116 領地の年越しイベント
ちょっと短めです。
水曜日あたりに続きを更新できるかもです。
「年の越し方ですか?」
そう。
マルティーヌの記憶を探っても、これといった情報が無いんだよね。
だからローラに聞いている。
「……そうですね。新年を迎えると同時に夜の鐘が特別に鳴らされるのです。その日だけは鐘が鳴るまで起きていることを許されるので、私も幼い頃から頑張って起きていました」
へえ。カウントダウンこそしないものの、やっぱり起きて新年を迎えるんだね。
そして一年に一回、新年を迎えた合図に二十四時の鐘を鳴らす習慣があるのか。
普段夜更かしできない分、子どもにとっては楽しいイベントだよね。きっと眠たいのを我慢して鐘を待つんだろうな。
「家族みんなで起きて鐘の音を待つのね!」
「家族というよりも集落全体で、ですね。蝋燭代もばかにならないので、集落ごとに焚き火をしながらワイワイやっている感じです」
なるほど。外に集まっているのか。
まあモンテンセン伯爵領は南の方に位置していて、それほど寒くないからできるんだよね。他領はどうしてるんだろう?
他所のことはいい。肝心のお勤めについて確認しておかなくっちゃ。
「レイモン。それで、私は何かすることはあるの?」
公式行事についてはレイモンに振る。
日が変わる頃まで起きて、いざ新年を迎えたら『年越しイベント』みたいなものがあるのかな?
「明けましておめでとう!」とは言わないにしても、スピーチ的なものとか何かそういうのが。
「いいえ。特にございません。新しい年の最初の日が昇ったら、皆、教会に行きますので、その日はマルティーヌ様もフランシス司祭様にご挨拶いただくだけで大丈夫です。代表者たちから新年の挨拶を受けるはその次の日になりますので」
ふむふむ。元日は教会に行くだけで、顔役たちとの挨拶は二日なんだ。
「そうなのね。ねえ、この屋敷でも皆起きているんだったら、全員ホールに集まって一緒に鐘の音を聞くというのはどうかしら?」
レイモンがムムッと難しそうな顔をしたので、慌ててメリットを付け加える。
「薪の節約にもなるし、人がたくさんいた方が温かいじゃない?」
あ、ローラは目が輝いているね。大勢でワイワイって楽しそうだもんね。
「ほらっ、渡す物もあることだし。私は鐘を聞いたらすぐに休んで翌日の司祭様の挨拶に備えるから、いいでしょう?」
よし。公爵邸の猛特訓で会得した『微笑』からの『笑顔』を披露してみよう。上目遣いよりも効果があるといいんだけど。
「……それでは特別にマルティーヌ様のお席を整えまして、使用人たちは少し離れたところに集めるといたしましょう」
やったー! サンキュー、レイモン!
軽食も準備しなくっちゃね。お酒も振る舞いたいな。
朝番の使用人たちは早めに切り上げるだろうけれど、夜番の人たちは朝日が昇るまでニューイヤーパーティーを楽しむかもしれない。
まあ何にせよ、一年に一回のおめでたいイベントだから、ちょっとくらい羽目を外しても大目に見てあげてほしい。




