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161 森林整備①

 お茶会までにオーベルジュ関連の初期段階の構想は実現しておきたくて、休講日の今日は目星をつけていた森林に行くつもり。

 今日は贅沢にリエーフとシェリルの二人の護衛付きだ。馬車に乗るのはローラと私の二人だけど、このメンバーで初の遠出となった。

 シェリルは私がパンツを履いているのを見て驚いていたけれど、さすが侯爵家で勤めていただけあって、一瞬で私とは違うデフォルトの顔になった。


 馬車が出発すると、「ヤッホー!」と叫びたくなった。


「マルティーヌ様。本当に行き先はあの森でよろしいのですか?」

「ふふふ。オットーのチーズ工場へ行く途中の森が明るくていいと思ったのよね」

「森にそれほど違いがあるのでしょうか? チーズを食べた満足度が記憶に残っているだけでは?」


 ムッ。なんですって?

 ローラったら嫌ぁねぇ。知らない人が聞いたら本気にしそうなことを言わないでよ。


「そんなことで私の記憶が形成されると思ったら大間違いよ。手入れのされていない森は木々が鬱蒼と茂って日光が届かないでしょう? あの森はちゃんと伐採されていたし、起伏もなさそうだったからちょうどいいと思ったのよ」

「その……貴族のご令嬢方が歩かれるのにちょうどよいと……?」


 うーん。森林浴の前に、森を歩くというのが謎行動な訳ね。

 それは思いつかなかったわ。

 令嬢って外に出ない生き物なのかな?

 でもソフィアはしょっちゅう出かけているって手紙に――あ、全部買い物だった。そういうことか。

 でもそれなら、やっぱり体を動かさなくっちゃね!

 王立学園にも体育の授業なんてないし。


「子どもの頃から体を動かすのが当たり前だったローラには不思議に思えるかもしれないけれど、高位貴族の令嬢ともなると、そうそう気軽に外に出られないし、出たとしても馬車を使うから体力がないのよ」

「はぁ」


 そんな、「いったいどこが?」っていう目で私を見ないでよ。

 まあ私はちょこまかと視察したり、内緒であれこれ製作したりして体を動かしているけれど、絶対に私みたいなのは例外だと思う。


「それに都会暮らしの人間は土の上を歩かないでしょう?」


 これは前世でもそうだった。

 動物に触るだけでオキシトシンが分泌されて癒されるのは有名だけど、確か土いじりでも同じように分泌されるんじゃなかったっけ?

 やっぱ土と木って、人間が生きる上で必須の物だよね。

 フィトンチッドの効果ってわかりにくいかもしれないけれど、きっと学園入学前の今の時期ってストレスが溜まっていると思うから、ソフィアたちも感じ取ってくれるんじゃないかな。

 よっし! いっぱい癒してあげよう!


「とにかく、貴族にとっては体験したことのない、とても新鮮で楽しい経験になると思うの」




 とか言っているうちに到着した。

 シェリルの手を借りて馬車から降りると、青々と葉の茂る木々が見えた。

 さてと。どこから入るのがいいのかな。ここからでも入って行けそうだけど。

 こういうときは経験者に頼るのが一番だよね。


「ねえ、リエーフ。慣れない人間が森の奥に行くとしたら、どこから入るのがいいかしら?」


 山とか森とかでサバイバル訓練をしていたんだよね?


「はい。マルティーヌ様が歩かれると思い、この辺りが一番良さそうでしたので、こちらにご案内いたしました」


 やっぱりそうか。それでここに馬車を止めるように誘導したんだね。


「ありがとう。じゃあここから始めることにするわ。そうだ、シェリル。悪いけれど小枝を集めてきてくれない?」

「小枝ですね。かしこまりました」


 うんうん。主人の命令に理由など聞かない。すぐさま行動に移せるのは騎士って感じだな。


「じゃあ。少しだけそれっぽくするために、三段くらい階段状に土を整えるかな。ふっふふん」


 あー。鼻歌が出ちゃう。

 私にとっては久しぶりの土いじりだからね。ガーデニングとかじゃなく正に言葉通りの。

 シェリルにはまだ土魔法が使えることしか伝えていないから、彼女の前では土と木だけを使って遊歩道を作る予定。

 まあ自然のままが基本だから元よりそのつもりだったけどね。


「ふっふふーん。ふーんふん」


 森の奥に誘うように、最初の一歩となる一段目は幅も三メートルくらいとって、二、三歩で二段目に上がれるくらいにしておこうかな。

 二段目は一段目よりも少し幅も奥行きも狭くして、三段目は更に狭くして遊歩道の幅に揃える。

 おっと。ローラが手巾を構えて待っている。ここで手を上げたら捕まっちゃうな。

 一回一回手を拭いていたらキリがないよ。

 ……よしっ。走ろう!


「あ! マルティーヌ様!」

「お、お待ちください!」


 リエーフには二歩目で並ばれたけれど、ローラは置いてけぼりにできた。

 でもすぐに追いつかれるだろうから、早く次の現場を見つけなきゃ。

 なだらかな道ならそのままでいいんだけど、勾配がキツいところは入り口と同じように階段状に登りやすくしておきたい。


 はあっ。はあっ。走るのはやめよう。結構キツい。

 ん? この辺りがそうかも。


「はあ。はあ。さすがに広場を走るのと違って、足にくるわね」


 あーこのまま地べたに座りたいよー。

 そんなことをするとローラの怒りに燃料を投下することになるので、お行儀良くしゃがんでそっと地面に触れる。

 ジャジャーン。どうだ。登りやすいように奥行きを狭くして十段作ったよ。


「マルティーヌ様。お手を」


 くっ。仕方がない。一旦拭かせてあげよう。

 両手をローラに預けているとシェリルが下りてきた。

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