異世界での家事事情
電気も通っていない異世界の山奥での生活は、土魔法チートをもってしても結構大変なんです。
衣・食・住と見てみても、土魔法でカバー出来るのは『住』の家作りと『食』の畑・料理器具・食器の作成までです。
『衣』の衣服は行商人から買います。『食』の肉系統の食材は息子が外から狩ってきます。
湯を沸かす為の薪集め・薪割りは毎日必須の仕事ですし、保存食としての燻製作りも欠かせません。土魔法で栄養を多めに配合している分雑草が伸びやすいので、畑の草むしりも日課です。
何より、料理は獣の解体から入りますので、とんでもなく時間がかかります。
そこで、聖女にも「働かざる者食うべからず。グレーテルの分までこき使ってやろうじゃないか」と手伝ってもらう事にしました。
手伝って貰っている…はず、なのですが。
「危ない!!」 と薪割りの斧が振り上げた途端に手をすっぽ抜けて飛んでいきます。
「手が滑った」 と皿洗いの皿が落ちて割れます。
「見分けがつきません」 と雑草と間違えて野菜の若葉を引っこ抜きます。
「意外と硬い」 と獣の解体中に力加減を間違えて自分の腕を盛大に切ります。
まあ、斧は背後にいなければ危険は無いですし、皿も野菜も代わりを作れば良いだけです。怪我は傷薬を付ければ数日で治ります。
ただ、もしかして聖女はドジッ子というやつなのでしょうか?
「役立たず…」と家の隅でズーンと暗くなっている聖女を、息子と王子が慰めていました。