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【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第二章 領地を改革します

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173 マルティーヌのお茶会⑧

カドコミで第5話②が更新されています。

領民の前で所信表明演説をするマルティーヌ。

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 オーベルジュに戻る途中、KOBANの前で馬車を止めた。

 私が馬車から降りたので、四人とも馬車を降りてくれた。


「この建物には騎士が常駐する予定でして、市中の見回りなどを行う拠点になります。また同時に、我が領の簡単な案内所も兼ねておりまして、オーベルジュの宿泊予約もこちらで受け付けております。特産品の販売もしておりますので、皆様お土産などを購入される場合は、朝十時から午後六時までにお越しいただければと思います」


「まあ! マルティーヌ! 何て大きな時計なの!」


 ふふふ。ソフィア、ナイス! よくぞ気づいてくれました。


「こちらの大時計は後見人のフランクール公爵閣下に我が儘を言って製作していただいたものになります」


 あ、もうとっくに五時を過ぎているね。予定よりちょっと押してしまった。


「ねえ、マルティーヌ。中を覗いてみてもいい?」

「もちろんよ。では、皆様もどうぞ」


 四人が同時にわらわらと建物に入って行く。

 何だかバスでお土産屋に乗り付けた観光客みたい。


 壁面の棚には、焼き菓子となけなしのケチャップが置いてあるけれど、赤い何かが入っている未知の瓶は、誰も手に取ろうとしない。

 これは食事でケチャップを食べてもらわないと駄目みたいだな。


 壁には大きな観光案内図を貼ってある。

 オーベルジュを起点に、さっきの森とか、オットーのチーズ工房とかがイラストで描かれている。

 オットーのチーズ工房は、将来的に『工場見学』のようなツアーができるように改築させてもらう承諾を得ているのだ。


 製造ラインをガラス越しに見たり、試食をしたりするスペースを作ったりと、色々協力してもらうことになっている。

 近くで放牧している牛も見られるしね。


 イラストはヴィッキーに描いてもらった。

 今は全部手書きの地図だけど、ゆくゆくは手頃なサイズのパンフレットになるよう、カラーで木版印刷をするつもり。

 前世の浮世絵みたいなやつね。


 でもレイモンからストップがかかっているんだよね。

 この世界では木版印刷は高価な物だから。

 そんな物をフリーペーパーみたいに配布するって言ったら、めちゃくちゃ驚かれた。


 一応、私の世間知らずということで落ち着いたけれど、気をつけなくては。

 でも、配布ではなく常設で掲出するための物なら作ってもよいと言われたので、職人さんに色ごとの板を彫ってもらうことになっている。

 ふふん。まだまだやることがいっぱいあるのだ。



 ……ん? なんでローラが合図を出しているんだろ?

 わっ。そうか。時間が押していたんだ。


「ええと。皆様。そろそろオーベルジュに戻りましょうか」


 勝手に寄り道をしておいて急かすなんて減点だね。ここにサッシュバル夫人がいなくてよかった。




 結局、さすがに目と鼻の先にあるオーベルジュに馬車に乗ってまで移動することはないと、全員歩いて戻った。

 何かすみません。



「では皆様、夕食は七時開始ですので、それまでに一階のレストランにお集まりください。本日は普通のお客様として宿泊をお楽しみいただくとのことでしたので、私は遠慮させていただき、あえて皆様だけのお席とさせていただいております。ご一緒できないのは寂しいですが、どうぞごゆっくりお過ごしください」


 夕食でケチャップを食べたら王都に戻って吹聴してほしいな。


「また、街歩きと違い森の中を歩かれましたので、おそらく足にご負担がかかっていると思います。よろしければお部屋にて足のマッサージをさせていただきますが、いかがでしょうか」

「マルティーヌちゃん。マッサージ? とは何なのかしら? 招待状に添えられたオーベルジュのサービスの説明を読んでもよくわからなかったのよ」


 あらら。説明文だけじゃ伝わらないか。よっし。これもイラスト付きの説明を作ろう。


「はい。書物で読んだ知識なのですが、足をお湯で温めたあと、優しく撫でるようにさすると、血行が良くなり疲れがとれるらしいのです」


 従業員には、ローラの足をマッサージしてもらった後、密かに、膝裏やふくらはぎも、老廃物を流すイメージでよく揉んでもらうよう伝えてある。

 湯浴みの簡易版だと思っているなら、チッチッチッ。その違いにすぐ気づくはず。


「まあ。ではせっかくなので私とソフィアはお願いするわ」

「私とルシアナもお願いしようかしら」


 目新しい匂いがしたのか、ルシアナ母娘も負けじと希望してくれた。


「では皆様のお部屋の時計で、六時に使用人をやりますね」


 オーベルジュに到着して、やっと部屋に戻ろうかというところで引き留めてくどくど喋っているけれど、伝えるべきことは伝えておかないとね。


「長々と退屈な説明ばかりで申し訳ないのですが、あと一点だけ。今日は特別に、深夜の警護に我が家からも騎士を出す予定です。皆様、アレスター・アダムスはご存知でしょうか?」


