お届けものはチート鏡にお任せ!
隊長が再び気絶して、部屋の中が静かになると、聖女はチート鏡に近寄ってカバーを外しました。
コン、と鏡面をノックすると、どこかの部屋が映し出されます。
「ここは近衛騎士の詰所なんです」
そして、ずるずると隊長を引きずって、鏡の向こうに蹴り出しました。
隊長の体は鏡面をするりと抜けて、向こうの部屋にどさりと落ちます。
チート鏡、すごい…。
さすが、チート鏡の名に恥じない万能さです。
奇妙な格好で床に投げ出された隊長を見て満足そうに頷くと、聖女は纏めた騎士たちに向かって腕を振り上げます。
騎士たちは団子状になったままふわりと宙に浮き、そのままふわふわと、鏡面の向こうに吸い込まれていきました。
「はい、おしまい」
どさどさっ、と重い物が落ちる音が聞こえた気がしましたが、その時には鏡面はただの鏡に戻っていたので、幻聴かもしれません。
一仕事終えた、と汚れてもいない手をパンパンと払っている聖女には、「隊長蹴る意味無かったんじゃ…」と伝える事はできませんでした。
聖女と、あと息子は怒らせないようにしよう。口喧嘩に自信のない私は、ひとつの決意を胸に刻みました。




