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【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第二章 領地を改革します

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135 春の大運動会⑩ 表彰式

 お針子部隊が仕事を終え、あまりに汚れが目立つ子は顔を拭かれたりして、ようやく表彰式に移れる。

 私はその間に司会者席で一人お茶を飲んで、少しだけ落ち着くことができた。

 公爵が何かを言いたそうにしていたので、来賓席には行けなかったのだ。

 まあ、お小言の一つや二つは甘んじて受け止める覚悟はあります。ただ、運動会が終わって領民たちを送り出してからにしてください。



 表彰式を前に、使用人たちが総出で子どもたちを整列させている。

 私に名前を呼ばれる予定の子どもは最前列にいるはず。

 表彰式の司会はキーファーに任せて、私は賞品の授与に専念することにした。



「フランクール公爵閣下並びにご来賓の皆様。ここからは僭越ながら私がモンテンセン伯爵に代わって司会を務めさせていただきます」


 キーファーが来賓席に向かって恭しく首を垂れた。

 それから整列した子どもとその後ろの世話役たちに向かって話し始めた。


「モンテンセン伯爵主催の『大運動会』に参加された皆様。今日一日楽しめましたでしょうか? モンテンセン伯爵は次々と新しい試みを始められていますが、今日の競技で一等になった方への賞品も、これまでとは違ったものになります。どうか楽しみにしていてください。それでは表彰式を始めたいと思います」


 任せて安心のキーファー。何でもできるんだね。


「えー、では、最初の競技『お絵描き』の優勝者、ヴィッキー。前に出てください」


 おさげを三つ編みにした少女がチラチラと周囲を窺っている。


「ヴィッキー。モンテンセン伯爵が表彰してくださるので、伯爵の前まで進み出てください」


 ナイス、キーファー。

 やっとヴィッキーが私の前まで来てくれた。


「ヴィッキー。おめでとう。あなたが一番上手だったわ。それを証明する物を作ったので受け取ってちょうだい」


 ふふん。表彰状の代わりに、薄板に競技名と優勝者、最優秀だったことを書いたものを用意したのだ。

 さすがに子ども相手のお遊びに紋章を入れるのはどうかということでレイモンに反対されたので、隅に赤いダリアを書いて少し豪華な感じにした。

 もちろん絵心のない私は描けないので、前世の記憶やタウンハウスの庭のダリアを一生懸命思い浮かべて、成形魔法で薄板に写したのだ。


 ヴィッキーは薄板の表彰状を受け取ると、小さく「うわあ」と声を出して破顔した。


「そして、副賞として鶏一羽を差し上げます」


 私がそう告げた途端に、ものすごい歓声が上がった。

 ええと。鶏一羽だよ? そこまで興奮するような賞品じゃないと思うけど。豪華だった?


「はい。これが引き換え券です。この券を持っていけば、どこでも鶏一羽と交換できます。詳しい使い方については、今日引率してくれた世話役の方に聞いてね。都合のいいときに、この引き換え券を使ってくれていいのだけれど、なるべく十日以内に使うようにしてね」


 ヴィッキーは引き換え券を受け取るとぺこりと頭を下げて後ろの方に逃げて行った。

 ま、まあ、いいか。

 

 キーファーも「あ」と言いかけたのを引っ込めた様子。


「では次。『謎解き』の優勝者、イアン。前に出てください」


 イアンはヴィッキーよりも小さいのに、臆することなくちゃんと前に出てきた。

 同じように薄板の表彰状を渡してから、副賞を発表する。


「副賞は、豚肉です」


 最初は豚一頭をあげようと思ったけれど、さすがに大金なのでそれはあげ過ぎだとレイモンに呆れられてしまった。

 引き換え券の方に大人六人分に相当する量と書いておいた。

 これにも大歓声だ。ちょっと嬉しい。

 イアンが薄板の表彰状と引き換え券を受け取って後ろに下がると、キーファーが続けた。


「次、『味当て』の優勝者、ロディ。前に出てください」


 おぉぉ。大きな少年だ。最年長だろうか? 後で採点内容をアルマに聞いておこう。


「おめでとう。副賞は十種類の野菜です」


 これまた歓声が上がる。もう何でもいいのか?


「次。『五十メートル走』の優勝者、フィル。前に出てください」


 フィルも子どもたちの中だと年上の方だね。


「おめでとう。副賞は牛肉です」


 今日一番の大歓声だ。フィルも飛び上がって喜んでいる。牛一頭じゃないよ? 勘違いしないでね。


「では最後に、『障害物競走』の優勝者、フランコ、ジミー、ロッキー、ビクター、テッド。前に出てください」

 

 一人に決めなかったから、さっき陰に隠れてこそこそと薄板を四枚追加する羽目になった。


「おめでとう。皆さんには副賞として、それぞれに卵二十個を差し上げます」


 卵でも歓声が上がったので一安心。

 これだけしょぼいと思われたら表彰された五人が可哀想だもんね。


「では最後に、モンテンセン伯爵より閉会の言葉をいただきます」


 おっと。最後の大仕事だ。


「皆さん。まずは私が企画した運動会に参加してくれてありがとう。初めてのことで戸惑ったと思いますが、楽しんでくれましたか? 私は皆さんが元気よく活躍する姿を見ることができて、とても嬉しかったです。また来年か再来年にでも第二回を開催したいと思います」


 毎年開催か隔年開催か。とにかく定期的に開催したいなぁ。


「帰る前に、自分で作ったクッキーとお土産のパンを忘れずに受け取ってくださいね。後ろに並んでいる大人に、腕に巻いた布の番号が見えるように渡してください。世話役の皆様もご協力ありがとう。この後の送迎もどうかよろしくね。それでは皆さん、気をつけて帰ってください」


 子どもたちは一斉に、焼き上がったクッキーを持っている使用人たちの方へ駆け出した。

 いや、早い者勝ちじゃないんだけどね。

 まだ競技中の感覚なのかな?


 キーファーたちは世話役と一言二言交わしながら馬車への方へと案内している。

 私は司会者席に座り、訓練場から人々が出ていく様子を眺めていた。

 大半が出て行った頃、三時の鐘が鳴った。



 雲一つない空は底抜けに青くて、時々頬を撫でる風が気持ちいい。

 まあ、色々とあったけれど、春の大運動会は大成功じゃない?

 第二回は、大人も参加する『借り物競走』とか、やってみたいなぁ。

7月16日(水)に「転生した私は幼い女伯爵」の3巻が発売されます。

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