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暖簾に腕押しという言葉を思い出します。
目を開けてふわふわと周囲を見まわした聖女は、まさに美少女でした。
「ここは?」
よし、早いところ帰って貰うために脅しましょう。
「ひっひっひ。ここはアタシの家だよ。あんたは魔女に捕まったんだ」
行商人に大変悪い意味で評判の笑みを浮かべます。可憐な少女なら一溜りもなく、ぷるぷる怯えて泣きだすでしょう、と思ったのですが…。
「はあ」
はあって。反応が薄い。
出来る事なら、私は2人が聖女と王子であるということ気付いていない事にしたく、にやにや笑いながらも言いました。
「お友達はそこにいるよ。今夜の飯のオカズにしようかねえ」
「あ、殿下」
即効で失敗しました。