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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Bloody Exorcist-赤黒い悪魔払い士-

作者: 杞憂

『ハルカの季節』

一万アクセスの記念作品です!

機会があればそちらも読んでくださいね!お願いします。



それではどうぞ

杞憂の世界、楽しんでいってください………↓↓↓↓

「…………」

男は無言で走る。

口を開けず走る。

気配を消しながら走る。

走っているせいで男が身に纏っている赤のロングコートが波打つように翻る。


男は今、遺跡の中を走っている。


遺跡は煉瓦のような石を山積みにしたような一般的な遺跡であり、所々に石と石との間に太陽の白い光が射し込む。

だが、奥へ奥へ進むほど、射し込む光は消えていく。そして残るのは闇、闇、闇。ただそれだけ。

そう、ただそれだけの筈なのだが……

奥へ行く度に男は何かを感じ取っている。


「奴等が……いる。」


男は闇に潜む者の正体が何なのかを知っている。

すると、急に耳にノイズが走った。男は走る足を止めて、音源が何処かを探るがその音源は耳に嵌め込んだイヤーホンからだ。ノイズは少しの間鳴り続けていたが、直に止み、誰かの声が聞こえてくる。



『…もし……、聞こえ……もしもし、聞こえますか』

「………聞こえてる。」

『そうですか、上手く通信出来て良かったです。』

「五月蝿い。……静かにしろ。」

『うぅ〜〜!それは、あんまりなのですよ!』

「………」


通信者、楠マリア[くすのき まりあ]は男を気にかけて励まそうとする。

だが、男の反応が無いのでマリアは『もういいや』と思ったのか用件だけを伝える事にした。


『今回の任務内容を確認するです。貴方が今居る遺跡、

ガルド遺跡はいつもは立入禁止なのですが、この日は村のお祭りらしく、会場がこの遺跡らしのです。

そして会場に集まった村人はアイツらに………』

「内容の確認になって……無い。」

『相変わらず、冷たくて冷酷なのですね。』

マリアは態度を一変、声を低くして、男に対して攻撃的に返したが、

「いつもの事だ………俺も、貴様らも。」

男は意味有りげにそう答えた。マリアは全て知っていて『冷酷』と言ったのだ。


『っ………。

確認を続けるです。

犠牲になった村人の人数はまだ少なく、老若男女合わせて20人です。

そして貴方の任務は犠牲になった村人の生存者が発見できた場合、その生存者の護衛をして、尚且、アイツら、

『悪魔』の全滅です。』

「……了解。」

『あ、あの、その、健闘を祈っているのです……』

「……あぁ。」男は少し元気の無いようなマリアの声を最後に通信が途絶え、またノイズが雨のようにザーザー降りだした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

男は携帯端末を手にまた走る。通信終了時、端末に

遺跡の全区域を記したマップが送られてきた。送ったのはきっとマリアだろう。有り難いと思いながら、男は端末のマップ機能を利用した。マップには間取り、作りは勿論、自分の位置や、悪魔、村人の居場所の位置まで丁寧に表示されている。

男はそれを頼りに悪魔の居る場所へ走り続ける。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

僕の目の前には刀を持った男の人が暴れて居る[いる]。その人の目は血のように真っ赤で、愉しそうに村の人達を切り殺してる。

「誰か助けてくれ!!」

「嫌だ!!!死にたく無い!!!」

「パパぁ!ママぁ!助けてよ〜!」と

僕の目の前に起こる光景は地獄絵のようになってる。男の人の表情は気が狂った様に笑顔であり、口元を歪ませ、

「ギャハハハ〜!!

死ね〜!

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね〜!!!

人間なんて死んでしまえ!!!」

ザシュッ、ザシュッ、と男は老若男女関係無く近くに居る村の人達に切りつける。



僕は今日行われる筈だったお祭りを想像する。

始めの神様にお祈りするのは余り面白くないけど、その後の火を囲んで皆で食べる料理は本当に楽しい。

友達や両親と話して笑ったり、喜んだり、色々面白い。

その筈だったが、僕の目の前にそんな面白さの欠片さえも見えない位汚れてる。



そんな事を考えてるといつの間にか男は僕の方に向かってきていた。周りを見ると皆ピクリとも動かない。―――死んでいる。



僕は尻餅をつきながらも、懸命に男の人から逃げるようとする。

だが、気付けば僕の背中に壁が当たっていた。

「ギャハハハ〜!

