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宇宙宅配便カンパニー「ミゥ」!  作者: いのそらん
1部
9/94

1-6 勉強、教育、無駄な知識? その2

1-6 勉強、教育、無駄な知識? 中編


「そうね。今日は何を教える?」

 舞は本来の目的に話を戻した。


「ちゃんと人間ぽく育てるんだから、男の選び方なんかどうだ?」

カレンなりの真面目な提案。


「アンドロイドにそんなもの必要なのかしら」

 舞は懐疑的だ。


「いるだろ。少なくとも女なんだし」

カレンは自分の得意分野だとばかりに推す。


「そうかしら。まあ・・・・いいわ。」

 舞も全く興味が無い話題でもないし、気になることもある。

 了承の意を込めて、

「まあ、いいわ」

 そう、返答した。そして、

『どうせ言い出したら聞かないのだし・・・』

 舞はそう口の中で付け加えた。


「なんか言ったか?」

 カレンが舞の目を覗き込むように凝視した。

「い、いいえ。じゃあ始めましょう」

 舞の頬を冷や汗が伝う。カレンは、しばらく疑いの眼を向けたままであったが、気を取り直すとミゥに質問を始めた。


「そうだ。ミゥ、お前どんなタイプの男が好みなんだ?」

 ミゥも、自分に話が向けられたことを認識し、会話に参加を始めた。


「好ミトハ、何ヲ対象ニシテイルデスカ?」

 漠然とした質問は、まだミゥには難しい。


「なんでもいいよ。色々あるだろうが。収入とか顔とか」

「カレンさん、それではミゥにわかりませんよ。つまり、良い男の条件は何ですか?ということよ。ミゥ」

 カレンに舞が助け船を出す。


「良イデスカ?何ガ良イノデスカ?」

 ミゥには今一つ伝わらない。


「同道巡りですね」

「そうだな」

 2人とも考えあぐむ。

 カレンが、『よしっ』と、手をたたく。


「じゃあ、こうしよう。私が男を選ぶ基準を教えてやろう」

 バーンって感じのカレン。


「了解シマシタ」

 ミゥはカレンの言葉を待つ。


「顔と金だ」


 どや顔のカレン。


「理解デキマセン」


 即答のミゥ。

 カレンは諦めない。立ちあがり、腕を組みながら説明をはじめた。


「顔は、つまり美しい、あるいは精悍、何でもいいけどな。要は顔が格好良いということだ。できれば、整形してないほうがいいな」

「記憶シマシタ」

 ミゥの返答を待ち、カレンは続ける。


「よし、金はな。つまり稼ぎがいい。金をたくさん稼いでいる。貯金を一杯もってるとかでもいいな」

「記憶シマシタ」

 舞が2人の様子を見ながら、ため息をついた。


「なんだよ。舞、違うって言うのか?」

 不満ぎみにカレンが舞に突っかかる。


「違うとは言いませんが、不十分です」

 舞は諭すように、そして澄まして、そう言った。


「じゃあ何だよ?」

 カレンが舞の返答に覆い被せるように聞き返す。


「当然、男子たるもの心が最も重要なのです。紳士でなくてはなりません。それに内面的な性格も重要ですね」

右手の人差し指を上下に振りながら、したり顔で説明する。


「は?もっとも金、金うるさいやつがよく言うよ」

 カレンが、お手上げポーズを取りながら、そう鼻で笑うと、舞は急に立ちあがると、いきなりカレンの頭をぐーで殴った。


「いてっ!何すんだよ。事実だろうが・・・それにぐーって」

 本気でカレンは痛がっている。


「何をおっしゃいます。私は、そんな守銭奴ではありませんわ」

 再び椅子に座った舞であったが、その額には青筋が・・・。


「ふん。じゃあ心って何だよ?」

 カレンの顔にはまだ『イテテテテっ』といった様子が残っていたが、聞くことだけは聞いておくつもりなのか、会話を元に戻した。なんだかんだいって2人は仲は良いのだ。


「教えて差し上げますわ。心とは、何をしても怒らない寛大な心と、財布の口をすべて伴侶に任せることのできる殿方のことですわ」

 説明口調で自慢げに説明する舞。


「けっ。何が心だ。だいたいその言葉使いはなんだよ?殿方?気持ち悪い。つまるところ、金じゃないかよ」

『結果、それかよって』顔で肩を竦めるカレン。


「いいえ、違います!」

「いや、そうだろ、それ」

 2人の感覚は微妙に噛み合わない。

 そして、その噛み合わない結果の矛先がミゥに向かう。


「ミゥ。カレンの言うことは消去しても構いません。私が言ったことを記憶なさい」

「何勝手なこと言ってんだよ。あたしのを覚えたほうがいいな」

 いつのまにか、2人はほとんど掴みかからんばかりに顔を寄せて、言い合っていた。


「了解シマシタ。具体的ナ人物ヲサンプルトシテ示してイタダケマスカ?」

 ミゥのその一言で2人の動きが止まる。


「具体例か・・・」

「具体例ですね」

 同時に、2人とも前に向き直った。カレンは、立ったまま顎に手を添えており、舞は目をつぶって、額に人差し指と中指をあてた。


「舞。もっとも条件から外れる奴ならすぐに思いつくんだけどな、そっちはどおだ?」

 カレンが流し目で舞に答えを促す。


「わたしも、最も理想から外れた方ならすぐに思いつくのですが・・・。」

 舞が再びためいきをついた。


「じゃあ、それでもいいか?」

「そうですね。ではカレンさんからどうぞ」

 今度は舞が眉を寄せながら、苦笑いをしてカレンに返答を促した。

「いや、今回は舞に譲るよ」

 カレンも、舞の視線をよけるようにして、横を向いた。


「では、いっしょにどうですか?」

「そうだな。じゃあせーの」

 2人が同時に答える。


「科学オタク」

「徹さん」


 その場の雰囲気が一瞬凍りついた。そして、その一瞬の間の後、


「記憶シマシタ」


ミゥの機械的な抑揚の少ない声がテラスに寂しく響いた。


「・・・」

「・・・」


 カレンと舞は言葉無く目を合わせると、笑い出した。その後も、カレンと舞のミゥの教育?はどんどん路線を外れていった。

 そして、夜もとっぷりと暮れると、カレンと舞はそれぞれの岐路についた。


 カレンは、自前の愛車GTRに乗り、舞は送迎用のリムジンでいつも移動をしていた。

 このコロニー内では燃焼エンジンを搭載した車を走らせることが出来ないため、どの車も電気エンジンで走っていた。電気エンジンで出すことのできる最高速度などたかがしれているのだから、わざわざスポーツカーをマイカーとして選択する理由など皆無なのだが、カレンが自分の会社を舞に売り渡したお金で買った最初のものが、このGTRレプリカ2007だったのだ。2007とは旧暦の2007年製のレプリカということを示していた。カレンのそのGTRへの愛情は果てしなく、誰にも車を触らせたことはなかったし、休日には洗車を欠かさなかった。

 一方舞は、車のことなどまったく興味がなかった。行きも帰りも運転手付きのリムジンである。オフィスの中ではあれだけ一緒にて、楽しげにしている2人であったのだが、アフター5に2人が連れ立ってどこかに遊びにいくのは、2人と付き合いの長い徹でさえ一度も見たことがなかった。

せっかく分割したので、気になるところ修正してます。

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