2話 - ロボット、働きに出る 前編⑤
どっしゃーん!
がっしゃーん!
バタバタどーん!」
「なんか隣が愉快ですね」
瓶底眼鏡に寝癖でぼさぼさの髪にやせ細った体の男。イケメンですが、イケメンには見えません。
彼の名前は宮城と言います。部屋はとても散らかっています。片付けましょう。
食べ終わったコンビニ弁当の容器やカップ麺の容器が雑に置かれていて畳まれていない服が山のようになっていて、ゴキブリのような害虫が出てきても文句言えない状況です。不潔は女の子にもてませんよ。
そんなゴミ屋敷に住んでいる彼ですが、住んでいる部屋はイズミの隣の部屋です。イズミは苦情をつけてもいいレベルで汚い部屋です。
「せっかくいい感じに漫画の構想が浮かんでたのにな…」
彼は漫画家志望の35歳です。意外とおっさんです。
いい加減あきらめた方がいい年ですが、そんなこと彼は気にしていません。というか痛いレベルです。さっさと諦めた方が彼のためです。
いい構想が浮かんでいたのに邪魔されたから浮かばなくなったのは言い訳です。だから、漫画家になれないのです。ハローワークに行った方がいいですね。
漫画家になれないことはさておいてこのまま隣の部屋でドタバタ騒ぎをされるのはさすがに近所迷惑です。
「たぶん、友達とはしゃいでいるのでしょうね。珍しい」
と女子高生同士がきゃっきゃっ、ウフフ、みたいな光景を想像しながら部屋を出て隣の部屋をノックします。気持ち悪いですね。
「おーい。騒がしいぞー」
しかし、応答するどころからドタバタがより一層派手になります。はしゃぎすぎて声が聞こえていないのかもしれません。
おもむろにドアノブに手をかけて引くと扉が空きました。
30歳中盤のおっさんが、女子高生がひとりで住んでいる部屋に入るのもどうかとは思うけど、注意しないと下の住民にも迷惑がかかる。ここは年上のお兄さんとして注意すべきだ。
と決意を胸に扉を開けると———。
血だらけのイズミが血だらけの手足を段ボールに詰め込んでいました。
「お、おまわりさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
と叫んだところで宮城は意識を失いました。