とうとう、最後の人間だな!しかも、ガキかよ!

チッ、殺しがいの無い。

まぁ、良い。死ね。」

男の人は僕の頭上で刀を振り上げる。

条件反射なのか解んないけど僕はそれを見て、僕は目を思いっきり閉じて、体全体に力を入れる。

僕は死んでしまうの?……お願い、誰か助けて!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


端末には悪魔の反応がある場所に男は居る。

そこには小学生位の男子が一人、後は……

「……悪魔。」


刀を持った男は目が赤く染まっていて、男子を追い詰めている。

「ギャハハハ〜!

とうとう、最後の人間だな!しかも、ガキかよ!

チッ、殺しがいの無い。

まぁ、良い。死ね。」


男は自分の武装を確認した。

両手には赤く大きいライフル銃を持つ。

腰には二丁の大型の散弾銃(ショットガン)を備えてある。

そして、これらの武器にはどれも赤色で白色の十字架が描かれている。



赤眼の悪魔が刀を降り下ろす瞬間、男はライフルで頭を射た。

「ギィッ!」



悪魔は弾が当たった反動で後ろの方へ勢いよく転がって行き、しばらく起き上がらない。

その間に男は小学生位の少年に近付いて行く。

「……大丈夫か。」

「は、はい。僕は大丈夫ですが、あの人は、あの、もしかして死んでしまったのですか?」

「……。」

男は少年の質問には答える気はないようで、無視をする。だが、代えってこの行為が少年を怒らせる。

「そもそもどうしてこの人を射ったのです?アンタは殺し屋か何かなのか?」


少年はパニックしている。この状況に置かれているから仕方ないのかもしれない。

親しかった友、家族を失ったのだから。

「……お前…名前は」

「……黒川。黒川恭輔[くろかわ きょうすけ]だ。」「恭輔か。隠れてろ。邪魔だ。」

「なんでだよ!僕だって役に立ってみせるよ!もう中二だし。それに……」

何か言い欠けた時、


―――ガ!!ガガッカク!近くから何か不吉な音がする。

恭輔が周りを確認するが、何も変わらない。だが何処からか発せられる音はまだ止む気配は無い。


ガガッカク!ガググチャ―


恭輔は急に訳の解らない恐怖心に抱かれる。

そもそもさっきまで人が多量の出血をして死んで行くのは普通の日常では目にする事の無い光景である。

言葉に表すなら、

――非日常。

『ふつう』な生活をしていればこんな不気味で生々しい音はしないし、人は無惨に斬死などしない。



恭輔は少しでも恐怖心を抑えるために男の顔を見つめた。

だが、男の表情はこんな状況にもかかわらず相変わらず無表情であった。

まるでこの非日常が

『ふつう』の日常であるかのように。

男のその無表情な顔、否、その無表情な瞳はある一点だけを捕らえて放す気配が無い事に恭輔はやっと気付いた。

恭輔は男の目線を辿って瞳に写る物を自分も見ようとする。だが、そこに写されたのは――――



「グァァァ!!ヨクモヤッテクレタナ!ニンゲン!」


そこに写されたのは―――ゆっくりと起き上がる赤眼の悪魔だった。

悪魔はふらつきながらも立ち上がり、こちらを睨み付ける。

その目はさっきより赤みが濃くなっている。今にも血が目から流れ出しそうな位にだ。

そしてその姿を目の当たりにした恭輔は言葉が出なかった。いや、出せなかった。

何故ならこの時、恭輔の恐怖心は頂点に達していたからだ。このような事がある筈が無い。

弾丸で頭を貫かれて生きてられる筈が無い。まして立ち上がるなど………

「恭輔……何処かに隠れろ。」

「ぁぁ………」男が何か言っている。が、恭輔の耳には届かない。

「恭輔。」

「………」

「おい……恭輔。聞け。」「………」

「恭輔!!」

「ァ!!」

恭輔は大声で名前を叫ばれ我に還る。まるで、消えているテレビの電源スイッチを入れ動き出す時みたいだ。



「いいか、よく聞け恭輔。お前は何処かに隠れろ。

流石にお前を守りきれないかもしれない。出来るだけ遠くに逃げろ。いいか?」男の瞳は

今、恭輔だけを捕らえてる。

今、恭輔にだけ語りかけてる。

今、男の瞳に生気が宿っている様に見える。



少ない時間しか男と接しなかったが、さっきとはうって変わって真面目のようにも見えるし、恭輔を守るためにも見える。



恭輔はその事を理解したのか無言でその場から逃げた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「イイノカ?仲間ガ逃げたぞ?お前も逃げなくて良いのか?」


