僕は能力者。
「まさか……佐々木君?!」
「ハハッ、そうさ僕さ。」
おかしいと思ったんよ。病院にただ一人斉藤くんだけがいなかった。僕は普通に帰ってしまったかと思っていたけれど……『ゼロ』にいるんだからXと何かしら打ち合わせしていたと思われるね。
「何故…」
「斉藤君!」
僕は強い口調で言う。
『知っている事を全て話してもらおうか。まずそうだな、『ゼロ』の総督であるもう一人の僕とこの僕は同一人物であり、別モノだということは知っていたのかな?』
「……知っていたさ。」
「君がこの組織に入ったのはいつだ?」
「中学3年の冬。」
「この組織はいつからある?」
「わからない。」
「なるほど君は僕がターゲットである事を知りながら僕に接触してきたわけだね。」
「……ああ。」
ふむ。まだ確信付ける要素がないな…。ならば、
「あれをやったのは斉藤君、君だね。」
「あれとは…」
「君はモグラのさっちゃんにAK47をプレゼントしようと買ったよね。」
「! まさか!」
「そう、僕はあの小屋に行ったんだよ。」
斉藤君はさらに驚く。
「おそらく理由はこうだろう、僕の母さんを生き返らせないため。そうだろ? だからあの二人の蘇生師夫婦をAK47で殺した。そうだろ?」
斉藤君は黙る。
「フッ、物的証拠を置いていくなんてとんだ馬鹿だよね。」
僕は嘲笑うようにして彼を見る。
「あれはあのあと、爆破処理されるているはずじゃ……」
「確実性がないな。僕だったら最初から爆破で事を済ませるけれどね。」
そろそろ僕が一番知りたいことを聞こうか。
「この組織の目的はなんだい?」
…………。
「我々は政府の最重要国家機密である、A高校のあのマシンを狙っている。」
「あのマシンとは?」
「概念創生装置。イメージしたものを具現化できるスーパーコンピュータだ。」
「それは最重要国家機密にもなるな。立派な兵器だ。国外どころか、国にもそれを伏せるというのは頷ける。」
フフ
「なるほど、だからあのクラスに超人達が集められたわけだな。」
「ああ、そしてB高校はその予備のようなものだ。」
ということはまだ装置は未完成ということか。
それを奪い、『ゼロ』によって仕上げ、行使する。
僕が邪魔な存在であったのも納得だ。
「ハハッ、面白いものがA高校にあるではないか!」
クク、いいだろう。それさえも存分に利用してやろう。
「! 俺は何故このことを喋ってしまったんだ?!」
「フハハハハハ! この能力は面白いな!」
「その眼、ただの眼じゃ…」
やはりこの能力の事は知らなかったか。
「記憶の操作をしなければな。」
「なっ!」
鈍い銀色に光る紋章を帯びた右眼が、あたりを照らす。
…………。
これで二回能力を使ったな。
「あれ? 俺は一体何を…?」
フフフ、これはもう一人の僕、『レフト』との勝負だ。
僕に与えられた駒はこの組織『ゼロ』、『能力』。それは『レフト』も一緒だ。
一回2手の制限がある。相手の制限は未知数。
それでも僕は勝ってやろうじゃあないか!
『レフト』にも! この世界にも!!
そこで僕の意識は切れた。
智和、堕ちる――