6ー4 宇宙、夢中、無重力 その9
家庭の事情で執筆できませんでした。
ぼちぼち復帰します。いのそらん
続けて、
「飛翔体ハ1射目同様、実弾ミサイルデス。着弾予測ハダミーB」
ミゥの分析が音声とモニター上の視覚情報で報告される。
声には出さないが、全員から安堵のため息が漏れる。
カレンが管制室で画面の指示に従って、補足情報を追加。
「ダミーBに着弾確定。18秒後に着弾だ。また揺れるぜ」
声と同時に、画面にミサイル予測進路が表示される。
徹との訓練は生きており、ここまでは流れるような戦闘が継続されている。
モニター上にアラートが表示され、再び船体が揺れる。
モニター上の電磁バリア表示は、ダミーB69%、SWAN号が91%に減少したことが映し出された。
先ほどと若干バリアの損耗率が異なるが、誤差の範囲なのだろう。
「反撃しなさい!」
舞の指示が走る。
「おいよ」
カレンが、返事と同時に、画面上の選択肢を次々と選んでいく。
ミゥから敵艦β位置座標を受け取り、即座にミサイルを発射する。
「SWAN号ハ、コノママ位置固定。ダミーAトBヲ前二展開」
ミゥが隊列の変更を告げる。
モニターにも隊列変更後のシルエットが表示され、完了までの時間が表示された。
モニター上の敵艦影がさらに1機追加される。
「でっかいの出て来たぜ。こいつはδ(デルタ)だ」
カレンが敵性体の認識コードを定める。
先ほど同様にモニター上の大型艦の上にδと表示される。
「こいつが、敵の親玉かにゃん?」
玲華が舞に話しかける。
「そうでしょうね。明らかに商船といった感じのサイズですわね」
舞が返答する。続けて、
「ミゥ。δの商船登録は確認できないかしら?」
ミゥに尋ねる。
「船体登録ハ確認デキマセン」
ミゥの返答を聞いた茜がコンテナの中から、
「でも、それはおかしいですよね。だってギガスペースラインに突入するには必要なのですよね?」
舞に聞き返す。
茜が話を始めると、モニター内にコンテナで待機する茜とチャイが小窓で表示された。
舞は一瞬『かなり細かい配慮までされているシステムだこと』と独り言ち、それから気を取り直したように、
「もちろん、公社が管理するゲートを通過するためには船体登録が必要となりますわ。でも、財閥や企業の農業プラントなどの資源コロニーに設置されているプライベートゲートを使用する場合は、運航予定の提出だけが義務付けられていて、いくらでもやりようはあるのよ・・・」
と、説明を行った。
「でも、それでもおかしいにゃあ?だって、あの大きいのはSWAN号の前で順番待ちしてたはずにゃん?それだとエデンの公社のゲートを使ってるにゃん?」
今度は玲華が疑問を口にする。
「だよね?姉御。徹が大きい船が前にいるから次の出向が遅くなってるって説明してたよね?」
チャイもコンテナの中からモニター越しに会話へ参加する。
「そうね。実際に商用船の場合は、エデン内には入らずに、搬入ゲートに接舷するだけでトンボ帰りをする場合もあるのよ。その場合は、エデンでの許可は要らず、私的なゲートを使用する際の航行表の提出だけで済んで、決められた時間通りに決められた許可番号で通り過ぎるだけでいいのよ。それでも本来は許可されている船体と通過する船体が同じものであるかどうかは確認するはずなのだけれど・・・。徹さんが言うように、相手はゲート突入の順番に干渉できるほどの力を持っている相手なのであれば、そのぐらいのお目こぼしは簡単なのでしょうね」
「うーん。難しいけどわかった」
舞の返答にチャイが頷く。
「それでは舞さん、相手は徹さんが予測しているように、かなり大物ってことですよね?そもそもが、私的なギガスペースライン突入ゲートを保有しているほどの相手なんて数えるほどしか・・・」
茜が、確認を含めて舞に尋ねる。
「そういうことですわね」
舞も、頷くしかない。
「おまえら、おしゃべりしてる暇はねぇぞ。ミゥも遠慮しないで、必要な報告は館内放送でいれろよ」
カレンが急に会話に叫ぶような声で割って入る。
「そうでしたわね」
舞が姿勢を正す。
「敵β二ミサイル命中」
「ダミーAB、前面二展開完了」
「敵Γ(がんま)カラ2発ノ飛翔体発射ヲ確認。1ツハSWAN号標的二シテイマス」
ミゥが続けて報告を入れる。同時にモニターに2つのミサイルらしいミサイルが表示される。
「ちっ・・・。1つはこっちに来てるのか。敵も馬鹿じゃないか」
カレンが舌打ちをする。
「当たっちゃうの?」
チャイが不安そうな声を出す。
「大丈夫だ。ダミーAをミサイルの新路上に移動させるぜ」
カレンが端末を操作する。
「ダミーAノ移動ヲ管制二回シマス」
「オッケィ!」
ミゥのカレンのやり取りが住むと、モニター上の隊列が動く。ダミーAがSWAN号の前方に移動する。
現在向かってきているミサイルの進路上にダミーABが配置された形だ。
「舞さん、前方のダミーに着弾した場合は、爆風は後方にも強く影響を及ぼします。また着弾の衝撃でダミーAのバリアとSWAN号のバリアがぶつかる可能性もあります。衝撃に備えてください」
徹の冷静な声が客室内の報告に混ざる。
「着弾するぜ」
カレンが注意を飛ばす。
ガツンっ!
激しい衝撃がSWAN号を揺らす。
「おぉぅ」
「・・・」
「ひぃぃ」
「きゃー」
「いゃー」
カレンと、客席の4人が予想以上の衝撃に声を上げる。
全員に、一気に緊張が走る。
ゆったりとした亜空間の戦闘で、立体モニターと報告で現在戦闘中であることは、もちろん全員が理解していたが、今までの2回は、ちょっと揺れただけで戦闘宙域の真っただ中にいるという実感がなかった。しかし、今回の揺れは、振動を伴った大きなものであったため、いやでも
『今、まさに自身の生命が危険にさらされているのだ』
という、現実を思い出せてくれるものであったのだ。
茜に至っては、震えてしまっていた。
徹がの声が艦内に流れる。
「というか、玲華さん、語尾の『にゃん』なくても話せるんですね」
「へっ!?」
玲華が素っ頓狂な声を上げる。
「それと、茜さん、悲鳴可愛いですね」
おおよそ、徹が徹らしくないことを口にしている。
茜は、急に赤くなって、
「いや、あんまり見ないで・・・」
その部分の台詞だけを聞けば、ちょっと誤解を受けそうな口調でそう呟いて、顔を両手で覆い隠した。
チャイが、
「茜は、いつも可愛いのよ。クールな見た目に反して臆病だもの」
そう、付け加えた。
一気に、客席の空気が和んだ。
舞が、
「さて、反撃といくわよ」
力強い号令をかける。
皆の恐怖心がぬぐわれたが戦闘が終わったわけではない。
戦闘開始から約10分、あと20分は耐える必要があるのだ。
皆の視線がモニターに映ったのを確認したあと、舞は格納庫の方に顔を向けて、
『ありがとう徹さん』
そう心の中でつぶやいたのだった。