悪魔はまだ完全ではないが言語能力を取り戻してきている。

頭の傷もみるみるうちに塞いでいき、痕さえ残っていない。


「………何て速いんだ。

コイツの自己再生能力は」「それは嬉しい誉め言葉だなぁ!ギャハハハ〜」

この区画中に響き渡る下品な声。男は両手に銃を構え直しす。

「…お前の声は気持ち悪い。だからお前の喉をぶち抜いて、二度と出ないようにしてやるよ!」

「はァ!!やってみろ!」


二人の体が同時に動いた。悪魔は刀で切り殺そうとしているので接近するが、男は距離をとってライフル銃を乱射する。



男が放つ弾丸は悪魔の体に確実に当たっているが

「ギャハハハ〜!!そんなことだと俺には勝てないぞ!」

「…………。」

どうやら、当たっても余り効果は見られず、ひるみもしない。だが、人間で言う心臓の箇所だけは違った。狙って射っても刀で防がれる。

「気のせいでは……無い!!」

男はライフル銃をロングコートの中にあるホルダーにライフル銃をしまい、腰のホルダーに納まっている巨大なショットガンを取り出す。

「そんなもんで俺を殺すのか?ギャハハハ〜!!

無理な話だな!!」

「…やってみなければ、わからないだろ!!」


―――ドガァァン!!


男の巨大なショットガンの銃口が爆音とともに火を吹いた。

悪魔は黙って赤い目を見開きゆっくりと自分の刀を持っていた右腕を見た。

そこには肩から右腕が無くなっていた。

無くなっていることに気が付くと、急に鋭い痛みが襲ってきたのか今まで見たことの無い苦痛の表情を悪魔は見せる。


「グァァァ!キサマ、キサマ、キサマ、キサマ、キサマ、キサマ、キサマ、キサマ、キサ」

―――ドガァァン


再び爆音が鳴る。

悪魔はそのまま無言で倒れる。悪魔の背には遺跡の煉瓦造りの壁がある。

その壁には真新しいペンキが塗られている。

色は濃い赤色。

所々に何か柔らかそうな、何かが壁からボトボト床に落ちていく。

壁に塗りたくられたペンキも重力に従って下へ下へ流れていき、床に溜まっていく。

よく見ると床は血の水溜まりが出来ていた。

壁に塗られているペンキも血だ。そしてボトボト床に落ちていくのは悪魔の脳味噌の欠片。悪魔の体を見るとある筈の頭部だけ弾け飛んでいた。首からも血が流れ出していて止まる気配が全く無い。

相手が人間なら即死だろう。だが、今相手にしているのは悪魔だ。急所で無い限り何処が吹き飛んでも平気だろう。何故なら奴等には再生能力が備わっているから。


「……コイツの自己再生能力は凄いな。もう顎まで再生してやがる。」


自己再生能力とは核となる箇所が残っているなら自らの体を復元、再生する事が出来る能力だ。

この能力には個人差があり、治る早さなどがちがってくる。

そう思うとこの悪魔の再生は早いほうだ。


――ガガッカク!

ガガッカク!ガググチャ!


どうやらこの不気味で生々しい音はこの悪魔の再生する音らしい。


男はショットガンを腰に二丁しまい、ライフル銃を

一丁だけ取り出して、悪魔の心臓に狙いを定める。

「…………地獄で罰せられろ!」


―――バァン!!


心臓を貫いた刹那――

まるでストローで牛乳に息を吹き掛け気泡が出来るみたいに悪魔の身体中が膨張する。やがて限界が来て、

―ブシャァァ!!


炸裂した。

悪魔の肉は床や壁にヘバリ付き、血を勢いよくばらまいて行く。

ヘバリ付いた肉一つ一つがスプリンクラーと化して血をばらまく。


しばらくして男は携帯端末のマップ機能を使用した。すると、こちらに向かってくる反応がある。

男はこれが恭輔だと感じていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

さっきから銃の乱射する音が聞こえてくる。

僕は遺跡の外を目指して走っている。でも、走っても走っても外にはたどり着かなくて、遺跡の造りはどこも同じだから、同じ所をグルグル回ってる感じがする。

しかも、銃の音はさっきから同じ大きさだからあまり遠くに行ってないことが解る。


「ハァハァ。…あの人が心配だ。今から引き返せば少しは役に立つかな?」

迷っていたとき

―――ドガァァン!!



