僕は総督。
この組織『ゼロ』をうまく使えば、僕の知りたいことを知れるかもしれない。
そうだ…僕は何も知らない。
…………
「杉崎! お前はどうしたい? この現状に満足か?」
「私は…不満であります…。私は、一刻も早く邪魔者である『佐々木智和』を消したいです。」
「そうか。」
ふむ。なるほど。
「では今まで通りではダメだな。対象はもう一人の私である『佐々木智和』。それは変わりはない。だが、敵をもっと知る。これがなにより大切だと私は思う。杉崎! 対象の現在位置は?」
「それが…PM2地点で突然…」
「…対象の居場所も知らないようでは話ならないな。それでは明日組織を動かそう。私が明日までに計画を練る。杉崎、『ゼロ』のメンバー全員のリストを。」
「はい。」
「それではここまでだ。」
さっきの部屋に戻り、ひとりで考える。
なかなかうまくまとめたのではないかな。
これで少しは分かってきた。
しかしまだ組織の大きな目的がつかめない。
そして僕のこれまでのことについてもしっかり調べなくては…
「フフフ、アハハハハハハッ!」
利用できるものはなんでも使おう! 例えゴミでも、うまく使えば道具だ。
『ゼロ』を手に入れたのはデカイな。あるとないとでは大違い。
僕は手元のタブレットに手を伸ばす。
この中にメンバーリストが…
僕は目を通す。
・・・・・・・・。
この男!
「よく来てくれたな。『小野寺藤五郎』」
まさかおまえが『ゼロ』にいたとはな…
小野寺藤五郎。以前情報をこの男から貰った。天才情報屋である。
「小野寺藤五郎! お前は全て知っているのだな?」
「ええ。なんでも知っていまっせ。その眼の能力のことも、あんさんがもう一人の『佐々木智和』であることも。」
「ッ!」
驚いた。
「何故お前…」
「わかるんだよ。自分にゃあね、君のその眼のような能力があるんさあ。」
「それはどういう?」
「対象の事実が頭の中に文章として入ってくるんだよ。概念的にではなく、明確に…」
…………。
「ただしその事実は規則的に、ちゃんと整理されて入ってくるわけじゃあない。事実として成り立った順番に来るのではなく、一斉に事実が頭に入る。」
真剣なのかそうじゃないのかよくわからない表情で続ける。
「だから自分で予測や推察など、しっかり考察して事実を整理しなければならない。そこがこの能力のデメリット。」
こいつ相当頭が良いんだな。
これはかなり使える。
「ならば教えてほしい。僕に今何が起きているんだ?」
「そうだね…よし教えよう。」
僕に教えなくても、僕の眼の能力で知られることはわかっているんだろう。
「あんさんはもう一人の『佐々木智和』と一つになったんやよ。」
!
僕とあいつが……一つ?
「そしてこれは、事実を元にして推察したことさんだけれど…おそらくあんさんのその能力を2回使うともう一人と入れ替わるみたいや。」
能力を2回?
「僕のこの能力について詳しく教えてくれ。」
小野寺は口を一文字に結び、困った顔で、
「それは無理なんよ。これは自分がこの『ゼロ』に入って間もない頃の話や。この力が体に宿ったときのことや…自分はこの『ゼロ』を自分の物にしようといろいろと手を回した。そしてもう一人のあんさんを対象として能力を使った。けれど何も事実が頭に入ってこなかったんや。発動した瞬間にもう一人のあんさんの眼にあの紋章が浮かび上がったんや。おそらく自動で発動したんやろな。…だからあんさんの能力のことについては何もわからへんのや。」
「ということは僕を対象にしても同じってことかい?」
「おそらく、や。」
…………。
そうか。
しかし、こいつの存在もまたでかいな。
幹部ではないというのは小野寺自身が何か手を回したんだろう。
ならば僕がうまく使ってやろう。
「小野寺藤五郎。お前は幹部に昇格してもらう。」
「そいつはどうも。」
シニカルスマイル。ちょっといらつく態度だ。
「分かっているな。僕が二回あの力を使ったら…」
「わあってますって。お任せお任せ~♪」
「聞き忘れていたが、能力を2回使うと入替るというのは向こうも同じなのか?」
「2回とは限らないかもしれへんなあ。」
「…………。」
僕はメンバーリストを見て、驚いた人間が二人もいた。
一人は小野寺藤五郎。
もうひとりは目の前の部屋の中にいるらしいね。
僕はノックをする。
コンコン。
「入れてもらっていいかな?」
「智和様ですか?」
「うん。」
扉がスライドして開く。
「どうされましたか智k…」
「まさか君がこの組織と関係していたなんてね…」
驚いたよ……『斉藤君』
僕の右眼には紋章。
斉藤明徳(『僕のクラスメイトはハーレム王。』参照)
小野寺藤五郎(『天才情報屋? 大歓迎!』参照)