聖女による闇魔法講座 中級編
庭の終わり、山の木々に体を隠し、額に何かがびっしりと書き込まれた札を貼った男がいました。
この状況から察するに、身を隠す魔法の掛った札なのでしょう。
男は自分が注目されていることに気付くと、躊躇なくこちらに向かってきました。手には武器の煌きがあります。
この迷いのなさは、相当な訓練を積んだその道のプロなのでしょう。
2人を庇うために前に出ようとしますが、聖女に止められました。
「大丈夫です」
そして息子に囁きます。
「さあ、あの男の頭を見て思った事を魔力を込めて大声で叫んで?」
男を見て思った事?
全身黒い服。素早い動き。手に何かの武器。
顔は―――札がはらりと落ちて、…あ。
「てっぺんだけ剥げてる!!」
息子が全力で叫んだ途端、ガァァァン、と雷にでも撃たれたかのように襲撃者は動きを止めて、その場に崩れ落ちて泣きだしました。
しくしく、しくしくと。俺は禿げじゃない…と呟いています。
ああ…なるほど。
闇魔法は精神の闇にも効く、と。
「どうですか? 強いでしょう、闇魔法」
聖女が嬉しそうに可憐に微笑みますが、怖いですよ、闇魔法。と、土属性の私は慄かずにはいられません。
口喧嘩最強、なんですね。