さっきとは違う銃声が聞こえてくる。あの人がもしかしたら死んでしまったかも知れないという不安にかられる。

さっきから僕は迷っていた。

このまま逃げていいのか?このまま村のために、自分のために闘わなくて良いのか?



だが、次の銃声で

―ドガァァン



決めた!

僕はあの人を手伝う!

僕のため、村のために闘う!

そう決めて後ろを振り返って走る。

同じような通路はさっきまでとは違い、迷う事なく走り続ける。

「待ってろ。今行く。」

恭輔の目の前の視界は明るく輝き、後ろは暗く澱んでいた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「おい!大丈夫か!」

恭輔はさっきの区画に着き男に話しかける。

「……恭輔。お前を待っていた。」

「そうか。でも、どうして僕を待ってたんだ?あの悪魔倒したんだろ?」

「………」

「なぁ、どうして…」


言い終わる前に男は恭輔の心臓にライフル銃を射った。

恭輔は胸の傷痕を押さえながら倒れる。

「……どうして?どうして射ったんだ?」

男は無言で二丁目のライフル銃を取り出す。

「どうして、どうしぃ」

恭輔は息絶えたのか声を発しなくなった。

男はそんな死体と化した恭輔に話しかけた。


「………さっきお前、アイツのこと『悪魔』と言ったよな?どうして知っている。それに、端末の反応にはお前は悪魔の表示がしてある。

お前、悪魔だろ。」


その言葉を聞いたのか恭輔はゆっくりと立ち上がる。「なるほど。どうして、と聞かなくて良い位に説明してくれてありがとう。

いや〜、凄いな〜。

流石『エクソシスト』なだけあるね!」



口元を歪ませてワラウ恭輔は額に手をおき、口調が替わる。

「始める前に聞きたい事があるんだが、アンタの名前は何だ?」

「………」

「おい、名前は何だと聞いてるんだよ。まさか聞かれて答える名前が無いなんて事は無いよな?」

「………その通りだ。」

「おい!糞エクソシスト!俺が糞相手に親切に聞いてやってるのに何だその反応は!!!」

「……本当の事だ。俺には答えるべき名前は無い。」「…テメェ、やっぱムカつく。ムカつくから迅速に抹殺してやるよ!!」



そう言うと恭輔は額から手を離す。すると恭輔の目は出血するほどの赤に染まった。

それを確認した男は二丁のライフル銃を再び構え直す。

もうすでにそこに立っているのは恭輔ではなく『悪魔』なのだ。

だから殲滅[せんめつ]する。

だから全滅させる。


人類は救いだすべき

悪魔は滅ぼすべき

より殲滅する。

殲滅しなければならない。

男は決意を固めた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


男はライフル銃を悪魔の身体中に乱射する。だが、弾は当たってもダメージは少なく被弾した箇所はすぐに元に戻る。

そんな中で悪魔は平然としていて

「どうしたよ、糞エクソシスト!!そんなんじゃ俺は殺せないぞ!」

「……くッ」

確かにこのままやり続けてもラチがあかない。

無駄に弾を使っても足止めにもなりはしない。

となると一番手っ取り早いのは核を一発で貫くことだが、今しなければならないのは

「……核を見つけなければならんな。」

すると男はコートの内ポケットから野球ボールほどの大きさの玉を取り出し、勢いよく悪魔の足元に投げた。

すると玉は白濁とした煙を出していき、あっという間に区画中に行き渡る。

「クソ!何処イキヤガッタ!クソ!クソ!クソ!

グァァァ!目ガ、目ガ見エナイ!」

悪魔がジタバタしている内に男はその場から逃げ去っていく。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


『悪魔の核の場所を教えて欲しいのですか?』

「……あぁ。」

男は白濁の煙の届かない場所でマリアと通信している。

あの玉は悪魔の視界を奪う閃光弾みたいな物だ。

しかし、それだけで無く、あらゆる電子機器の通信を妨害する効果がある。

マリアと連絡するには煙から出ないといけない訳だった。


『教えるのは良いですけど、その端末で悪魔本体か悪魔の血液をスキャンして、データを転送してくれないといくら私でも教えれないですよ?』

「……わかった。しばらくしたらデータを送信出来るようにする。……頼むぞ。」

『はっ、はいです!貴方も頑張ってくださいです。』男は最後に「あぁ」と答えてまた白き世界に戻っていく。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


「グァァァ!!何処ダ!

