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魔法使いが愛したロボット  作者: 駿河留守
第1章 魔法使いとロボット
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2話 - ロボット、働きに出る 前編⑥

「一旦、落ち着け。深呼吸だ。吸ってー、吐いてー」

 ハチに促されるようにイズミは深呼吸をしました。少し落ち着いたみたいですね。

「危なかった。また、隣の住民が来るなんてな」

 今回も宮城の記憶はイズミによって吹き飛ばされているので安心です。

 イズミは宮城の記憶を消し飛ばして軽い洗脳をかけて何事もなかったかのように宮城を部屋に戻しました。その隙にハチはバラバラになった自分の体をつなぎ合わせました。それからイズミを落ち着かせました。

「あーあ。体中にケチャップが…」

 ハチは雑巾で自分についてしまったケチャップをふき取ります。暴走した足がキッチンをぐちゃぐちゃにしてしまいました。その足がたまたまケチャップに踏みつぶしたせいでケチャップが飛び散ってしまいました。そのケチャップはイズミにもかかったので、あたかもイズミが成人男性一人をバラバラにして段ボールに詰めているという恐ろしい光景になったしまったというわけです。

「生活が…生活が…」

 イズミは遠くを見ながらつぶやいていました。放心状態です。

「まぁ、落ち着いて風呂でも入れ」

 と少しでも不安を和らげようとします。

「え?お風呂?」

 突然、イズミは走り出して風呂場を向かいました。勢いよく風呂場の戸を開けて湯船にたっぷりのお湯を見て絶句しました。

「この!ポンコツロボット!」

 シャンプーが飛んできました。突然、飛んできたシャンプーでしたが、ハチは難なくキャッチしました。それよりもなぜかイズミは怒っています。

「何勝手にお風呂なんて入れてるの!」

「え?だって、イズミが冷え切ってたから」

 外で凍えている人を助けたいと思うのならば、お風呂を沸かしてあげるのは自然な流れです。

「そんな理由で!?」

 驚愕していますが、驚愕する意味が分かりません。

「ハチ君は知っているかい?」

「何を?」

「湯船にお湯を張る意味を…」

「浸かるためじゃね?」

「そういう意味じゃない!」

 リンスが飛んできましたが、これも難なくキャッチします。

「光熱費だよ。ガス代、下水道代、水道代。15リットル分のお湯を作るのに大量の水とガス。それに高いのは下水道代だよ?どれだけかかると思ってるの!」

 そんなことはハチが知るはずもありません。

「もう、何てことしてくれるの…。私がお風呂に入るときは魔法で水と熱でお湯を作ってるのに。それだとただなのに」

 魔法って便利ですね。

「その、あれだ。…悪かったよ」

 悪気はなかったのは確かです。

「働け」

「ん?」

「この家にただで居候できると思ったら大間違いだぞ」

 魔法を使っていないのにものすごい圧力です。思わず、ハチも後ずさりしてしまいます。

「で、でもよ。俺は追われている身だ。そんな人前に出ることなんて」

「ニートか!貴様は!」

「いや、ロボットだよ」

 論点がずれていません?

「いいから働けー!このままだと私のお金が無くなって飢え死にする!働け!働けって!働かんかぁぁぁぁい!」

 子供みたいにじたばたします

「働け!働け!働け!働け!働け!働け!働け!働け!」

「ちょっと落ち着けって」

 暴れるイズミをなだめようとします。すると三度玄関が開きました。

「ちょっと、騒がしいよ。隣の部屋まで揺れるんだけど」

「うるさい!」

 イズミは魔法で衝撃波を作って宮城を吹き飛ばしました。

「ふでふ!」

 宮城は部屋の外に吹き飛ばされました。次いで記憶も飛ばされているので、何をされたか覚えていないことでしょう。

「こ、こうなったら」

 邪気がむんむんと立ち上げます。表情が見えなくなりました。

「力づくでハチ君を…」

 瞳の色が変わりました。

 あ、これは。やばい。殺される。

 そう本気思いました。

 ロボット三原則に従って判断をするハチは自らを守るために選択しました。現状は隠れることが自らの身を守るのに最適であるという判断でしたが、それが変わりました。

「わ、分かったよ。働けばいいんだろ!働けば!」

 その言葉を聞いたイズミの邪気がスーっと引いていきます。

「言ったからにはちゃんと働きなさいよ!」

 と念押しされました。

 わかったふりをするのは難しそうです。

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