しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった
春の遠足でした、しりとりを思い出して書きました。
よろしくお願いいたします。
高校に入学して2回目の春。
学年全員が第一グラウンドに集合していた。
学年主任が拡声器を持って、なにかを叫んでいる。
「あちー」
「ほんと。歩き遠足とか地獄だろ。」
「なー」
俺、中野悠希は、前に並ぶクラスメイト栗栖凛と言葉を交わしていた。
春なのに、夏のような日差しが皮膚を刺す。
今日は遠足で、隣町の神社に行く予定になっていた。
その神社は山の頂上にあって、石段が1,000段?くらいある。
思わず視線を下げた。
「今日の部活アップなしかな?」
「だったらいいな。」
「去年どうだったけ?」
「覚えてるはずないだろ。」
「なー」
凛とは同じバレー部でよくつるんでいた。
と、いうのも俺ら以外の同期がアスリートコースだったからだ。
クラスでも同じ部活ということで、常に一緒だった。
「おい、見ろよ! アスリート走ってるぞ!」
「あー担任、山田先生だからな。」
「アスリートじゃなくてよかった……」
「なー」
山田先生が高笑いしながら走り出し、『ついてこい!』と叫んでいた。
副担任の若い白石先生が、最後尾について一緒に走っていた。
俺は両手を振って同期を見送ったが、睨まれた。
「うわっ、こわっ!」
「お前、後でやられるぞ!」
「やべっ!」
急いで、手を下げた。
アスリートコースの出発の後、しばらくして担任が歩き始めた。
進学クラスの俺らは、歩きだった。
神社の麓に着くまで2時間くらいはかかる。
思わず、ため息がでた。
しばらく歩いて、麓についた。
ここからは30分くらいで頂上まで着く。
石段を睨みつけた。
「なー悠希。」
「なに?」
「なんかしゃべって。」
「体力温存。」
周りは結構大声で馬鹿笑いしたり、うるさいくらいだった。
せっかくの遠足。
楽しくしたい気持ちも分かるが、部活のことを考えると、少しでも休みたかった。
「えーかまってよ!」
「うざっ」
「ひどいな。」
凛が白い歯を見せて笑った。
背も同じくらいで、もともと同じポジションだった。
けど、こいつには敵わないと早々に気づいてポジション変えした。
器用なうえに、バネのような筋肉をしていた。
ありえないくらい跳ぶし、ボールが走る。
一見、細身で心配になるが、脱ぐとバッキバキだったりもする。
俺は逆で、なんでもパワーで押してしまう。
筋肉の付きやすいタイプだった。
「なー面白いことしようよ!」
「だから、うざいって!」
少し先を歩いている女子グループが異常な盛り上がりをしていた。
頬を染めて、大笑いしていた。
凛がそのグループを指さした。
「悠希、アレやろう?」
「あいつらなにしてんの?」
「胸キュンしりとり。」
「は?」
凛の顔をまじまじと見た。
口元は笑っているのに、瞳は揺れていなかった。
「……まじ?」
「遠足は、楽しくだよ!」
「つか、どうやるんだよ!」
「んー、なんかね、イケメンに言われたいセリフ言ってるみたい。」
「イケメンに言われてもな……」
肩の力が抜けた。
ーーえ、おんなのこじゃね?
凛の瞳は一点も曇ってなかった。
「じゃ、はじめるぞー!」
「お、おい!」
「筋肉すごいね。」
「ちょっ!イケメンに言われても一緒だろ!ははは!」
俺は腹を抱えて笑った。
「次、悠希の番。」
「えー?ん……ね、ねー、寝顔いいな!」
「寝顔見せるの?」
「な、なんだよ……!」
凛の視線が痛い。
「いつも寝てるだろ!」
「あー、授業中?そうだね。いつも寝てる。」
「だろ?」
俺は親指を立てた。
凛はくすっと笑った。
「な、かー……泣き顔が見たい。」
「こわっ! 全然胸キュンじゃない。」
「ある意味、胸キュンだろ。」
「おまえエロいぞ!」
「俺、そんなこと一言も言ってないけど。」
「ははは! だまされた!」
「次、い、だぞー!」
「い?んっと……いつか、一緒になりたい。」
「あーいいね。」
「感心するな!」
凛の胸に手の甲で突っ込みを入れた。
前にいた女子たちを抜いて、先に進んだ。
息を切らして、もうしりとりはしてなかった。
俺たちは、まだまだ余裕があった。
「また、い、だね。」
「おう。」
「いいよ、一緒になろう。」
凛の顔が真剣だった。
まるで、トスが上がった瞬間のような。
胸が急に強く打った。
ゾーンに入ったときのように時間が止まった。
「……プロポーズ、成功じゃん。」
「いいだろ?」
顔は見れなかった。
きっとドヤ顔してると思う。
目元が燃えるように熱い。
胸を暑いふりして掴んで、パタパタと2、3回引っ張った。
「あっちー……」
「悠希、胸キュンした?」
「うっせー! イケメンはなにしてもズルいな!」
「え? 俺、イケメン?!」
「うぜーよっ!」
「ははは!」
笑い声が止んだ。
もくもくと石段を上がっていく。
急に場の空気が変わった気がした。
「悠希。」
「なに?」
「ここの神様、女の神様なんだって。」
「へー」
「ラブラブカップルとか、嫉妬して縁きっちゃうらしいよ。」
「そうなんだ。」
凛が急に5段先まで駆けて、振り返って足を止めた。
俺もつられて足を止めた。
「俺ら、まだカップルじゃないから大丈夫だね。」
風がふいて、新緑の桜の木が揺れた。
サワサワという音だけが耳に入った。
喉が、カラカラで、言葉がでない。
凛の口元が弧を描いた。
「帰るまでに、頷かせるから。」
凛の後ろに光が差していた。
返事は……?
ご想像にお任せします。
最後までありがとうございます。
書いてて、楽しかったです。
では、また、どこかで。




