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聖女による昔語り③

【聖女:ヘンゼルによる魔女に出会うまでの回想】





 何故かアルアリアに気に入られたらしい。

 特に好かれるような何かをした記憶はないのだが、都合が良いので幸運だと思うことにする。


 そうして今も、王宮の中庭を一緒に散歩している所だ。

 傍目には理想的な美男美女に見えるのか、こちらを窺う視線達は概ね好意的なものばかり。アルアリアが王子としてとても期待されていることは、雰囲気と異世界特殊能力で既に知っている。ほとんどの者から好かれていて、それの隣に見目良い少女が並ぶのはすばらしいと、祝福されていた。

 時折ぞっとするような殺気を向けられているのは、王子を慕う乙女の誰かのものだろう。


 本当は女なのになあ。

 アルアリアの横顔は、繊細なのに女々しくはなく、いかにも乙女が憧れそうな王子様らしい顔だった。ただ、その陰に重なって見える本当の顔は、誰もが想像するような王女様らしい可憐さ。

 どちらにしろ完璧なのに、何をどうしてこんな因縁を背負っているのやら。


「アル様は博識ですね。私もこの国について勉強したいです」

「分かりました。私の部屋に教本がありますから、いらして頂けますか」


 自然に差し出された手にエスコートされて導かれる。

 これ、無垢な日本の高校生とかが召喚されたんだとしたら一発で落ちるんだろうな、と考えると偶然がなんだかおかしい。

 落ちてしまったらアルアリアは困るだろう。

 彼女は、元の世界でいえば性同一性障害なのだ。そんな知識もないから不安なまま、女性と結婚するのは苦しいだろう。まあ、同性が好きだというなら別だけれども。


 部屋に入り、アルアリアは本棚を物色し始める。

 気を使ったのか、部屋の中には誰も居ない。

 これはチャンスだ。


「アル様。本当に私と結婚するつもりですか?」


 問いかけると、振り返る。そのゆっくりとした動作にすら、頭の先から足の爪先まで洗練されて意識が通っている。


「コウキ様はどう思われますか?」


 あ、逃げたな。

 鉄壁の頬笑みを顔に乗せながらも、異世界特殊能力で見ると


 状態:焦り


 と出るから丸分かりだ。


「私はアル様は素敵な方だと思っています」

「それは私もです。コウキ様は私には勿体ないほど素晴らしい方です」

「へえ?」


 わざと意識して笑い方を変えると、ビクリと肩が揺れる。


 状態:不安


 勘がいいな。こういう反応は女の子らしくて可愛らしい、と思う。

 そのまま手を伸ばして、金色の髪をひと房掴む。



「本当に良いんですか? 私で?


 ―――――あなたは女の子なのに?」



 状態:混乱(不安、疑心、驚愕、期待)



 王子様じゃないけど、助けてあげるよ、お姫様。

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