ドコでも取りよせ致します。
贈り物と言われた水晶のペンタントが、私の胸元で揺れています。
何故でしょう。ふわふわした気持ちで手を引かれているうちに、気が付いたら魔法具店にいました。
私の水晶玉は、ガラス質の土に土魔法を何年も掛けて、遠見や透視…魔法名でいうと『真眼』の能力を付加したものを、球体に研磨したものでした。だから水晶というよりも、魔力の塊とでも言うべきものだったのです。
別に水晶でも虫めがねでも何でもいいのです。聖女の全属性チートならばそう時間をかけずに同じ能力の物が作れるでしょう。
というような事を聖女に伝えたところ、聖女が選んだのは全身を映せるほどの大きな鏡でした。
「これが私の一押しです」
そうして買ってきた鏡を、家に帰って暖炉の部屋に設置しました。聖女が手をかざすと周囲の空気がふわりと動きます。
「はい、完成です」
「早っ」
息子が興味深々で寄ってきて、鏡を覗き込みます。
「これはこう使うんですよ」
聖女が鏡に触れると、りんごの入った籠が映りました。
「街の八百屋さんですよ。これを、よっ…と」
そして、なんと鏡の中に手を突っ込んで、籠を引きぬいてしまいました。
「何でも映せて、持ってこれて、送れる鏡です。『どこでも鏡』と『取りよせ鏡』と、どちらの呼び方のが良いですか?」
一口りんごを食べて、聖女は得意げに笑います。
私は取りあえず、鏡の向こうの八百屋さんにお金をそっと置きました。




