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宇宙宅配便カンパニー「ミゥ」!  作者: いのそらん
2部
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第2部 第4章 4ー1 アイ、マイ、舞

宇宙宅配便カンパニー・ミゥ 2部 第4章 投稿開始です。

宇宙宅配便カンパニー「ミゥ」! 2部 第四章


4-1 アイ、マイ、舞 


 舞は、幸せを感じていた。

 舞は、ニヤニヤ? いや、清楚なお嬢様である。

 もとい、爽やかな春風の様な笑みを浮かべ、今日の外出の衣装を選んでいた。


 ユニバース暦203年。メギド星系。

 生活の場を宇宙に移した、現行型の筒形のドーム型スペースコロニー テラπ型Type06、

 その中でも、温帯湿潤気候ニホン型と呼ばれる春夏秋冬という四季があるタイプに調節されている『シュワーツ』。

 そんなコロニーの北地区、いわゆる、高級住宅が立ち並ぶ高級住宅街の一角に、舞の住む邸宅があった。

 純和風の武家屋敷のような外観に、一歩室内に入れば、最先端科学技術を惜しみなく導入している、最新の住居スペース。そんな豪勢な平屋づくりの邸宅の、陽当たりの良い縁側付きの和室と襖を隔てた寝室。それが舞のプライベートルームであった。


 何に科学技術が使われているって?

 それはボタン一つで床下から出てくるベッド。同じく音声認識で地下のクローゼットへの扉として開閉可能な畳。いつでも24時間、天然温泉と同じ効能をもった、偽源泉かけ流しの浴室が、突如出現する悪戯心満載の縁側。その温泉は、四方を囲んだ光学的な迷彩能力を有した電磁的なバリアに、ホログラムが可能となっており、母星の地球のいかなる風景も映し出すことが可能。しかも、匂い、吹き抜ける風、小鳥たちのさえずり、すべてを4D体験させてくれるのだ。


 その他にも挙げていったらキリがない。先端科学満載の、純和風な武家屋敷である。まあ、和風の平屋にこだわる必要がどこにあるのか、という根本的な部分まで話を広げると、ぶっちゃけ微妙な話だが、とにかくメカ満載なのである。追加情報として、最初からメカ満載だったわけでなく、ある時期を境に、何故かメカ満載になっていったという黒歴史があるのではあるが・・・。


 とにかく、舞の父が会長を務めている、伊那笠財閥は、あらゆる分野の産業を傘下に収めている巨大複合企業である。そんな財閥の、あらゆる技術、商材をぶち込んで作られている邸宅であるのだ。普通であるわけがない。


 そんな、邸宅内の舞の自室。その寝室の地下に広がるウォークインクローゼット、そのⅤR機能付きの鏡台の前で、自身の等身大のモデルを眺めながら、データベースに登録してある映像化されている自分の服をパネル上で着せ替える。その作業をひたすら繰り返しながら、頬をうっすらの染めて、満面の笑顔で衣服を選んでる。

 それが、今の舞の状況である。

 いつまでも終わらない、繰り返しに、凛とした声が割って入る。


「お嬢様」


 あくまでも自己を主張せず、舞の視界に入らない、そんなギリギリといえる、舞の左斜め45度の背後、他人のパーソナルスペースを侵すことのない絶妙な距離に控えてる、金髪の中に淡い茶の色合いが多く混じっている、アプリコットといえば分かり易いだろうか、その絶妙な色合いの髪の毛をした女性の呼びかけに、


「これがいいかしら・・ねぇ、明星?」

 舞は、振り返りもせずに、先ほどから繰り返している、クローゼット内の鏡台の前で、自分に合わせてみては戻す、あるいは候補として並べる、そんな動作を一時的に手を止めて、独り言のように返事を返した。


 明星と呼ばれた女性。上品な紺色を基調としていて、袖口、肩口、腰回りに、精巧ともいえる刺繍が施されているフリルをあしらったメイド服を着た女性。そして頭部には、カチューシャと一体化しているメイド帽をちょこんとかぶっており、そのメイド帽の左右から、猫を思わせる耳が覗いている。そして、あくまでも優雅にゆっくりと、臀部から膝上ぐらいまでの長さで、アプリコット、黒、白といった3つの色が絶秒なバランスで混じりあった尻尾、そう尻尾が揺れていた。


 この女性こそ、伊那笠 舞の実家の邸宅で働く、メイド。そのメイドの中でも頂点に君臨?している超ウルトラスーパーメイドの象徴ともいえる役職、メイド長の『董 明星』その人であった。


 来月から、カンパニー・ミゥには、新しい職員が1人配属される予定になってる。その新人の母親である。容姿からも容易に想像できるかもしれないが、猫の遺伝子、本人たち曰くは純和風三毛猫の遺伝子を元に人体改良を施した獣人と呼ばれる、新人類種である。


 明星が第2世代、玲華が第3世代の新人類種となる。明星に精子提供をした男性が普通の人間であったこともあり、明星に比べると、玲華のほうが若干人間臭い。具体的には、体の体毛が少ない。明星のシュッとした細面に切れながの瞳は、若干顔の中央に固まっており、左右の頬のひげもしっかりとした本数が生えている。また平素は背中が開いた服を着ているわけではないため見えないが、背骨に沿って薄っすらと体皮を覆うように猫毛が生えていた。それに対し、玲華は、耳と尻尾と爪を隠して、わずかに残った髭を剃ってしまい、口を閉じていれば人と変わらない。


 獣人は、獣人としか子を生すことが出来ない。他種族のタイプの獣人も無理。だが、純粋な人型であれば精子か遺伝子の提供を受ければ、子を持つことができる。そんな種族的な事情もあり、第2世代として、もともとのコロニーからある意味避難?してしまっている董明星は、シングルマザーの道を選んだのだ。

 明星は、玲華にも、その精子提供者が誰であるかは、どれだけ尋ねられようと明言をさけており、謎は残ったままではあったのだが。


 舞に、意見を求められたと判断した明星は、


「お嬢様の黒髪には、今手に持っておられる、白いワンピースはとてもお似合いですよ」


 そう提言を返した。


「ありがとう。ちょっとあざとくないかしら?」

 舞が、ワンピースを鏡の前で会わせながら、聞き返す。


「そう思われるのであれば、ハンドバックをシックな落ち着いたものにされるか、靴を少しラフな感じのウェッジサンダルにするなどしてはいかがでしょうか」

 明星は、そういいながら、デニム地のサンダルをさりげなく視線に入れる。

 舞も明星の視線につられて、サンダルを目に入れる。

 舞がサンダルに目を止めたのを確認すると、明星は、


「清楚な中にすこしだけ砕けた部分をいれることによって、殿方の『近寄りがたいな』という雰囲気を一気に和らげ、より近い距離で接していただけることでしょう」

 さりげなく、舞の心をくすぐるポイントを詰め込んでくる。

 実に優秀である。


 舞は、その後も、いくつかの服を候補にいれたり外したりしていたが、結局、明星が薦めるコーディネイトに落ち着いたのだった。


もう1話、2話は、明日ぐらいにはアップできそうです。

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