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トラウマと成長期

 王子に掛けられていたのは性別逆転の呪いでした。


 何がどうして、高貴な身の上の彼…彼女? がそんな目にあわされてしまったのかは分かりませんが、それは強制的にホルモンを弄って体の形を変える邪法です。


 肉体的にも精神的にも、痛くて辛い思いをしたことでしょう。


 呪いが解けたばかりの今は不安定なので、なるべく温かく安静にさせてあげたいのですが…。




「………。」


 息子が王子…王女? から一番離れた壁の隅っこでぷるぷると震えて怯えています。


 初めて親しくなった同年代の友達の姿が変わってしまったから混乱しているのでしょうか。




 何にせよ、王…いえ、グレーテルは、睫毛を伏せて目元に影を作りながら、そんな息子を寂しそうに眺めています。


 さすがにかわいそうです。


 聖女は、女性になったグレーテルに一言「よかったね」と微笑みかけてあとは何も言いません。偽名の名乗りを考えると、最初からグレーテルの呪いについて知っていたのでしょう。


 グレーテルも「ありがとうございます」と笑って、その笑みは嬉しそうだったのですが、すぐに息子に目を移して曇らせるのです。




「どうしてグレーテルと話さないの? 外見が変わったら仲良くできない?」


 顔を近づけてこっそりと問いかけます。


 息子は小さく首を振ります。


「違うよ」


「じゃあ、どうして?」


「だって…。あんなに綺麗で…ふわふわしてて…」




「僕が近づいたら、壊れちゃいそうなんだもん…」


 頭を抱えて、それがどれだけ恐ろしいか、息子は全身で伝えてきました。




 息子は、小さい時に動物の子供を触ろうとして、力加減を間違えて傷つけてしまったことがあります。


 怪我は傷薬ですぐに治りました。しかし動物の子供は全力で駆けて逃げて行きました。


 息子はそれ以来、かよわいものには近づかなくなりました。




 でもね。


 グレーテルは、本当にそんなに弱く見える?


 私は手を伸ばして、息子の頭をぽんぽんと撫でました。成長の時かもしれません。


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