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正しくはヘンゼル(兄)とグレーテル(妹)ですよ。
聖女はまじまじと牢屋の中の王子を見て、ふんわりと花の様な笑顔を浮かべました。
「殿下を助けて下さったんですね。ありがとうございます」
ちゃんと見えてる?
王子は牢屋の中で…ああ、クッションに抱きついてとても気持ちよさそうに寝ているね。和む景色です。
ですが私は負けません。
「あんた耳はついてるのかい? アタシは、夕食に喰うって言ってんだよ」
聖女はしばらく悩んだ後、
「夕食は私が作ります。それで如何ですか?」
小首を傾げて提案してきました。
この子疲れます。これが、ジェネレーションギャップというやつなのでしょうか。
私は聖女を怯えさせることを諦めて、もうそれで良いと頷きました。
「やった! これからよろしくお願いしますね。私はヘンゼル、彼はグレーテルと呼んでください。
貴女のことは何とお呼びすれば良いですか?」
私は、「魔女」と答えながら、偽名にしてもひどいなあ、と苦笑いしました。




