表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙宅配便カンパニー「ミゥ」!  作者: いのそらん
1部
34/94

3ー1 だから、それで、こうなるんだ その3

3ー1 だから、それで、こうなるんだ その3


 当時は、自身が財閥の会長を継いだばかりでもあってあまり家に帰ることもなく、正直舞から紹介されてもほとんど興味を持っていなかった、極めて頭が良い可哀想な子供。確かにあの頃からの舞のお気に入り。

 将来的に財閥の利益になるからと、施設を出なければならない年齢になっても公社に就職をさせず、自身の家の敷地内に離れを用意してまえ下宿させる。実際、舞には先見の明があり、新しいアンドロイドの理論体系を作り上げ、財閥のその分野でのイニシアチブを不動のものにした少年。


 舞は、小さいときから帝王学を学ばせ、財閥の利に関しては、異様に鋭い嗅覚を見せる。そんな1つだと軽く思っていたが、確かに離れを作って、さらには同じ大学に通い、そして同じ職場で働いている。舞のこだわりは尋常ではない。

 そういう視点で、舞とその科学者、徹との関わりを思い返す。


 確かに節目節目で思い当たることがいくつも頭に浮かぶ。新しい人工知能理論への事業としての参加を決めたとき、その開発チームの結成や試作機の製作。なにより実験投入のアンドロイドの配属に至っては、舞自身がビジネスプランと収益モデルを描き起業まで行った。

 専用のメンテナンススタッフを雇用せず、研究開発費を融資という形で、開発者である徹を囲いこむといった念入りな対応。まあ、源一郎としては、この新型の人工知能開発は、優先度を高く感じており、開発、現場導入による感情部分の制御機構の技術革新には期待していた。だからこそ、この事業にはかなりの枠の投資の決裁権を舞に委譲していた。

 舞は、投資でなく、なぜか融資という形態をとった。これは徹に対する舞の期待する到達点が遥か先にあり、現時点ではすべてを掛けるに値しないか、それほどまでに手放したくない存在であるかの2つを意味している。

 厳一郎は、ある結論にたどり着く。


『それほどの金のなる木なのか』


 まあ、ぶっちゃけズレている。

 執着という意味では、どんな執着だろうと、そこに舞が拘っており、自分の手元に置いておきたいと気づいたことには一定の意味はあるのかもしれないが、まあ、ズレてる。

 そして、若干ズレてはいるが、舞が今回を含め、徹に借財を負わせる理由も、『縛り付ける』という観点では同じ。

 その理由が、『金のなる木』でも『恋愛感情』でもだ。


 舞と源一郎の気持ちがユニゾンした・・・・。

 厳一郎は、渡辺を手招きすると、


「渡辺・・・」


小声で、話始めた。


「渡辺、カンパニー・ミゥの社員を1人増員するぞ」

 突然の発言。

 渡辺は困惑しながらも確認する。


「はい。何をするおつもりなのでしょうか?」

 流石である。『どうして』でも、『誰を』でもない。


「うむ。カンパニー・ミゥは、今後わが財閥の中でも重要な役割を示す可能性がある。方向を間違わないように誘導し、そして更には常に正確な情報を収集したい」

「了解しました」

 渡辺の返答に、源一郎は首肯で返す。


「では誰を?情報部の人間でしょうか?」

 ここで話を具体的にする渡辺。さりげなく提案も混ぜる。


「まて、プライベート問題も絡む可能性もある。そうだな『董 玲華』ではどうだ?」

 渡辺がダイコンで素早く、伝えられた自分物を検索し、個人ファイルを展開する。

 ファイルをみて、渡辺もその人物にすぐ思い当たる。

 あの十三妹スーサンメイの通り名で、名を馳せている名物社員。


「し、しかし、この人物は・・・確かに優秀であり、プライベートな問題であっても立場的に問題はなく、女性であるため舞様の身辺警護も含めて考えると適切ではあるのですが・・・」

 ぶっちゃけ歯切れが悪い。

 厳一郎は、


「そうだ。伊那笠の家のメイド長の娘であり、舞とも見知った仲である。また、飛び級で大学を卒業した秀才であり、その後十三妹と呼ばれる所以になった、情報員として収めたスキルも高く、また身体的な特性で警護能力も高い。彼女であれば舞としても受け入れやすいのではないか?」

 そう、推した。

 渡辺は、珍しくかぶりを振りながら、


「会長、お言葉を返すようではありますが、確かに信頼という面、能力という面において、彼女は優秀ではあります。しかし、情報員としては完全に失格であると言わざるを得ません」

 そう告げる。

 だいたい、確かに財閥は巨大な複合産業であり、無数のビジネスを展開している都合上、多くの情報収集が必須であるため、マーケティング、収集した情報管理とその効率のよい共有化という意味で情報部が存在している。しかし、源一郎が、今回期待?しているような諜報活動をしているわけではないし、その必要性もない。

 警護といっても単なる宅配業務を行っている(しかも規模は支社と比べればものすごく小さい)企業の経理担当である。何から警護するのだろう。渡辺の返答はいろんな意味で当然とも言えた。


「どうしてだ?」

『そこはやはりズレている』渡辺は、源一郎の返答を聞いて、天を仰いだ。

 伊那笠家の本邸のメイド長は、遺伝子改良をした新人類種の1つである『獣人』なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