大団円の前に説明を求めます。
「………え?」
呟きは誰のものだったのでしょう。
カラスの濡れ羽根のように艶やかな黒髪、黒目の姿になった息子か。
その胸にすがりついている、大きな目を零れそうなほど見開いたグレーテルか。
私の隣で、硬直して事態を見つめる聖女か。
一番早く立ち直り、かつ、状況を理解したのはグレーテルでした。
良かった!!と叫んで、力いっぱい息子に抱きつき、えぐえぐと今度は喜びのあまりに泣きだしてしまいました。
息子とグレーテルの身長差は、今は逆転してグレーテルの方が少し高いようです。
だがら、上から覆うように抱きつかれた息子は全くどうしたら良いのか分からないようで、大量のハテナを飛ばしながら困惑しきった様子でこちらに助けを求める視線を送ってきました。
私を頼ってきたら助ける、と決めていたので、口の動きだけで
「ぎゅっと抱き寄せて!」
と音にせずに伝えると、混乱中の息子は素直に指示に従いました。
蜂蜜を溶かした夢の様な美少女と、磨きぬいた夜空のような美少年が泣きながら抱きしめ合う光景は、どこかの絵画から切り出したきたような神聖さでした。
ああ、これぞ大団円というものですね。
うんうん、と頷いて満足していると、ちょいちょいと袖を引かれてそちらを見ます。
「説明をください」
不満でいっぱいの顔をした、聖女からの要求でした。