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王子のお願い。
私が暖炉を掃除している時のこと。
「魔女さん」
王子が珍しく話しかけてきました。丁度手が離せない所だったので、声だけで答えます。
「なんだい?」
「コウ…ヘンゼルについてなのですが、魔力を解放して頂けないでしょうか」
おや、と思いました。結構ワガママを言う聖女に比べ、この王子が希望を口にするのは初めてのことでした。私は手を止めて王子と向きあいます。
「なぜ?」
王子は思いつめた真剣な顔をしていました。
「ヘンゼルは、とても凄い魔術師です。何でも魔法で出来てしまうのです。だから、今の状態は本当にかわいそうで…」
静かに目を伏せる王子。
そんな王子に私は答える言葉も無く、ただ、
……ドジっ子じゃなかったんですね。
意外な事実にびっくりしていました。




