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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった

作者: あゆま3
掲載日:2026/05/29

春の遠足でした、しりとりを思い出して書きました。

よろしくお願いいたします。

高校に入学して2回目の春。

学年全員が第一グラウンドに集合していた。

学年主任が拡声器を持って、なにかを叫んでいる。


「あちー」

「ほんと。歩き遠足とか地獄だろ。」

「なー」


俺、中野悠希なかのゆうきは、前に並ぶクラスメイト栗栖凛くりすりんと言葉を交わしていた。

春なのに、夏のような日差しが皮膚を刺す。

今日は遠足で、隣町の神社に行く予定になっていた。

その神社は山の頂上にあって、石段が1,000段?くらいある。

思わず視線を下げた。


「今日の部活アップなしかな?」

「だったらいいな。」

「去年どうだったけ?」

「覚えてるはずないだろ。」

「なー」


凛とは同じバレー部でよくつるんでいた。

と、いうのも俺ら以外の同期がアスリートコースだったからだ。

クラスでも同じ部活ということで、常に一緒だった。


「おい、見ろよ! アスリート走ってるぞ!」

「あー担任、山田先生だからな。」

「アスリートじゃなくてよかった……」

「なー」


山田先生が高笑いしながら走り出し、『ついてこい!』と叫んでいた。

副担任の若い白石先生が、最後尾について一緒に走っていた。

俺は両手を振って同期を見送ったが、睨まれた。


「うわっ、こわっ!」

「お前、後でやられるぞ!」

「やべっ!」


急いで、手を下げた。

アスリートコースの出発の後、しばらくして担任が歩き始めた。

進学クラスの俺らは、歩きだった。

神社の麓に着くまで2時間くらいはかかる。

思わず、ため息がでた。


しばらく歩いて、麓についた。

ここからは30分くらいで頂上まで着く。

石段を睨みつけた。


「なー悠希。」

「なに?」

「なんかしゃべって。」

「体力温存。」


周りは結構大声で馬鹿笑いしたり、うるさいくらいだった。

せっかくの遠足。

楽しくしたい気持ちも分かるが、部活のことを考えると、少しでも休みたかった。


「えーかまってよ!」

「うざっ」

「ひどいな。」


凛が白い歯を見せて笑った。

背も同じくらいで、もともと同じポジションだった。

けど、こいつには敵わないと早々に気づいてポジション変えした。

器用なうえに、バネのような筋肉をしていた。

ありえないくらい跳ぶし、ボールが走る。

一見、細身で心配になるが、脱ぐとバッキバキだったりもする。

俺は逆で、なんでもパワーで押してしまう。

筋肉の付きやすいタイプだった。


「なー面白いことしようよ!」

「だから、うざいって!」


少し先を歩いている女子グループが異常な盛り上がりをしていた。

頬を染めて、大笑いしていた。

凛がそのグループを指さした。


「悠希、アレやろう?」

「あいつらなにしてんの?」

「胸キュンしりとり。」

「は?」


凛の顔をまじまじと見た。

口元は笑っているのに、瞳は揺れていなかった。


「……まじ?」

「遠足は、楽しくだよ!」

「つか、どうやるんだよ!」

「んー、なんかね、イケメンに言われたいセリフ言ってるみたい。」

「イケメンに言われてもな……」


肩の力が抜けた。


ーーえ、おんなのこじゃね?


凛の瞳は一点も曇ってなかった。


「じゃ、はじめるぞー!」

「お、おい!」

「筋肉すごいね。」

「ちょっ!イケメンに言われても一緒だろ!ははは!」


俺は腹を抱えて笑った。


「次、悠希の番。」

「えー?ん……ね、ねー、寝顔いいな!」

「寝顔見せるの?」

「な、なんだよ……!」


凛の視線が痛い。


「いつも寝てるだろ!」

「あー、授業中?そうだね。いつも寝てる。」

「だろ?」


俺は親指を立てた。

凛はくすっと笑った。


「な、かー……泣き顔が見たい。」

「こわっ! 全然胸キュンじゃない。」

「ある意味、胸キュンだろ。」

「おまえエロいぞ!」

「俺、そんなこと一言も言ってないけど。」

「ははは! だまされた!」

「次、い、だぞー!」

「い?んっと……いつか、一緒になりたい。」

「あーいいね。」

「感心するな!」


凛の胸に手の甲で突っ込みを入れた。

前にいた女子たちを抜いて、先に進んだ。

息を切らして、もうしりとりはしてなかった。

俺たちは、まだまだ余裕があった。


「また、い、だね。」

「おう。」

「いいよ、一緒になろう。」


凛の顔が真剣だった。

まるで、トスが上がった瞬間のような。

胸が急に強く打った。

ゾーンに入ったときのように時間が止まった。


「……プロポーズ、成功じゃん。」

「いいだろ?」


顔は見れなかった。

きっとドヤ顔してると思う。

目元が燃えるように熱い。

胸を暑いふりして掴んで、パタパタと2、3回引っ張った。


「あっちー……」

「悠希、胸キュンした?」

「うっせー! イケメンはなにしてもズルいな!」

「え? 俺、イケメン?!」

「うぜーよっ!」

「ははは!」


笑い声が止んだ。

もくもくと石段を上がっていく。

急に場の空気が変わった気がした。


「悠希。」

「なに?」

「ここの神様、女の神様なんだって。」

「へー」

「ラブラブカップルとか、嫉妬して縁きっちゃうらしいよ。」

「そうなんだ。」


凛が急に5段先まで駆けて、振り返って足を止めた。

俺もつられて足を止めた。


「俺ら、まだカップルじゃないから大丈夫だね。」


風がふいて、新緑の桜の木が揺れた。

サワサワという音だけが耳に入った。

喉が、カラカラで、言葉がでない。


凛の口元が弧を描いた。


「帰るまでに、頷かせるから。」


凛の後ろに光が差していた。


返事は……?

ご想像にお任せします。

最後までありがとうございます。

書いてて、楽しかったです。

では、また、どこかで。

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