何処イキヤガッタ!!」

奴の居場所はすぐにわかった。

男は音を立てず悪魔に近づいていく。

手には小型の投げナイフが一つ。

悪魔は男が自分の真後ろにいることは全く気付いておらず叫び続ける。

「出テコイ!八ツ裂キニシテヤル!」

男は投げナイフを悪魔の首に走らせる。



これで気付かれるのが普通だが、まだ煙が充満しているお陰で

「ウシロカ!殺シテヤル」悪魔は後ろを振り返って歩き出したが、歩く方向が少しずつずれていき、頭が壁に当たる。



「……けむり玉使って良かった。今日はついてる。」

そういい残すと煙の届かない場所へ走って行く。


△△△△△△△△△△△


「グァァァ。見ツカラナイ。」

男はショットガンを構えて悪魔に近づいていく。

「……死ね。」

そういい男は悪魔の背中から心臓を射った。



あの後男はマリアと再び通信をして悪魔の核が心臓だと解ったのだ。



悪魔はピクリとも動かず、無言で床に崩れる。

だが―――

「キッキッキ。俺はまだ死んじゃ無いぜ。」

すると悪魔は風穴を開けられた心臓付近から蟹の様な脚が四本出てきた。

しかし、その脚は出てきた始めは数センチしかなかった脚の太さもみるみる内に1メートルほどになり、長さも数十メートルにもなる脚四本が出来上がった。


すると悪魔の本体、恭輔の体が上に持ち上がっていく。

よく見ると恭輔の身体中に亀裂が何ヵ所も出来ていて、今にも壊れてしまいそうだった。

そして亀裂が走ってる体が少しずつ大きくなる。

裂け目も大きくなりやがて、恭輔の皮が破れて悪魔本体の姿を見せた。

ちょうどけむり玉の効果がきれたせいでより鮮明に悪魔のグロテスクさがわかる。



恭輔の皮の中から出てきたのは顔であった。

顔の大きさは恭輔の身長の約1.6メートル位で、壊れた不気味な人形の様な目を持っている。

口元もただ上下に動かすだけであり、カチカチと音がするだけである。


「……本当に人形みたいだ。」

男は顔だけを見てそう呟いた。

四本の脚の付け根に大きな顔一つ。考えただけでも鳥肌が立ちそうなのに実在しているとなると現実逃避したくなる。

だが、そうも出来ないのが彼ら『エクソシスト』なのである。

「…タク、仕方ないな。………おい!キモ面野郎」

そう言ってしまった刹那、悪魔の蟹の様な前足の一本が男に降り下ろされた。



―――スシャャン。



男は自分の左腕を見た。

するとどうだろう。

さっき男が殺した悪魔と同じように男の左腕は肩から無くなっている。

自分の足元を見るとショットガンを持つ自分の左腕が無造作に落ちている。


自分は斬られたと認識する。

すると、傷口の痛みが段々込み上げてきた。

あまりにも痛みが鋭すぎて、感覚が麻痺してしまったようだ。



男は右腕のショットガンを置き傷口を押さえた。

上を見上げると悪魔の顔がよく見えた。

アイツは俺をいたぶって愉しいのか表情がワラッテイル様に見える。

それが苛立ち男はコートの内からライフルを取り出して悪魔の核、頭を狙って射った。

しかし、弾はアイツの前足で防がれた。

この狭い遺跡の空間で器用に足を動かして攻撃、防御をしてくるらしい。

男はチッ、と舌打ちをして「仕方無いな」と言うとライフルを捨て、切り落とされた自分の左腕を拾う。

すると悪魔はワラい、話しかけてくる。


「キッキッキ。ドウスルツモリダ?

マサカ、クッツケルツモリカ?キッキッキー!」


相変わらず口は上下に動かすだけだ。

しかも、言葉も片言なので正直何いっているか男は余り理解していない。

だが

「『くっ付ける』のは聞こえたぞ。あぁ、そうだ。くっ付けるんだよ。」

そう言うと男は腕を傷口に接触させた。すると



―ガガッカク、ガググチャ!!