 大人たちには広く知られた存在だと聞いたので、思い切って名前を出してみる。

 もちろん最初はディディエにお願いしたけれど、なぜか返事はアレスターから、「任せとけ!」って言われた。

 まあ、そうなることは半ば覚悟していたんだけどね。


「まあ! ええ。もちろんですとも。そういえば彼はモンテンセン伯爵に仕えていたわね。あら! じゃあ今はマルティーヌちゃんの騎士なのね」


 げっ。なんか……ちょっと嫌かも。

 私の騎士はリエーフとシェリルだと言いたい。けどなぁ。この流れで否定はできないよねぇ。


「ええ。そうなのです。アレスターと彼の部下も参りますので、皆様がお連れになった護衛の方とは時間調整等の打ち合わせを別途していただければと思います」


 これでようやく解散だと思ったら、顎をグイグイグイッと上げたルシアナママになんとなく見下されたようなことを言われた。


「あの少年もマルティーヌ様の騎士のようですが、彼は夜間の警護には含まれていないのですよね?」

「え? ええ」


 ……は?

 その顎の角度――じゃなくて顔つきと声色から、どうも嫌味っぽいことを言われたのだとわかった。

 でもリエーフの何について言われたんだろう? 一目で平民ってわかったから?

 平民の騎士なんて珍しくないよね。若すぎるって指摘しただけ?

 貴重なイケメン騎士なのに。

 それにしてもマナー違反じゃない? くぅー。


 あれ? ソフィアとソフィアママが微妙な顔をしている。二人には通じているみたい。

 とりあえず解散だ、解散!


「それでは皆様、夕食と明日の朝食を楽しみになさってください。オーベルジュは食事がメインですので」


 四人は口々に、「今日は楽しかった」的な挨拶をして、オーベルジュへと入って行った。

 ルシアナママとソフィアママが、お互いに譲り合いながらも自分が先に行こうとしている。

 何とも不思議な競争だ。


 あ、ソフィア! ちょっと待って!

 私が、「立ち話カモン!」の視線を送ると、ソフィアが無事にキャッチしてくれて、さささと来てくれた。


「ごめんね、ソフィア。どうしても聞きたいことがあって」

「あそこに立っているあなたの騎士についてでしょ?」

「そう! さっき変な空気になったけれど、リエーフの何について言われたのかわからなくて」

「あー、そうなんだ……。その、ちょっと来て」


 ソフィアはそう言うと、私の手をとってローラからも離れたところで、コソコソと内緒話のテンションで教えてくれた。


「あのね。詳しい話は後で侍女にでも聞けばいいけれど、簡単に言うと、白髪赤瞳って、おとぎ話に出てくる『流浪の民』の特徴なのよ」

「おとぎ話? 流浪の民?」

「そう。だからその話は後で聞いてね。でもあまりよく思われていないらしいわよ?」

「え?」


 民族的な理由で? 何それ?

 そういえば、過去に何度かリエーフ自身も自分の見た目がどうとか言っていたような……?


「とにかく。私はあんまり気にしないけれど、これから先も何か言ってくる人はいるかもね」

「そうなのね。ありがとう、教えてくれて」

「じゃあ、また明日ね!」

「うん。夕食のデザート楽しみにしてね!」

「わあ! じゃあ私もマッサージしてもらうからまたね!」

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「つぎラノ」への投票ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
>壁面の棚には、焼き菓子となけなしのケチャップが置いてあるけれど、  赤い何かが入っている未知の瓶は、誰も手に取ろうとしない。  これは食事でケチャップを食べてもらわないと駄目みたいだな ふむ、転生…
え~。日本人からしたらまだ白髪赤瞳の方が遺伝子的にアルビノなんだって納得できるけどなぁ。 民族的なこだわりはただの偏見と差別だからなぁ。嫌なもんですねぇ。
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