表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クリスマスのプレゼント

作者:

 十二月二十四日、家に電話がかかってきた。


 ぼくへの電話だ。ママにばれて電話に出てみると、相手はサンタさんではなかった。


きみしいのは、プロ野球のホームランボールだね?」


 その通りだ。ぼくはサンタさんにおねがいした。


 ある選手が今年のシーズンに打った、年間新記録のホームランボールが欲しい。シーズン最多のホームランボールだ。


じつはね、我輩わがはい大泥棒おおどろぼうなのだ。サンタさんが君へのホームランボールを置いていったあとに、そのボールを我輩がいただくことにした」


 まさかの犯行はんこう予告よこくをして、電話は切れてしまう。


 ぼくはママに今の電話の内容をつたえると、


「パパの声っぽかった」


 すると、ママは素早すばやくび左右さゆうにふって、


「いいえ、あれは絶対ぜったいに大泥棒。ママもむかし、同じことがあったから知ってる。これ、ホントの話。今からでもサンタさんに、べつのプレゼントをお願いした方が」


 ママが色々言ってきたけれど、ぼくが欲しいのは年間新記録のホームランボールだ。これだけは絶対にゆずれない。


 そして夜になり、やがて二十五日の朝になった。


 目覚めざめたばかりのぼくは、急いで確認する。


 クリスマスツリーのそばに、ホームランボールは見つからなかった。


 わりにメモが置いてある。


 大泥棒からのメモだ。犯行に成功したというメッセージ。


 何てことだ! ぼくの大事なクリスマスプレゼントがぬすまれてしまった!






 十数年後、俺はプロ野球選手になっていた。


 これからシーズン最後の試合がある。


 ここまでに打ったホームランの数は、年間最多記録と同じだ。あと一本打てば、記録を更新こうしんすることができる。


 極度きょくどのプレッシャーの中、試合が始まった。


 俺は何回か打席に立つものの、ホームランが出ない。


 で、これがおそらく最終打席だろう。


 ここで俺のバットが目をます。ツーストライクにまれてからの、執念しゅうねん一撃いちげきだった。


 快音かいおんの直後に、球場全体が歓声かんせいつつまれる。新記録達成の満塁まんるいホームランだ。


 そのホームランボールは球場スタッフが回収かいしゅうして、ベンチまで持ってきてくれる。


 ボールを受け取りながら俺は考えた。


 十数年前のクリスマス、あの年のプレゼントは盗まれてしまった。年間新記録のホームランボールだ。


(それを、こんな形で受け取ることになるなんて・・・・・・)


 大泥棒とその協力者きょうりょくしゃ、あの二人には心から感謝かんしゃしたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