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小さな友だちVS犬猿幼なじみ!?5

 ふたりの態度に戸惑いながら、小さな友だちと犬猿幼なじみの顔を交互に見た。


「ねえねえ、犬伏くん、健太くん。この後は、もうすぐ帰っちゃったりする?」


 なぜか口もとニヤつかせた高坂さんに話しかけられ、ぼくと健太くんは顔を見合わせる。


「お夕飯をどうしようかって話をしてたところだよ」


「なので、まだ帰るかどうかは決めていません」


「だったらさ、この後みんなでゲーセン行かない!?」




 店内は、さまざまな音楽が大音量で混ざりあっていた(犬のぼくだったら確実にいやがり、すぐにお店を後にしただろう)。


 ゲームセンターの音が苦手で、あまり遊んだことのないぼくは、物珍しさからあたりを見回した。


 UFOキャッチャーで遊ぶ男女のカップルに音楽ゲームに熱中している男の人たち、ガチャガチャをやって推しのアイテムを手に入れたと話す女の子たちの姿を目にする。


「みんな、どれで遊んでく!?」


 いつも明るく元気な高坂さんは、体育祭や文化祭、野球の試合の応援でチアリーディング部のダンスを踊っているときみたいにテンションマックスだ。


「オレらはUFOキャッチャー行くわ。舞が犬のぬいぐるみほしがってたから再チャレンジする」


 田崎さんと手をつないでいる内村くんが左手の親指で右横を差した。


「無理しないでね、圭祐くん」


「おう」


 内村くんは財布を取り出し、小銭を投入した。


「圭祐のやつ、田崎の前だからって無理して……」


「無理って、なんで?」


 ぼくが質問すると、しかめっ面をして腕組みをしている隼人は「野球がうまくてもゲーセンのゲームは、またべつってこと」


「……ふーん、そうなんだ」


「それより、渉、こんなとこまで着いてきていいわけ?」


「えっ」と思わず声が出る。


 不機嫌そうな様子の幼なじみを見つめ、また胸がざわつき始めた。


 何、邪魔ってこと? それとも「仮にも家庭教師なんだから小学生をこんなとこに連れてくるなよ」って、あきれているの……?


 目の前の相手が考えていることが、わからない。


 次もまた、いやなことを言われてしまうのだろうかと身構え、目をつむる。


「犬伏さん」


 健太くんの小さくて温かい手が、冷たくなったぼくの手に触れた。


 グイと引っ張られ、コケそうになりながら速歩きをする。


「おれ、すっごく、ほしいものがあるんです。犬伏さん、取ってくれませんか?」


「えっ!? でも、ぼく、UFOキャッチャーなんて、やったことないから取れないと思うよ」


「いいんです、そんなこと! こっち、こっち」


 後ろから「おい、渉!」と隼人の声が聞こえたような気がしたけど振り返らないまま、健太くんの手を握り返し、後を着いていったのだ。


 スイスイと海の中を泳ぎ慣れた魚のように健太くんは、うまく人をよけていき、人のいないエレベーターへ乗る。


 機械のガチャガチャした爆音から離れられて自然と、ため息が漏れた。


「犬伏さん、危なかったですね」


「……わかった?」


「はい、一応は仮契約をしているマスター候補なので。もう少しで変態していたところですよね? 少しは落ち着きました」


 小学生の男の子にもバレちゃうくらい、ぼくの感情はだだ漏れだ。


 お母さんを亡くした傷も癒えておらず、学校でも悩みごとの尽きない健太くんに助けてもらうなんて、なんだか――「情けないなぁ……」 


 本音がポロッと口から出てしまった。


 マスターになろうとしてくれている少年を前にして、何を言っているんだろうと思い直す。


 エレベーターの中でもBGMがかすかに流れているからか、独り言をつぶやいたけど健太くんは「でも、こうやってゲームセンターにも来れたんだから高坂さんや田崎さん、内村さんにも感謝だな」と頬をほころばせた。


 ――わざわざ子どもを不安にさせる言葉を、聞かれずに済んでよかった、と胸を撫で下ろす。


「そうだね、隼人は反対だったけど」


「ほんとですよ。大人ぶって、かっこつけているけど、あんな態度じゃ伝わるわけないのに」


 肩をすくませ、口をへの字にしている彼の言葉に、首をかしげる。


「なんのこと?」


「なんでもありませんよ。ほら、着きました」


 エレベーターの扉が開くと、そこはプリクラがひしめいているコーナーだった。


 圧倒的に女の子たちが多いけど、ちらほらとカップルや友だち同士で来ている男の子の姿もあった。


「今日、遊びに行った記念に写真、撮りましょうよ」


「うん、そうだね!」


 いやな気持ちなんて最初からなかったみたいに、すがすがしい。ささくれだった心がやわらかくなっていくのを感じながら、ぼくは健太くんと初めて池袋で遊んだ記念写真を撮った。


 撮り終えたところで時間を確認するため、スマホの画面を見ると隼人からの着信が、何十件も来ていた。


 普段、連絡なんて、ほとんど取らないくせして、こういうときだけうるさいんだからと思いながらボタンをタップし、左耳へあてる。


「どうしたの、隼人?」


『今どこ? ガキンチョと迷子になってるの?』


「違う、そんなんじゃないから」


『だったら、なんで急に離れたりするわけ? 圭祐と田崎だって、そんな遠くへ行ってないんだけど。梨花も急なことにビックリして……』

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