何処かで聞き覚えのある生々しい音を立てる。

その間約五秒

男は悪魔に『再生した左腕』を見せた。



するとそれを目の当たりにした悪魔はビックリしている。


「バ、馬鹿ナ!アリエナイ!何故ダ。普通ノ人間ハ出来ル筈無いノニ……!!!オマエ、マサカ……」


「…そう。そのまさかだ。………俺は『悪魔』だ!」


そう。男は悪魔なのだ。

マリアの言う『全て知っている』とは男が悪魔であるということなのだ。


「悪魔ナラ俺達ト一緒二……」

「一緒になんか行くかキモ面。」

そう言うと悪魔の四本の脚に風穴が空き、千切れた。悪魔はそのまま体勢を崩す。顔だけ男の方に向けると男は既にショットガンを二丁構えて悪魔の頭を狙っている。すると男は語り出した。


「俺は今まで何人もの人々を殺してきた。そんな中、俺はあの子に、楠マリアに気付かされたんだよ。罪の無い人々を俺は殺してしまったんだと。

だから俺はその罪を償う為に今、エクソシストに入団したんだ!」


「……………」

「だがな、俺は悪魔に悪魔と言われるのが非常に嫌でな。

これまで悪魔に『悪魔』や『化け物』とか言われたらそいつは例外無く無惨にぶっ殺してるんだよ。」

男は態度を替え、さっきまでとは違い、殺気籠った低い声で言い放つ。


「マ、待テ。話セバ解ル」「じゃあな。

地獄で罰せられろ!!」



――ドガァァン!!



男の両手に持つショットガンが同時に火を放った。



この悪魔も核を潰されれば生命活動はできず、身体中に気泡の様な、いぼが出てきて直に


――ブシャァァ!!!


炸裂した。

飛び散った肉片は壁や床、天井にヘバリ付き、血液を勢いよくばらまき、まるで豪雨に襲われているかの様だ。


男はこの豪雨の中、独り立ちすくみ

「恭輔。すまない。救えなくて。」と最後の別れの言葉を告げながら

目から一筋の白い雨粒が降った。



***********



男は身体中が赤黒く染まった状態で遺跡から出ようとしている。

壁からは太陽の光が漏れていて、茜色が通路を切なく彩っている。

前に進むにつれ茜色はより一層明るくなっていく。

次第に壁から漏れる光の数が増えて行き、最後には壁は体全体で茜色の光を受ける。

……外に出られた。………

男の目の前にはヘリコプターが一機停まっていた。

それをぼんやり見ていると中から、人が降りてきた。


男はその人影には見覚えがある。

深紅に染まった髪が肩まであり、瞳は透き通る様な蒼色を持つ女性。

そんな女性が男の前まで来て

「……結果報告をお願いするのです。」


――楠マリアだ。


男は申し訳なさそうに答える。

「…すまない。遺跡にいた村人は一人も救出出来なかった。……もっと早く行けていれば……」

「報告は終わりですか?」「…………あぁ。」

男の返答を聞くとすぐにマリアは男を抱き締めた。

マリアは男よりも10センチ程小さいので男の胸に顔を埋めるかたちになっている。

「グスン、……辛かったですか?」

「……いや。いつもと同じだ。」

「じゃあ、…グスン、辛いんですね?」

「……あぁ。」

マリアは我慢していたであろう涙を大声で漏らした。男はそんなマリアをただ血で汚れた腕で抱き返す事しか出来ない。



しばらくしてマリアは抱き締める手をほどき、涙目で手を指し伸ばして

「さぁ、帰りましょ。

陵[りょう]。」

「……?」

「貴方の名前なのですよ。今私が考えたのです。

どうですか?格好良い名前ですよね!……私は貴方にピッタリだと思うのですが……」

陵?今まで自分の名前何か考えた事もない……という様な顔を男はしている。

「……ありがとう。俺何かに名前をくれて。」

「えへへ。どういたしましてなのですよ。さぁ、帰りましょ。陵君!!」

「あぁ!」

そう言うと二人はヘリコプターに乗り、空へ飛び立って行く。

切なさだけを彩っていた夕陽の茜色は、今マリアと一緒に居たいと言ういとおしさにも彩られている。


こんにちは杞憂です。

投稿が大分遅れて本当にすみません。


杞憂のセカンドワールドはいかがでしたか?

満足して戴けたら嬉しいです。


戦闘シーンを書くのに苦労しました。


これからも連載中の

『ハルカの季節』よろしくお願いします。


それではまたの機会に会いましょう。

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