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【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第二章 領地を改革します

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118 顔役たちと新年の挨拶

 翌日は午後のお茶の時間に領地の顔役が集合した。

 ホールにはドドンとビュッフェ台が置かれ、ケイトとアルマの力作がこれでもかと並べられている。

 昼食を食べ損なった人向けに、デザートだけでなく軽食も用意してもらった。

 美味しそうな料理を前にしたら気もそぞろになるのが人の(さが)。早く食べたいよね。こういうときの挨拶は短くパパッと終わらせないと。


「新しい年を迎えて、こうして皆さんが一堂に集まることができたことに感謝したいと思います。昨年は皆さんのお陰で我が領はさしたる問題もなく、平和な一年となりました。今年は更なる発展に向けて私も力を尽くすつもりですが、一人で出来ることには限りがあります。ここにいる皆さんの協力は欠かせません。たびたび助力を乞うことになると思いますので、どうかよろしくね」


 言い終わってみんなの顔を見ると、温かい拍手が湧いた。

 平民の中でも豊かな生活を送っている人たちだからか、ピーッと指笛を鳴らしたり、「ヒューヒュ」と(はや)し立てるような人はいなかった。


「さ、固い話はこれくらいにして、新年のお祝いということでまずは乾杯しましょう! 皆さん、グラスはお手元にありますか? 準備はいいですね? では、かんぱーい!」


 私が搾りたてのジュースの入ったグラスを掲げると、顔役たちもそれぞれ持っているグラスを掲げて、口々に「乾杯!」と破顔した。

 グラスの大きさで飲めるかどうかわかる。中には大きなジョッキを持っている人もいる!


 みんなビュッフェ台に直行するのかと思ったら、一斉に私の周りにやってきた。

 おいおいおいおい。何? 何? 何?

 後ろの方にいて出遅れた人たちだけが、遠巻きにチラリと視線をよこしてから、諦めたようにビュッフェ台へと向かっている。


「マルティーヌ様。私たちからもお礼を言わせてください」


 へ? 日焼けした屈強なご老人といった感じの人が、ニカッと白い歯を見せて笑って最初に口を開いた。


「あの薬には大変助けられました。特に痛み止めは本当によく効くので、子どももすぐに泣き止みました。これまでは我慢するしかなかったのに、まさか領主様から薬を支給していただけるとは――本当にありがとうございます」


 い、いやー。どうなんだろう。褒められても微妙だなあ。これまでがこれまでだったからねー。

 でも喜んでくれているようなので、習得したての『微笑』で答えておく。

 すると、次々に我も我もと喋りだした。


「あの貯水槽とかいうのには驚かされました! 雨が降るたびにハシゴを登って中を覗こうとする者たちが列を作るので、それを止めるのが大変で――ああ、いえ、違います! みんな大喜びしています!」

「川に橋をかけてくださったお陰で行き来がしやすくなって、農作物の運搬も楽になりました。私はマルティーヌ様にお礼を言うよう集落のみんなから頼まれて来ました!」


 うわー。私、去年の冬に一生分の徳を積んだんじゃない?


「どうもありがとう。皆さんの生活を支えるのが領主としての私の仕事なのに、こんな風に感謝してもらえるなんて……やった甲斐があります。ああ、それよりも。まずは飲んで食べてちょうだい。お話はそれからにしましょう!」


 ――ということで。

 私の意を汲んだレイモンが、みんなをビュッフェ台に先導してくれた。


 それでもお酒を飲みながらだったり、お菓子をつまんだりしながらも、代わる代わる言葉をかけてくれる。


「私の集落は西の端になるのですが、私のところにも薬が届きました。これまでは何かと見過ごされてきたので、マルティーヌ様はワシらのことを忘れていなかったんだと、みんな本当に喜んでおりました。それに、マルティーヌ様から指示された通り、手を洗う習慣がつきました。もう汚い手で食べ物に触る者はおりません。はい」

「そうなのね。それはよかったわ」


「マルティーヌ様! 去年の収穫祭ですが、久しぶりに楽しめました! 祭りを復活してくださってありがとうございます!」

「マルティーヌ様! 聞いてください、マルティーヌ様が料理屋に卸されたあのケチャップというやつですが――」


 うんうん。わかった。わかった。もうわかったから。

 お酒が進むにつれて遠慮がなくなってきてるよね、みんな。もうほとんど、ちびっ子に話を聞かせるくらいの感覚になってない? いいんだけどね。

 私は何度もちゃんと『微笑』をセットできているか確認しちゃったよ。



 私の表情セット練習を見守ってくれていたローラは、私が表情を貼り付けながらもピキピキさせていたのに気づいたみたいで、お茶を持ってきてくれた。

 もちろんその前にレイモンが椅子を持ってきてくれていたけどね。


 大勢の大人たちに取り囲まれながら、そのど真ん中で一人座ってお茶を飲むというシュールな時間を過ごしたところで、今日のメインイベントを始めよう。



「皆さん、少しだけ静かにしてください。皆さんにお伝えしたいことがあるのです」


 ふふふ。聞いて驚け!


「春になったら競技大会を開きます。領内の子どもたちに大勢集まってもらい、色々な競技に参加してもらいたいと思います」


 ドヤ顔の私が惨めになるくらいに一気に静まりかえった。

 え? 伝わらなかった?

新連載「True Diary 〜消えたはずの想いは願いとなって〜」を始めました。

中編ですので完結まで短期集中連載の予定です。

よければのぞいてみてください。

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ピンクブロンド第二弾完結しました。*続編ではありません。
私が間違っているのですか? 〜ピンクブロンドのあざと女子に真っ当なことを言っただけなのに〜

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― 新着の感想 ―
伝わるわけないよね、なんの競技だよ、競技ってなんだよ、農家の子供は働き手なんだから、畑を耕すのが忙しいのに、そんなもんしてらんないよ、秋の収穫の後なら、多少は時間もあるかもだけどと 思われてた…
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