鏡が映したのは、知りたくもない真実でした。
思い切り叫びたい気分です。
嘘でしょう。これは嘘です。絶対、嘘!!
鏡に映っていた色々から目を背けて首を振ります。
そうして向かい合ってしまった聖女は、それなりに長さがあった髪をバッサリと落として、爽やかに言うのです。
「結構、男前でしょ?」
そして浮かべる笑みは何か泥臭い! 全然女の子じゃない!
「ち、ち、近寄らないで!!」
思わず立ち上がるとガタンと音を立てて椅子が倒れました。
その椅子を、元の位置にもどす余裕が聖女にあるのが何かくやしい。
「遅ばせながら、自己紹介を。
名前は五十嵐光貴。大学二回生で、年齢は20。そして性別は男!」
ふと気付くと壁へと追い詰められています。
ちょ、ま、なんか手慣れていませんか!?
「最初は王子の呪いが解けるまで黙っていようと思っていました。
でも、同性だと思っているから優しくしてくれているんだって分かってたから、申し訳ないけど黙っていました」
あ、しかも何故か手を握られています!
両手を包み込むように…っていうか、なんか手、大きいですね!
なんで今まで気づかなかったんですかね。
聖女、手、男の子だよ! って離しなさい!
「でも、一目惚れなんです! 結婚を前提にお付き合いして頂けませんか!?」
「って、あんた100歳越えの老婆に何言ってんだ! 年上好きにも程があるでしょ!?」
ハッと正気を取り戻して慌てて逃げ出しました。
危ない。若い子の勢いに飲まれる所でした。
ひんやりとした何かに触れながら、ぜーぜーと息をつきます。
本当に、ご老体に、なんて無茶をさせるんだ…!!
「その鏡」
聖女の言葉で、自分が触れているものが鏡だと気づきました。
悲鳴を上げて後ずさりますが、もう、遅い。
鏡に映るのは、長い黒髪を靡かせて怯える、長い手足のやたらに白い垂れ目の女。
「宿した魔法は『神眼』といいます。俺も同じ魔法を持っています。
俺の目には、ずっと、本当の事が映っていました。
鷹司詩織さん! 俺と結婚して下さい!」
あんまりに、あんまりで。今更な暴露に、池の鯉のように口をパクパクさせるしかありません。
こんな超展開、誰も期待していませんからー!!!




