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17 心臓に悪い

 クレアが転入してきてから、数日が経過していた。


僕は相変わらずジュリオにこき使われ、学校では癒やしの時間を過ごしていた。

クレアはすっかりクラスに馴染んだようで、女生徒達と過ごすようになっていたけれども……僕はあることを危惧していた。



「おい、またジュリオ様は女生徒達に囲まれてるぜ」


休み時間にマイクがジュリオの席を見てぼそりと言った。


「全く、相変わらずだよな。クラスの半分近くの男子生徒から反感を買っているのに気づいていないんじゃないか?」


ニールが口を尖らせている。


「あははは……そ、そうかもね……」


引きつった笑いで曖昧に返事をするも、僕はジュリオが男子生徒達から反感を買っていることなど、どうでも良かった。何故なら今目先の悩み事で精いっぱいだったからだ。


その目先の悩みというのが……


「そう言えば、新しく転校してきたクレア様は、随分ジュリオ様に興味があるみたいだな」


ギクッ!!


不意にマイクが心臓に悪いことを言ってくる。


「あ、お前もそう思ったか? 随分熱心にジュリオ様を見ているけれど、かといって話しかけるような素振りも無いし……何だか不自然だ」


ニールが同意する。


「全くその通りだ。ジュリオ様を見つめてはいるけれど、別に恋い焦がれるような視線じゃない、むしろ何だか軽蔑しているような視線にも……ってクリフ! どうしたんだよ! 顔が青くなってるぞ!」


マイクが驚いた様子で僕を見る。


「え? そ、そ、そうかな……き、気のせいだよ……」


「気のせいのはずないだろう? 声だって震えているじゃないか」


ニールが言った。


その時――


「クリフ様」


背後からクレアが僕を呼ぶ声が聞こえた。


「は、はい!」


慌てて振り向くと、神妙な顔つきのクレアが立っていた。やっぱりだ‥‥‥やっぱり来てしまった!

実は先程、ジュリオを見た時に、不意に先読みの力が発動したのだ。それがまさに今の場面と言うわけなのだけど……肝心なことはクレアが僕の所にやってきた、そこまでの先読みで終了していることだった。


この先……何が僕を待ち受けているのか分からない。まさに、未知の世界だ。


「少し、お話したいことがあるのですが……よろしいでしょうか?」


「は、はい! 勿論です!」


相手は伯爵令嬢であり……ましてや、ジュリオのお見合い相手。さらに対応次第では近い将来、彼女はジュリオのせいで自殺未遂をして僕は連帯責任で監獄行きになるかもしれない。

僕には彼女の誘いを断るという選択肢は存在しなかった。


「それでは……場所を移しましょう、すみません。クリフ様をお借りしますね」


クレアはニールとマイクに声を掛ける。


「ええ、勿論です!」

「お構いなく!」


こうして僕はニールとマイクに見送られながらクレアに連れられて教室を出た――

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