僕のクラスメイトは超能力者。
今回はちょっといつもよりシリアスです。
僕のクラスメイトは超能力者です。
朝のホームルームで、僕たちの担任(普通の人・仲間)がこんな話をしました。
「昨日近くで殺人事件が起きたそうだ。みんな、気をつけるんだぞ。」
誰も『キャー』とか、『怖~い』とか、『ヤダー』とか言わない。
僕のクラスメイト達は、こんなことを言います。
「殺されたのは、毛利陸男。35歳。××書店の店員。裏の職は暗殺者。異世界から暗殺依頼を受けるほどのやり手。ふーむ。」
「何!先をこされたわ……。」
「あいつが殺られるとは……。」
とても高校1年生の反応ではないですね。いや、常人の反応ではないですね。
3時間目の国語で、『命の重み』が題材の現代文についてやった。
国語の専門教師は熱く語った。
「命に価値をつけてはいけません。みな等しい命なのです。」
そんなよくある名言を僕以外の人は聞いていなかった。
ある人はスキル調整している。またある人はノートパソコンで、なにやら難しい顔をしてキーボードを打っている。ある人は目を閉じて瞑想している。ある人は人二人分くらいある大剣を、布切れで拭いている。
でも先生は何も言いません。いいえ。何も言うことができません。
「佐々木君もそう思うだろう?」
いきなりふられても困るんだが。
「はい。そうですね。」
これが一番無難な答えだろう。
放課後、僕は図書室へ向かう。
クラスメイトの語堂君に呼び出されているからだ。
なんでも、超能力者である語堂君の入っている組織の上司に、僕を入れて任務を果たせとの事だそうだ。
いつも思う。なぜ僕なんだ?なぜ僕は巻き込まれるんだ?
普通でありたいのに!
まあ文句言っていても仕方ないので、とりあえず早く用件を済ませてしまおう。
僕の学校の図書室は、とっても広い。広さでたとえるなら、バスケットコート5つ分だ。
莫大な情報が詰まったここは、よく一般の人も立ち入ったりするし、お偉いさんも利用したりするほどだ。市立図書館より客が来る。図書室というより図書館だな。
図書室に入る。
語堂君の姿が見えたので、声をかける。
「語堂君。」
「佐々木、遅かったな。」
「ごめんごめん。」
語堂君は黒いジャケットを着ている。任務の際はたぶんこれを着てやることになっているんだろうな。
「早速だが、今日の任務について説明させてもらう。」
語堂君は男としてはちょっと長い髪の毛をくるくるいじって言う。
「今回の任務は、昨夜殺害された毛利陸男についてだ。」
「毛利陸男!」
素直に驚いた。
朝の話題を思いだす。
裏の職は暗殺者。異世界から暗殺依頼を受けるほどのやり手。
「毛利陸男だが、うちの組織から殺害犯の入っている組織に派遣したスパイだ。」
「詳細はわからんが、スパイであることがばれたらしい。」
で、殺されたと。
「それで目的だが・・。」
語堂君は、とても真剣な表情で言う。
「毛利陸男を殺害した、戦場ヶ原元成の暗殺だ。」
!
「なんで僕がその任務に!」
暗殺のプロを殺す暗殺者だぞ。
「上は詳しいことは何も話さなかった。今回はまず、見ていれば良いだろう。」
…………。
どうしてこうなる?
「まずこれを着ろ!」
渡されたのは、語堂君が着ている黒いジャケットと同じもだった。」
「上級暗殺者だけが着ることを許されるものなんだが、お前は例外だそうだ。」
「…………。」
「一応これも渡しておく。」
ナイフ?
「護身用だ。」
小型のナイフのため、僕でも十分振り切れるものだ。
「あと、俺たちは、一般的に言う超能力を使える。俺たち組織はこの力を『パーフェクトスキル』と呼んでいる。」
「パーフェクトスキル?」
「ああ。たとえば。」
語堂君の目が赤い光を放つ。
「うわっ!」
瞬間、語堂君の周りに暴風が起こる。
机の上にあった本などはすべて吹き飛ばされた。
「すごい。」
浮いている。
「空中で自由自在に体を動かすことができる。」
そう言って一回転する語堂君。
「まあまだほかにもあるんだが、今は時間がないからここまでだ。」
着陸する語堂君。
「今のような『パーフェクトスキル』で、俺たちは暗殺を行っている。まあ暗殺だけが仕事じゃないがな。」
…………。
「それで、詳しい内容は?」
「それは作戦遂行地点に向かいながら話させてもらう。では行こうか。」
その後、語堂君の『パーフェクトスキル』『ワープ』で作戦遂行地点に向かう。
ワープと言っても、すぐにたどり着くわけではなく、2、30分かかるそうだ。
ワープの途中に任務の詳細を聞いた。
<データ>
戦場ヶ原元成 性別男 年齢不明 パーフェクトスキル持
戦歴 暗殺任務783中すべてクリア
ナイフの使いに長けている。スピード型。
夜12時、戦場ヶ原の自宅にて任務開始
戦場ヶ原の自宅は近くは、住宅が少ない。
接近は危険。
<作戦>
戦場ヶ原の自宅全体に、相手のみ行動を抑制させる結界を張る。
行動の抑制はさせたが、やはり接近は危険なため、『パーフェクトスキル』『ブラットエンド』(血液を凝固させる)を使う。『ブラットエンド』の効果が適応される範囲は、3メートル以内。そのため、ぎりぎりまで近づく必要がある。結界を張ると存在が気づかれるので、すぐに事を済ませる必要がある。
結界を張ってから『ブラットエンド』発動までの間
およそ『5分』で済ませなくてはならない。
作戦遂行地点周辺の戦場ヶ原の自宅が見える高台に着いた。
時刻は午後7時半。
「作戦内容はいいか?」
「はい。」
「まあお前はこっから見てればいいだけだからよ。」
見てるだけ、ね。
「それじゃあ俺は11時半まで瞑想するから。」
「瞑想?」
「ああ、『ブラッドエンド』は消費するエネルギーが半端じゃないからな。エネルギーをためなくちゃならん。」
「そっか。」
「だからお前はゆっくり寝てろ。」
「うん……。」
語堂君は、立ったまま瞑想を始めた。
んじゃあ寝るとするか。
…………。
『ゴ・ド・ウ・ガ・ア・ブ・ナ・イ』
「うわあっ!」
なんだ。語堂があぶない?
「どうした佐々木?」
なんだ大丈夫じゃないか。
「あれ、瞑想終わったのか?」
「おう、そろそろ時間だからな。」
時刻は午後11時45分
「準備手伝ってくれ。」
「あ、はい。」
それよりもさっきの夢、なんだったんだろう?
…………。大丈夫だろうか?
僕は護身用のナイフの柄を強く握り締めた。
僕のクラスメイトは暗殺者です。
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