただろう」


そう言えばこいつも朝一は見かけないことが多い。


「あの部屋は大きいホワイトボードがあるからもう一度計算してみよう」


俺はやっとのことで言った。

「ノートでいいだろう」


「いや、気分が違う」


既に研究者気取りなのか。

だがこいつの出席日数で卒業できるのか。

こいつじゃなくて俺達か ……


そして俺達はしっかりした足取りで図書室のほうに向かった。

「反省文書いてさ、 今後の計画書だね。

夜何時に寝てどうのこうのという、小学校でやっただろ」


コミュ障は勝手に自分の予測を述べ立てたが、俺は無視して学校の外まで買出しに出かける。

正門の近辺には店が無い。

飲食店はあるがそれぞれ特定のグループ専用と化してるから今更入る余地が無い。

駅のほうまで行くしかないのか。

俺はとぼとぼと歩いて居ると向こうから今頃登校してくる奴を見つけた。

見覚えのあるやつだ。

とにかく気付かないふりをして通り過ぎないと、と思う間もなくむこうから親しげに声をかけてきた。

その馴れ馴れしさにも覚えがある。

入学早々誰彼かまわず馴れ馴れしくふるまってうザがられた挙句登校拒否になった奴。

今何組なんだろう。

嫌、今何年なのだろうとさすがの俺も少し興味が沸いて一緒に学校まで引き返してしまった。

まあ何もわからなかったが、退学か転校手続きということにしておいてやろう。

自分以下の人材を発見しすこし落ち着いた俺はひやかしで図書準備室に行くことにした。

ご丁寧にコミュ障の数学マニアが出迎えてくれた。

この瞬間この学校のコミュ障ランキングが決定した。

一番がさっきの登校拒否児、二番目が俺だ。

そして間もなく一番になる。


なんであれ一番というのは凄い。

それなりのプライドも必要だろう。

俺は堂々と図書準備室に入りもしも先に来た奴が居たら見下そうと思った。


だが、これが出鼻を挫かれるというやつなのか。

いきなり 「遅いっ」 という一喝を受けて目の前が真っ白になった。


嗚呼三白眼。

弁当食い終わるの速過ぎだろう。

てかオマエも遅刻常習犯だったのか。


俺はおもわず

「すみませんっ」

と謝ってしまった。


挿絵(By みてみん)















私の高1のクラスでは留年二人、登校拒否-->行方不明一人、先輩-->退学 一人でした。

こんなもんでしょうか。



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