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ゴールデンウィークが明けたばかりの五月上旬。異常気象なのか、何なのか知らないけれど、気温は夏の並だ。
ふと窓の外を見た。見えるのは隣りの校舎だけ。他は何も見えない。反対側の窓からも校舎しか見えていない。
前を見れば、一生懸命になって現代社会を教える教師がいる。周りには必死にノートきに書き写している生徒達がいる。でも、中には居眠りをしたり、携帯をいじってる人もいる。 この高校に入学して、まだ一ヶ月弱しか経っていない。けれど、もう、生活がパターン化してきている。
正直、高校生活に飽きがきた。
街中にある学校だったから期待してたんだ。何か変わったことが起きるんじゃないかって。
これじゃあ、ド田舎にあたった中学校のほうが断然楽しかった。
教室の窓からは空と田んぼが見えていた。田舎特有の景色かもしれない。けれど、それでも日々変化するその景色は見ていて飽きることがなかった。
先生達もこんなに熱を入れなかった。気ままに授業を進めていっていた。そして、時々だけ、やたらとテンションが高くなったりした。受験が近づいてきても、それは変わらなかった。
生徒も生徒で、真面目なのかなんなのか。全くわからないような奴等ばっかりだった。
田舎の公立中学校だったからそんな調子だったのかもしれないけれど。
二ヶ月近く前に卒業したばかりなのに、ひどく懐かしく感じる。
「じゃ、今日はこれで終わりだ」
気づけば教師は教科書を片付け始めていた。
「起立!!」
隣りの席の学級委員長が大きな声で言う。それに合わせて、みんなが一斉に立つ。
「礼!!」
この一声の後はみんなバラバラだ。座る人や、そのまま友達のところへ行く人、次の教科の教材を取りに行く人。
あたしは座った。
机の上に広がるノートを見ると、見事白紙。後で誰かに写させてもらわないとな。
「ちいちゃん、ちいちゃん」
「はいはい」
遠く離れた席からわざわざ成美が来た。
「一昨日会った、ちいちゃんと同じ中学校だった人、名前なんだった?」
そう言いながら成美はジャケットの内ポケットから携帯を出した。
「あー、柳のこと?」
成美は、そうそう!と携帯に何かを打ち始めた。
柳とはあたしの中学校の時からの友達の柳紗恵子のことだ。高校は残念ながら柳のほうがあたしよりはるかに頭が良いのでバラバラだ。
その柳と全く接点がなさそうな成美は一昨日、ファミレスで遭遇した。